「こんな夢を見た」から始まる小説

Open App
4/3/2026, 9:34:53 AM

こんな夢を見た。子供部屋に私は座り込んでいる。周りを見回すと、懐かしい自分の部屋だ。立ち上がり、キャスター付きの学習椅子に座る。くるくる回るから、よく座って限界まで回り続けて気持ち悪くなったっけ。学習机の方にくるりと向き直る。机の上には、自分が工作で作ったペン立てとスクールバッグが置いてあった。ペン立てを持ち上げ、自分のセンスの無さに笑う。
「毒ガエルみたいな配色だなあ」
ペンやら鉛筆は入っているので、それなりに気に入って使ってたらしい。スクールバッグは、卒業式の日帰ってきて机に投げ出したままのものだろう。中身を見ると、卒業証書の入った筒とアルバム、通信簿が入ったままだ。せめて、夢の中では片付けよう。中身を取り出し、スクールバッグを机の横に提げた。アルバムと通信簿を流し読みながら、部屋の中を見回す。本棚には図鑑や児童文学、キャラもののシールがベタベタ貼られたクローゼット。それにぬいぐるみが枕元に置かれたベッド。
「本当に懐かしいなあ」
衝動的にベッドに飛び込み、顔を埋めた。懐かしい匂いに深呼吸をし、仰向けになる。
「…帰りたいなあ」
しばらく帰省してなかったので、自分の部屋がどうなってるか分からない。だけど、こんな夢を見たら帰りたい気持ちが大きくなってしまう。
「この部屋、変わってないと良いな…」
ベッドのぬいぐるみをいじりながら呟く。ふと、宝箱のことを思い出した。宝箱と言っても、平たい銀色の缶に私の大切なものを入れただけ。大切にしまっておいたが、どこに置いただろうか。夢の中と言っても、ほぼ私の部屋だ。きっとどこかにあるはず。ベッドから降り、宝箱を探し始めた。机の引き出しをひっくり返し、本棚を確認する。
「無い…」
ベッドの下を腹ばいになって確認し、クローゼットを開け服をどかした。
「ここにも無い…」
あとはスクールバッグぐらいしかないが、あの中はもう確認している。
「でも、他に当てなんか無いし…」
一応確認すると、ペタンコになったスクールバッグの中から銀色に光る何かが見えた。
「あった!」
私は銀色に光るそれを引っ張り出した。銀色に光る平たい缶、間違いなく私の宝箱だ。
「さて、中身は何だったかな…」
ドキドキしながら、フタを開ける。カポッと音がして、ヒュウウウと吸い込む音と共に私の部屋は吸い込まれていった。そして、何も無い空間と私だけが残された。そういうことか。

4/2/2026, 8:53:14 AM

こんな夢を見た。私は一人荒れ地に立っている。何故ここにいるのかは分からないが、ここが不毛の土地ということだけは分かる。
「うわ…雑草が一本も生えてない」
あまりにも酷い有様だったので、正直な感想を漏らす。すると、荒れた土肌の間からニョキニョキと緑が見え始めた。あっという間に私の膝丈ほどの高さの草が生い茂り、荒れ地を覆った。首を傾げ、独り言を続けた。
「土の質が悪いのかな?地面が乾燥して割れてるし、水が足りないのかも」
すると急に雨が降りだし、しばらくすると乾いた土が水を含んだ黒土に変わった。やっぱり、私が言ったことが反対になるんだ。それなら…。
「栄養が足りないから、花も咲かないんだ」
そう言うと、名前の知らない草の間から膨らんだ蕾のついた茎が伸びてきた。ポンッと音を立て、色とりどりの花が季節関係なく咲き始めた。目を輝かせ、顔を近づけると花から声が聞こえた。
「ありがとう、また地面の上に出られるとは思ってなかったわ」
「花が喋った!?」
驚いて後ろに飛び退くと、花は呆れたようにため息をつく。
「喋るわよ、失礼ね。そもそも人間がエイプリルフールに嘘をついたからそうなったのよ」
エイプリルフールに嘘をつくだけで、すぐに花が喋るようになるわけがない。元から喋れる特別な花じゃないのか。
「元は、わたくしだって物言わぬ花だったわ。でも、人間たちが面白がっていろんな嘘をつくから遂に…」
「遂に?」
「人間が発する言葉は、全部嘘になったの。どんなことを言っても、全部反対に実現するのよ」
「だから、喋れるんだ」
「そう。貴女がここでわたくしたちを咲かせたようにね」
「あれ?でも私…」
常に嘘をついている状態なら、花が喋れなくなるはずだ。私はさっきから花が喋ったとしか発言していない。
「嘘は取り消せないのよ。昔ついた嘘は、ずっとそのまま。だから、貴女も発言には気をつけることね。自分の嘘で身を滅ぼすことになっても知らないから」
花の表情は読めないが、心配してくれているらしい。
「それで他の人間は?」
「滅んだわよ、とっくの昔にね。何で、貴女だけいるのか知らないけど」
言葉に絶句していると、花は欠伸をした。
「日光浴は良いわね。わたくしちょっと昼寝するけど、貴女もどう?どうせ、わたくしたち以外居ないんだし」
少し頭が痛くなってきたし、横になるか。私が花を潰さないように横になると、花が小さく呟いた。
「おやすみ、きっと良い夢を見られるわよ」
草の青臭さとどこからか吹いてきた風が心地よい。寝てから考えよう。そんな事を考えながら、ゆっくりと意識を手放した。

