「こんな夢を見た」から始まる小説

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3/29/2026, 8:52:52 AM

こんな夢を見た。アラームで目を覚まし、私は体を起こす。
「もう朝…?仕事行きたくないなあ…」
何となく掛け布団の一点を見つめる。最初は気のせいだと思っていたが、少しずつ焦げそして煙が上がった。
「うわっ!」
驚いて立ち上がる。慌てて台所に行き、コップに水をくんで布団にかけた。水浸しになったが、火事よりはマシだろう。ふうっと息をつく。
「それにしても…」
今のは何だろう。一点を見つめたら、火が上がった。昔、理科の授業でやった虫眼鏡の実験みたいだ。
「もしかして私に見つめられると、燃えるのかな?」
試しに、壁に掛かったカレンダーを見つめた。じいっと見つめると、じりじりと一点が黒く変色していく。火が上がるといけないので、目を逸らした。もう一度見ると、やっぱり焦げている。
「やっぱり…」
私は、寝ている間にすごい力を手に入れてしまったようだ。何だか超能力者みたいで、カッコいい。
「でも、どうしよう…。これじゃ、仕事にならないよ」
そう、困るのだ。何をするにしても、必ず見つめなくてはいけない。身なりを整えるために、鏡で自分を見つめたら…。想像して私は身震いする。
「何とかしないと」
今日は具合が悪いと言うことにして、仕事を休もう。力を制御する方法を考えるのだ。職場に欠勤の電話を入れる。電話を終え、スマホを置くと私は目を閉じた。まぶたの裏が焼ける感じはしないので、目を閉じれば力は発動しないらしい。それからいろいろ試してみたが、やはり一点を見つめなければ焼けないことが分かった。
「でも、視線がずっと動いてるのって変だよね」
目を何かで覆うというのはどうだろう。仕事用の眼鏡をかけ、スーパーのチラシを見つめる。ボッと一瞬で火が着いた。
「うわわっ!眼鏡じゃ駄目だ!」
燃え上がるチラシを、あらかじめ水を溜めておいたタライに突っ込む。ジュウッ…と音を立てて鎮火するチラシに、私はため息をつき眼鏡を外した。危ない、危ない。やっぱり、仕事休んで正解だった。多分、凸レンズなのが悪いんだろう。他に何か目を覆う物は…。目をつむりながら、机の引き出しの中を手探りで探す。手に何か当たりつかんで見ると、派手な虹色のサングラス。これは、友人がふざけて買ってきた旅行のお土産だ。
「これも、試してみよう」
サングラスを掛け、古紙を見つめる。レンズに色が入っているのでよく見えないが、焦げてはいない気がする。恐る恐るサングラスを外すと、焦げは見つからない。
「やった…!」
喜んだのも束の間、私は気づいた。つまり私はこの力がなくなるまで、サングラスを着用しないといけないということ。面倒だが、度入りのサングラスでも買いに行くしかない。私は派手なサングラスを掛け、買い物に出かけた。店員に奇異の目で見られた気がしたが、背に腹は代えられない。私は、無差別放火犯にはなりたくないからだ。
「あー、疲れた…。でもこれでまた仕事が出来るし、仕方ないか」
ふと、窓の外に月が見えた。そう言えば、今日は満月だった。距離があるものを見つめると、どうなるんだろう?好奇心で月を見つめると、じりじりと月の表面の一部に黒い点が出来た。あ、しまった。

