夏の雨

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初めての通り道を通り、校門を潜った時だった。
どこからかちらほらため息が聞こえた。
「はぁ…なんでよりによって散っちゃったんだろ…」
「せっかくの入学式なのにね…」
周りを見渡すと、桜はとっくに散ってしまっていた
「………」
その時俺の目はある人を捉えた。いや、知らなかったのだが確かにあの人は儚げな顔をしている。
「どうしたんですか?」
試しに声をかけて見ると、彼はビクッと体を動かし、振り向いた。
美形な顔で、漆黒の様な瞳が俺を見る。
「え、あ…なんですか?」
「特に用事はないんですけど…ちょっと悲しそうな顔をしていたので。」
「悲しそうな顔してました?!」
「はい。めっちゃ。」
「…気にしてないつもりだったんですけどね」
「?なにかあったんですか?」
「………最近、好きだった人が死んでしまって。…本当は…桜の木の下で…告白するつもりだったんですけど……笑顔でいようって思ったんですけどどうしても桜の木を見ると…思い出しちゃって。」
そう言って、桜を見る。
「…そう、だったんですか…その、実は俺、振られたんですよね…」
「えっ…」
「つい最近だったんですけど…あっでも死んではないんですけど…」
「…ありがとうございます。お互い、頑張りましょうね!」
「っ!はい!…それなら敬語もなしにしない?」
「そうだね。これからよろしく」
「よろしく!」
俺達は、散った桜の木の下で握手をした。
でも彼は、桜が満開になった様な顔をしていた。

#桜散る
「ここではない、どこかで」に出てきた子と、
「春爛漫」に出てきた子を登場させて見ました!
いつか名前付けたい…

4/17/2023, 10:52:06 AM