「こんな夢を見た」から始まる小説

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3/24/2026, 9:33:36 AM

こんな夢を見た。私は誰かに膝枕され、縁側から雨の庭を眺めている。何だか憂鬱な気分でぼそりぼそりと愚痴を言っていると、頭を撫でられた。共感も理解を示す言葉もなく、ただ私の頭を撫でているだけ。それだけでも何だか気分が晴れてくるような気がして、私は誰かにお礼を言った。
「お礼なんかいいよ、当然のことだから」
私を膝枕しているのは男性らしい。だから、ちょっと膝枕が硬かったのか。それにしても、愚痴を聞くのが当然なんて。人の愚痴なんか面白くもないだろうに。
「当然って…」
「愚痴るなんて、生きてたらよくあることだよ。キミに取り柄がなくてもいいし、情けない部分があっても僕は好ましいと思うんだ」
彼は優しく諭すように話し、私の髪を手櫛で梳かす。随分、私に対して甘い人だ。全く心当たりがなくて、少し申し訳ない気がした。
「どうして、そこまで…」
「キミはやっぱり忘れてるみたいだけど、僕にとって特別な存在だから」
私は彼を知っている気がする。顔を見ようと身動ぎした途端、視界が手で覆われた。
「ちゃんと思い出してくれるまでは駄目だよ」
真っ暗な視界の向こうで、彼はいたずらっぽく笑った。

3/23/2026, 3:52:39 AM

こんな夢を見た。毎日郵便受けを確認するが、何も届いていない。やっぱりなと思いながらも、確認するのがやめられない。きっと今日は入っている、と期待してしまうのだ。
「本当、バカみたい」
自嘲するが、明日も私は郵便受けを確認するのだろう。部屋に戻ろうとして、ふと思った。
「私は何を待っているの?」
少し考えてみる。郵便受けに何が届いたら、私は郵便受けを覗かなくなるんだろう。手紙の返事、何かの合否通知、はたまた懸賞の商品…。
「何か出してたっけ?」
考えながら部屋に戻ると、テーブルの上に封筒が二枚とハガキがたくさん散らばっていた。私は懸賞に応募したり、文通をするので大体テーブルの上は書き損じとかで散らかってる。いや、待てよ。これは書き損じとかじゃないな。
「なんだろう…?」
手に取ると、私は思い出した。これは文通相手の返事と資格の受験申し込み書、あと懸賞に出すハガキたちだ。どおりでいくら待っても来ないはずだ。嫌な予感がして締め切りを確認すると、受験申し込みは今日までだ。いけない、早く郵便局に行かないと!私はテーブルのものをまとめると、慌てて外に飛び出した。すると、私は部屋の中のテーブルに突っ伏していた。郵便局に行こうと外へ出たはずなのに。
「おかしいな…」
首を傾げながら、もう一度部屋の外へ出た。真っ白な光に包まれ、気づくと部屋の中にいる。窓から外を眺めると、真っ白な空間しかない。そもそも、外の世界がないみたいだ。つまり、私は来るはずのない郵便を待っていたらしい。何だかどっと疲れてその場に座り込む。どうして忘れていたんだろう。いや、きっと信じたくなくて現実逃避で記憶を閉じ込めてただけ。そんなことしたって意味ないのに。バカみたい、ともう一度自嘲した。

3/22/2026, 4:14:28 AM

こんな夢を見た。私は突然世界の誰からも知覚されなくなってしまった。声をかけたり、体に触れたりしようとしたが無駄に終わった。人恋しくて人混みの中に突っ立っていると、誰かに肩を叩かれた。驚いて振り向くと、メガネをかけた優しそうな男性がホッとしたような顔をしていた。
「もしかして、私が見えるんですか?」
「はい。あの、僕のことも見えてますよね?」
頷くと、彼は安堵のため息をついた。
「良かった。やっと僕が見える人がいた」
彼も急に知覚されなくなったので、手当たり次第声をかけたりしたらしい。私もそうだと伝えると、彼は驚いていた。
「同じ状態になった人が、僕以外にもいるなんて」
「もしかして、同じ状態の人間同士なら見えるんでしょうか?」
「かもしれないですね。それにしても、本当に諦めなくて良かった。このまま誰にも気づかれず、死んでしまうんじゃないかと」
「ええ、本当に。私も、ずっと一人ぼっちなのかと不安で」
「だったら、一緒にいましょう。そしたら不安はなくなりますよ」
それから、私と彼は一緒に行動するようになった。そして、一年後。一時的なものと楽観視していたが、一年経っても治る気配はない。
「一年、経ちましたね」
「ええ、でも僕たちに誰も気づきませんね」
私と彼はお互いの手を握り、交差点の人混みを眺めていた。
「人がたくさんいても、誰にも気づかれないのは寂しいんですね。一人ぼっちって感じで」
「僕がいますよ」
「そうでした。じゃあ二人ぼっちですね」
「二人ぼっちなら、寂しくないですね」
彼は私の手を強く握り、何かを決心したような顔でこちらを見た。
「少し考えたんですけど、僕たちこのまま旅に出ませんか?いなくなっても、どうせ他の人たちには見えないんですし」
自分のスマホを見つめる。この一年間、誰からも一度も連絡が来ない。心配する声も、欠勤を咎める声もない。本当に私が消えてしまったのではないかと錯覚するほどだ。
「僕と一緒に世界を見に行きましょう」
私は頷く。世界一周旅行なんて初めてだ。
「世界一周旅行?豪華な新婚旅行ですね」
冗談めかして言うと、彼は耳までみるみる真っ赤になった。
「そういう意味じゃ…」
「えへへ、冗談ですよ。旅行楽しみましょうね」
私は茹でダコみたいになった彼を引っ張り、空港を目指した。