3/28/2026, 8:01:44 AM

こんな夢を見た。家に来ないかと男友達に誘われたので、遊びに行った。
「借りてたマンガ持ってきたから返すね。あと、コンビニでお菓子買ってきたよ」
「ああ、うん。それなら、飲み物取ってくるよ。次借りるマンガ、探してていいから」
彼が部屋を出ると、私は次に借りるマンガを物色し始めた。取り敢えず今読んでいるマンガの続きを二、三冊拝借した。たまには、小説でも読んでみようか。私でも読みやすい小説は…。小説のタイトルとにらめっこしていると、本棚からドサッと本が一冊落ちた。
「何だろう…」
拾い上げてみると、表紙に『My Heart』と箔押しされたハードカバーの本だった。
「マイ・ハート?何かの小説かな…」
だが、作者の名前はない。開くと、横に罫線が入ったページに日付と癖のある彼の字が並んでいる。
「これ、日記だ」
彼に日記を書く習慣があったとは。読書が好きな人だから、書くのも好きなのかな。耳を澄ませるが、部屋の外に足音は聞こえない。気配もしないし、まだ戻ってきてはいないはず。
「少しだけなら…良いよね」
物静かで優しいけど、何を考えているか分からない彼のことが少し分かるかもしれない。意外な一面が見られることを期待しながら文字を目で追う。だが、私が期待したものではなかった。
「これ、私のこと…?」
日記には彼の日常や本音ではなく、私の行動と発言が事細かに書かれていた。それから、必ず彼の一言がある。
「今日も…」
「今日も可愛い、ね」
急に背後から読み上げられ、私は悲鳴を上げる。
「へえ、マンガ以外の活字に興味あったんだ」
読み上げたのは彼で、ジュースのペットボトルを二本持っている。テーブルにそれを置くと、私から日記を取り上げた。
「勝手に読むなんて、酷いじゃないか。知ったとしても、僕の気持ちを受け入れる気なんかないくせに」
彼は日記を大事そうに抱えた。
「何で、こんなものを…」
「僕は君が好きなんだ。でも、君は僕のことを異性の友人ぐらいにしか思ってない。現に、僕の部屋に来ても特に警戒もしないしさ」
彼は机の上に日記を置くと私の前に座り、私の両手を包むように握った。
「内心、気持ち悪いと思ってるでしょ。こんな風に君との時間を記録して後で読み返してるなんて。でも、君との時間は僕にとってそれくらい幸せで大事なものなんだ」
だから、と彼は私を見つめる。
「日記のことは見逃してほしいんだ。あれがなくなったら僕、君に何をするか分からないから」
彼の視線は下がり、手をきつく握られた。これは、脅迫じゃないのか。たとえ日記を見逃したところで、彼が今まで通り接してくれるとは思えない。返事に困って彼を見る。何故か、とろんとした彼の目と目が合った。
「大丈夫だよ、恋人になれなくても。僕はただ君とずっと一緒にいたいだけだから」
彼の中でなにやら話が進んだらしい。頬を赤らめる彼に、私は間違えたのかもしれないと後悔した。

3/27/2026, 9:06:42 AM

こんな夢を見た。味気ない部屋にモノクロの私が立っている。渇きと焦燥に似た衝動に駆られ、部屋を飛び出す。部屋を出ると、眩しいほどの色彩に溢れた建物が乱立していた。文字は読めなかったが、看板がついているので多分全て何かのお店だろう。どこを見ても、何もかも色鮮やかで胸がときめく。あの中で買えるものを身に着けたら、私はきっと満たされる!私はそう確信し、近くにあったお店に入り真っ赤なリンゴを一つ手に取った。磨き上げられたかのようにツヤツヤで、真っ赤な宝石のようだ。美味しそうだと見惚れていると、リンゴに変化が起きた。リンゴの色が急激に褪せ、萎んでいくのだ。驚いて、他のものを手に取ると、同じく色が褪せてしまう。あんなに色鮮やかで輝いていたのに。肩を落として、店を出る。多分、他の店のものもそうなるのだろう。そう言い訳をしてみても満たされず、私の中の衝動は大きくなっていく。ふらふらと歩いていると、一際輝く場所を見つけた。そこは誰かの庭だった。鮮やかな緑の芝生で覆われ、レンガの花壇には色とりどりの季節の花が咲き乱れている。それに水をまいたばかりなのか、水滴がキラキラと日光に反射している。私は一瞬で目を奪われ、衝動的に柵を乗り越え庭に入った。近くで見ると、やはりため息が出そうなほど美しい。どうにかして、この庭を私のものにできないか。
「あ、そうだ」
確認のために屈んで花に触れると、リンゴと同様に色褪せて萎んでいく。
「この庭、美しいでしょう?」
声をかけられ、振り向く。優しそうな老婦人が私に微笑みかけている。
「…ええ、とても。あ、勝手に入ってしまってごめんなさい」
慌てて取り繕い謝罪すると、彼女は上品に笑った。
「良いのよ。それくらい、近くで見たかったのでしょう」
勝手に庭に入ってきたのに、なんて余裕のある人だろう。この庭を手に入れたいという気持ちは、すっかり萎えてしまった。先ほどまでの自分の必死さが滑稽で、私は羞恥で顔を伏せた。足音が近づいてきて、彼女は私の隣に屈んだ。
「あなた、自分と生活に不満があるのね。だから、そんな風に白と黒だけになってる」
「…そうなのかもしれません」
「やっぱりね」
彼女は立ち上がる。
「あなたの不満を解消するのは、あなた自身よ。ないものねだりしても、あなたの姿は自分の中の不満を解消しなきゃ治らないの」
「どうすれば…」
「取り敢えず、お茶を飲んで花を愛でましょう。小さなことに幸せを見出す練習をするの。あなたの不満を解消させる糸口が見つかるかもしれないわ」
彼女は名案だと言わんばかりに、「そうよ、それが良いわ」と手を叩く。
「それで見つかるんですか?あまり解決に…」
「美味しいケーキも出すわよ」
美味しいケーキが出ると言われて、嫌と言えるわけがない。行きましょう、と促され私は彼女の後をついていくことにした。

