こんな夢を見た。遠い昔の預言者が出現を予言した恐怖の大王が、今になって地球にやってくるらしい。私を含め数十名の若者が徴兵され、宇宙に旅立つことになった。地球に来る前に討伐しなければいけないらしい。ロケットに乗る前、皆家族や友人、恋人と涙を流して別れを惜しんでいた。今生の別れになるかもしれないから、尚更だ。逃げ出す奴はいなかった。徴兵された者は逃亡対策のため体内に超小型爆弾を埋め込む手術を受けており、逃げたら起爆するようになっている。それに逃げ出したところで、地球もろとも恐怖の大王に砕かれるからだ。そうして出発し、私たちは恐怖の大王を見事討伐した。無傷の勝利とはいかず、私と他の二名以外は事故やら相打ちで死んだ。他の二名は通信や治療するための非戦闘員で軽傷だった。だが私は相打ちの際、爆発に巻き込まれ片腕と片足を失った。満身創痍で帰還し、すぐに病院に搬送された。意識を取り戻すと、何故か失くなったはずの片腕と片足があった。義手と義足でも着けたのかと思ったが、繋ぎ目がない。本物のようだ。
「傷の処置中は確かに無かったのに」
医者は、そう首を捻っていた。奇跡でも起きたのだろうか。何にせよ、これならリハビリをすればすぐに退院出来る。だが、喜んでいられたのも少しの間だけだった。眠っていると、死んだ仲間が私を呼び続ける幻聴が聞こえてくる。主に大王を相打ちで倒すために、体内の爆弾を無理やり起爆させた仲間たちの声だ。恨み言を言っているわけではなく、何故か幸せそうにしている。どうやらあの時、木っ端微塵になった仲間たちと大王の血液は爆発に巻き込まれた私に降り注いだ。それで私の体の中に染み込んだらしい。手足が再生したのもそれが原因だと言う。
「大王のおかげで、皆と一緒にいられる」
「お前も、幸せになるために身を委ねろ」
何を言っているんだ?注意深く聞いてみると、大王が仲間たちの声を真似ている。体を乗っ取るために、私を騙そうとしているのだ。爆発だけでは死ななかったらしい。翌日医者に、強い睡眠薬を処方してもらい幻聴は聞こえなくなった。だが、再生した手足が勝手に動いて自分の首を絞めたり、窓から飛び降りようとする。日が経つにつれ、症状は悪化していった。今日は脳内で命令する声が聞こえ、その通りにしようとして看護師に止められた。私は、いずれこいつに乗っ取られてしまう。乗っ取って地球を破壊するつもりだろう。悩んだ結果、私はまた宇宙に打ち上げてもらうことにした。棺桶のような箱の中に、横たわると蓋を閉めてもらった。これで本当にお別れだ。カウントダウンがゼロになり、宇宙に打ち上げられた。このまま行けば太陽に到達し、骨の一片も残らず私も大王も消えてなくなる。
「やめろ!こんなことをするくらいなら、我に体を明け渡せ!我に体を渡せば、お前も破壊の快楽を味わえるのだぞ!弱いお前にとって、これ以上ない幸せが…」
耳元で喚く声がする。他人を傷つけて手に入る幸せに興味はない。ざまあみろ、と薄く笑った。
4/1/2026, 9:30:11 AM