「ふぅ…」
旅にでる準備が終わり、ため息をつく。そしてもう一回部屋をぐるりと見回す。今日でこの家とはさよならだ。別に寂しい訳ではない。これはいつもの事だ。
今までずっとこうしてきた。色々な所に転々としてきた。だから、寂しくはない。決して。
「…寂しくはない。俺は友人なんかいらない。家なんかいらない。愛なんていらない。何もいらない。」
そう自分に言い聞かせながら俺はドアを開けた。
「あ、居た」
「……あ。」
ドアを閉めようと思ったがもう遅い。少し背の高い緑色の目の彼が、目の前に居た。
「…なんすか。」
「だって引っ越すんでしょ?だから来たの。」
「…そうですか。それじゃあ」
彼の隙間を通り抜けて行こうとしたが、「だーめ」
と言いながら俺の手を掴んだ。
「あのさ、…最後にお願いなんだけど。」
「はぁ…なんですか?」
悪態をつきながら言うと、口角をあげて、
「俺も連れてってよ。」
と言った。……オレモツレテッテヨ?おれもつれてってよ?
「……はぁっ?!いやいや無理ですよ!」
「無理〜。先輩の言うことは絶対!」
「もう辞めたんでそれは通用しないですっ!」
「だーーめ!行く!」
俺達は数分間ごたごたと揉め合いをしていたが、ふと自分のしていた事に呆れ、笑ってしまった。
「あ、笑った!」
「っ…そうですね」
「ねぇーえー?初めて笑ったよね?」
「そうっすね」
「連れてって?」
「だからなんでそうなるんですか!!」
……はぁ…。もういいや、連れてこ。いつか飽きるだろ。
「分かりました…着いてきて下さい。」
「え!ほんと!?」
「足引っ張んないで下さい。」
「分かってるよ〜」
朝日が登る中、俺達は旅に出た。
…………やっぱり寂しかったのかも。
#何もいらない
この人達も誰かと会わせたいなぁ…。
主人公は、色々な所に旅をしている旅人。
先輩は、主人公がアルバイトをしていた店の先輩。
という感じです!
4/20/2023, 12:06:26 PM