こんな夢を見た。弁当を早々に食べ終え、私は図書室に向かっていた。図書室に入ると、カウンターで図書委員が暇そうに座っている。話しかけ、借りていた本を返却した。それから目当ての本を見つけ、貸出の手続きをする。さて、休み時間の暇つぶしは確保した。腕時計を見れば、まだ時間はある。何を読もう。背の高い本棚の間をふらふらと歩き、今日の気分に合った本を見つけた。本を手に取り、机に向かう。いつもなら課題やおしゃべりする生徒で座れないが今日は早く来たおかげで誰も座っていない。その内誰か来るかもしれないし、隅っこに座っておこう。本のページを開き、活字を目で追う。読書は、面白みのない現実と自分から逃避できるので良い。物語に没頭していると、隣に誰かが座った。
「やっぱり、ここにいた」
誰か来るかもしれないと言ったが、一番会いたくない奴が来てしまった。横目で見ると、同じクラスの委員長がこちらを見ていた。彼は私にとって、天敵のようなものですごく苦手だ。
「教室にいなくて心配したんだ。すぐに見つけられて良かった」
彼は私に微笑みかける。
「昼休みなんだから、教室にいなくてもおかしくないでしょ」
「それはそうだけど」
「好きで通ってるんだから、放っといて」
彼は頭をかき、苦笑する。
「居場所がないから、ここに来てるんじゃなくて?」
「誰のせいで…!」
「騒ぐと怒られるよ。俺、君との時間邪魔されたくないんだ。何が言いたいか、分かるでしょ?」
彼は、しーっと人差し指を私の口の前に立てた。相変わらず腹の立つ奴だ。彼は同じクラスになってから、やたらと私の世話を焼いて来る人だった。世話焼きな人なんだと思っていたが、すぐにそれは違うと確信する出来事が起きた。ある時から、他のクラスメイトと話をするだけで注意してくるようになった。変だと思い、距離を置くようにした。すると、どうだろう。他のクラスメイトたちが、私と距離をとるようになってしまったのだ。授業も話し合いの時も、私は彼としかペアを組めない。彼が皆に何か吹き込んだとしか思えないが、証拠がない。理由を聞こうにも、私を見ると皆逃げてしまうから。
「あー、でもここ良いかも。人目がなくて二人きりになれるし」
何か言っているが、無視だ、無視。貴重な昼休みがなくなってしまう。
「今日は何を読んでるの?…ふうん、冒険ものか。そういうのじゃなくて、主人公とヒロインが最後にくっつく話が俺は好きかな」
ハッピーエンドって良いよね、と彼は顔を覗き込んできた。私は納得出来れば、どんな結末でも良いと思う派だ。彼の言葉に、私は首を横に振る。彼は傷ついた様子はなく、言葉を続けた。
「物語の中の主人公とヒロインのように、俺たちの関係もハッピーエンドなら良いよね」
「あんたとのハッピーエンドなんて、望んでないよ」
切り返すと彼はキョトンとしたが、すぐに相好を崩し私の手首を掴んだ。
「俺、君のそういうとこに惚れたんだよね。本当、大好きだよ。絶対に俺しか見えなくしてやるから」
彼は不敵に笑った。
3/30/2026, 9:11:32 AM