3/26/2026, 3:40:40 AM

こんな夢を見た。
「あたし、先輩が好きです。付き合ってください!」
目の前の彼女は頬を赤らめ、私に告白してきた。突然の告白に私はフリーズした。面識のない学年が一つ下の女子だ。
「…ええっと、その、初対面だよね?そういうのは…」
「初対面とか関係ありません!あたしは先輩に一目惚れしたんです!それで返事は」
勢いがすごい。
「無理。私は好きですって言われて、好きになるほど単純じゃないんだ」
諦めてもらえるようにキッパリと断ったつもりだった。
「先輩、男性なのに一人称が私なんですね。それに、恋愛に対しても真面目な態度!もっと好きになっちゃいました!大丈夫です、必ず先輩を好きにさせてみせますから!」
ますます、相手の気持ちを燃え上がらせてしまった。この日から彼女からの猛烈なアピールが始まった。挨拶やスキンシップ、登下校や遊びの誘いが増え、周りから冷やかされ煩わしい。クラスメイトにいつになったら付き合うのか、と何度も聞かれた。私は、彼女の気持ちに応える気はないのだ。告白される前日に、私は聞いていた。彼女とその友人たちが話しているのを。小テストで彼女が一番成績が悪く、罰ゲームをすることになったらしい。罰ゲームで、誰かに告白しろと。しかも、すぐにオーケーするタイプ以外の男に。それで、他の学年でも堅物と知られている私に白羽の矢が立ったわけだ。ゲームのつもりで告白されても困る。好きじゃないのに、告白するなんてありえない。相手の気持ちを弄んで楽しいのか。
「先輩!」
思い出して少し気分が悪くなっていると、お腹の辺りに軽い衝撃と彼女の声が聞こえた。見れば、彼女が私に抱きついてきたらしい。
「おはようございます!今日もかっこいいですね!」
「あ、おはよう…。毎朝、どうも…」
ニコニコする彼女に引きつった笑顔を向けると、彼女はきゃあと声を上げた。耳まで赤くなっている。端から見れば、微笑ましい恋する乙女だ。これを罰ゲームでやってると考えなければ。それにしても罰ゲームとは言え、どうして頑張れるのだろう。告白を断った相手が振り向いてくれるわけがないのに。私を口説き落とすまで粘るんだろうか。
「今日のお昼、一緒に食べましょうね!」
「ああ、うん。考えておくよ」
適当に返事をし、そそくさとその場を離れる私の背に彼女の声が刺さった。
「振り向いてくれなくても大好きですよ、先輩!」

3/25/2026, 8:57:14 AM

こんな夢を見た。雨が降るというので、傘を持ち出かけた。だが、一向に降る気配はない。
「何だ、雨降らないじゃん」
「いいえ、降ってますよ」
振り向くと、傘を差しレインコートを着込んだ女性が立っていた。彼女の頭上には雨が降っており、雨粒が傘を叩いている。
「ちゃんと降ってるんです。わたしの頭上には必ず。天気予報の『ところにより雨』ってわたしのことなんですよ」
いわゆる雨女なのだろうか。反応に困っていると、彼女はまた話し始めた。
「わたし、昔は雨女じゃなかったんです。ただ雨が好きで、傘やレインコート、長靴を集めるのが趣味な女だったんですよ」
「はあ…」
「ある時、思ったんです。雨が毎日降ってくれれば、集めた雨具が使えるのにって。そしてそれは突然叶いました。まさか、自分の頭上から降り続けるとは思いませんでしたが」
滅多なことを願うものじゃありませんね。そう彼女が肩を落とすと、雨脚が強まった気がした。
「雨のせいで、住んでいたアパートを追い出されるし、職場も退職する羽目になるし。散々ですよ」
「それで今はどうしてるんです?」
私が尋ねると、彼女は近づいてきた。
「今の話、全て今日あったことなんです。困ってるんです。家も仕事もなくして、これからどうすれば良いんでしょう」
「うーん…」
悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、中年女性が怪訝そうに見ている。
「あんた、何してんの。その人に関わっちゃ駄目よ」
「え?」
中年女性に腕を掴まれ、近くの喫茶店に連れ込まれた。席に腰を下ろしコーヒーと紅茶を注文すると、彼女に謝られた。
「ごめんなさいね、強引なことをして」
「え、いや別に…」
「あの辺ね、雨女っていう妖怪が出るのよ。あなたが話してた雨具を着けた女がそれなの。ああやって近づいて、自分の雨で濡らして仲間にしちゃうのよ」
まさか、妖怪だったとは。
「あまり変な人に近づかないようにね」
彼女はそんな風には見えなかったが。
「ほら、こっち見てるよ」
促され、窓の外を見る。同じ雨具を着けた同じ顔の女たちがずらりと並び、私たちを凝視していた。

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