4/1/2026, 9:30:11 AM

こんな夢を見た。遠い昔の預言者が出現を予言した恐怖の大王が、今になって地球にやってくるらしい。私を含め数十名の若者が徴兵され、宇宙に旅立つことになった。地球に来る前に討伐しなければいけないらしい。ロケットに乗る前、皆家族や友人、恋人と涙を流して別れを惜しんでいた。今生の別れになるかもしれないから、尚更だ。逃げ出す奴はいなかった。徴兵された者は逃亡対策のため体内に超小型爆弾を埋め込む手術を受けており、逃げたら起爆するようになっている。それに逃げ出したところで、地球もろとも恐怖の大王に砕かれるからだ。そうして出発し、私たちは恐怖の大王を見事討伐した。無傷の勝利とはいかず、私と他の二名以外は事故やら相打ちで死んだ。他の二名は通信や治療するための非戦闘員で軽傷だった。だが私は相打ちの際、爆発に巻き込まれ片腕と片足を失った。満身創痍で帰還し、すぐに病院に搬送された。意識を取り戻すと、何故か失くなったはずの片腕と片足があった。義手と義足でも着けたのかと思ったが、繋ぎ目がない。本物のようだ。
「傷の処置中は確かに無かったのに」
医者は、そう首を捻っていた。奇跡でも起きたのだろうか。何にせよ、これならリハビリをすればすぐに退院出来る。だが、喜んでいられたのも少しの間だけだった。眠っていると、死んだ仲間が私を呼び続ける幻聴が聞こえてくる。主に大王を相打ちで倒すために、体内の爆弾を無理やり起爆させた仲間たちの声だ。恨み言を言っているわけではなく、何故か幸せそうにしている。どうやらあの時、木っ端微塵になった仲間たちと大王の血液は爆発に巻き込まれた私に降り注いだ。それで私の体の中に染み込んだらしい。手足が再生したのもそれが原因だと言う。
「大王のおかげで、皆と一緒にいられる」
「お前も、幸せになるために身を委ねろ」
何を言っているんだ?注意深く聞いてみると、大王が仲間たちの声を真似ている。体を乗っ取るために、私を騙そうとしているのだ。爆発だけでは死ななかったらしい。翌日医者に、強い睡眠薬を処方してもらい幻聴は聞こえなくなった。だが、再生した手足が勝手に動いて自分の首を絞めたり、窓から飛び降りようとする。日が経つにつれ、症状は悪化していった。今日は脳内で命令する声が聞こえ、その通りにしようとして看護師に止められた。私は、いずれこいつに乗っ取られてしまう。乗っ取って地球を破壊するつもりだろう。悩んだ結果、私はまた宇宙に打ち上げてもらうことにした。棺桶のような箱の中に、横たわると蓋を閉めてもらった。これで本当にお別れだ。カウントダウンがゼロになり、宇宙に打ち上げられた。このまま行けば太陽に到達し、骨の一片も残らず私も大王も消えてなくなる。
「やめろ!こんなことをするくらいなら、我に体を明け渡せ!我に体を渡せば、お前も破壊の快楽を味わえるのだぞ!弱いお前にとって、これ以上ない幸せが…」
耳元で喚く声がする。他人を傷つけて手に入る幸せに興味はない。ざまあみろ、と薄く笑った。

3/30/2026, 11:19:39 PM

こんな夢を見た。何を見ても怯える幼い私に、母はいつも優しくこう言い聞かせる。
「いい?怖いものは怖がることで見えるのよ。怖がらなければ、見えないの」
気がつかなければ、居ないも同じ。母はそう言いたかったのだろう。そうは言っても顔や足、手が家具の隙間から覗いていたら怖い。私が怯える度に、苦笑しながら同じセリフを繰り返す。母は見えていないから、そんなこと言えるんだ。そう思っていたが、私は気づいてしまった。いつも私が怯える場所に、母が何気ないふりをして塩を撒いているのを。

3/30/2026, 9:11:32 AM

こんな夢を見た。弁当を早々に食べ終え、私は図書室に向かっていた。図書室に入ると、カウンターで図書委員が暇そうに座っている。話しかけ、借りていた本を返却した。それから目当ての本を見つけ、貸出の手続きをする。さて、休み時間の暇つぶしは確保した。腕時計を見れば、まだ時間はある。何を読もう。背の高い本棚の間をふらふらと歩き、今日の気分に合った本を見つけた。本を手に取り、机に向かう。いつもなら課題やおしゃべりする生徒で座れないが今日は早く来たおかげで誰も座っていない。その内誰か来るかもしれないし、隅っこに座っておこう。本のページを開き、活字を目で追う。読書は、面白みのない現実と自分から逃避できるので良い。物語に没頭していると、隣に誰かが座った。
「やっぱり、ここにいた」
誰か来るかもしれないと言ったが、一番会いたくない奴が来てしまった。横目で見ると、同じクラスの委員長がこちらを見ていた。彼は私にとって、天敵のようなものですごく苦手だ。
「教室にいなくて心配したんだ。すぐに見つけられて良かった」
彼は私に微笑みかける。
「昼休みなんだから、教室にいなくてもおかしくないでしょ」
「それはそうだけど」
「好きで通ってるんだから、放っといて」
彼は頭をかき、苦笑する。
「居場所がないから、ここに来てるんじゃなくて?」
「誰のせいで…!」
「騒ぐと怒られるよ。俺、君との時間邪魔されたくないんだ。何が言いたいか、分かるでしょ?」
彼は、しーっと人差し指を私の口の前に立てた。相変わらず腹の立つ奴だ。彼は同じクラスになってから、やたらと私の世話を焼いて来る人だった。世話焼きな人なんだと思っていたが、すぐにそれは違うと確信する出来事が起きた。ある時から、他のクラスメイトと話をするだけで注意してくるようになった。変だと思い、距離を置くようにした。すると、どうだろう。他のクラスメイトたちが、私と距離をとるようになってしまったのだ。授業も話し合いの時も、私は彼としかペアを組めない。彼が皆に何か吹き込んだとしか思えないが、証拠がない。理由を聞こうにも、私を見ると皆逃げてしまうから。
「あー、でもここ良いかも。人目がなくて二人きりになれるし」
何か言っているが、無視だ、無視。貴重な昼休みがなくなってしまう。
「今日は何を読んでるの?…ふうん、冒険ものか。そういうのじゃなくて、主人公とヒロインが最後にくっつく話が俺は好きかな」
ハッピーエンドって良いよね、と彼は顔を覗き込んできた。私は納得出来れば、どんな結末でも良いと思う派だ。彼の言葉に、私は首を横に振る。彼は傷ついた様子はなく、言葉を続けた。
「物語の中の主人公とヒロインのように、俺たちの関係もハッピーエンドなら良いよね」
「あんたとのハッピーエンドなんて、望んでないよ」
切り返すと彼はキョトンとしたが、すぐに相好を崩し私の手首を掴んだ。
「俺、君のそういうとこに惚れたんだよね。本当、大好きだよ。絶対に俺しか見えなくしてやるから」
彼は不敵に笑った。

Next