3/21/2026, 4:50:17 AM

こんな夢を見た。私は学ランを着た誰かとベンチに座り話している。桜の木の下にあるベンチなので、桜の花びらが舞い散り彼の顔はよく見えない。
「…それにしても、春だね。桜は綺麗だし今日は暖かいし、最高の昼寝スポットだ」
桜の花びらの向こうから彼は、眠たげに欠伸をした。弁当を食べた後で、日当たりのいい場所だから気持ちは分かる。
「寝たら、午後の授業に間に合わなくなるよ」
「ふふ、分かってるって。このまま眠気に負けたら、ぐっすり眠れるなあって思っただけ。それに、キミなら僕のこと絶対に起こしてくれるでしょ?」
「…まあ、ほっとけないし」
彼が笑う気配がした。
「そう言うと思った。…それでさ、進路決めた?」
「志望校のこと?」
「そんな目先のことじゃなくて、今後の人生のことだよ」
さっきの眠そうな声とはうってかわって、真剣な声で彼は尋ねる。
「人生?」
「うん、人生。それで、どう?自分の人生のこと考えてる?」
急にどうしたんだろう。普段の彼なら、進路なんてその内考えるとか言っているのに。
「何も考えず、ぼんやりと大人になったら大変だよ。こんなはずじゃなかったって、絶対後悔する」
「いつもなら進路のことなんて考えたくないとか言ってるのに。もしかして桜を見て切なくなった?」
彼は少し沈黙した。
「…そうかも。きっと、お別れで寂しくなってるだけ」
「お別れ?」
彼は卒業したら、県外にでも引っ越すのだろうか。
「そうだよ、だから心配になっちゃって」
距離が遠くなっても、手紙を出したり会いに行ったり出来るのに。彼は意外と寂しがりらしい。
「引っ越すの?だったら、手紙を書くよ」
彼は首を横に振った。ざあっと先ほどよりも強い風が吹き、桜の花びらが更に舞い散る。彼の姿がまた見えにくくなった。
「距離が遠くなるだけなら、良かったのに」
彼は桜を見上げる。
「この桜が散れば、この夢は醒める。キミが目覚めると同時に、僕は消えて二度と会えなくなるんだ」
辛そうに話す彼の姿は、散る桜の花びらで覆われ更に見えにくくなっていく。桜が散るよりも先に彼が消えそうで、私は焦った。まだ伝えてない事があるのに。手探りで彼の手を見つけ、掴んだ。急に掴まれて驚いたのか、ビクリと彼の手が固く強張った。
「ど、どうしたの。手なんか握って…」
夢が醒める前にこれだけは彼に伝えなくては。
「また会える。夢が醒めても絶対に忘れないから、君も私のこと忘れないで」
彼はため息をつき、私の隣に距離を詰めた。
「忘れる、忘れないの問題じゃないんだけど…まあ、いいか」
彼の手が私の肩を掴み、彼の方に引き寄せられ耳元で囁かれた。
「言われなくても忘れたりしないよ。キミは大事な人なんだから」
目を丸くして彼の方を見ると、彼と目が合った。桜の花びらの向こうに一瞬見えた彼は、泣きそうな笑顔をしていた。
「また会おうね」
彼は立ち上がり、桜の花びらの中に消えていった。

3/20/2026, 9:01:07 AM

こんな夢を見た。私は村の人たちに連れられ、ある場所へと向かっていた。着いた先には、古めかしい台座に剣が刺さっていた。
「これを引き抜け」
「何ですか、これ」
「これは聖剣だ。剣に、勇者として認められると引き抜ける。ともかく、剣の柄を引っ張ってみろ」
抜けるわけがない。私は、ただの武器屋の娘だ。不思議な力とは無縁だし、勇者の末裔でもない。抜けなければ諦めるだろう。私は剣の柄を握り力を入れる。ググッと上に持ち上げると、剣が動きそのまま引き抜けた。呆然としていると、周りから歓声が上がった。
「勇者だ!」
「この村に勇者が現れたぞ!」
呆然としている私をよそに、あっという間に旅の支度が終わり、村を出ることになった。
「大変だろうが頑張ってくれ。なあに、聖剣さえあれば死ぬことはない。聖剣は持ち主を守ってくれるからな」
調子の良い言葉に私は頷き、村を出た。村が見えなくなった頃、私は剣を鞘から引き抜き眺めた。これは、ただの鉄の剣だ。父の店の手伝いで武器の鑑定をしていたので、すぐに分かった。両親をモンスターの襲撃で亡くした私を体よく厄介払いしたかったのだろう。村の人を恨むつもりはない。最近、モンスターが増えて畑や家畜を襲われて食料が減っていた。だから、自分たちの食い扶持を守るためにしたことだろう。
「いや、そんなことはどうでもいい」
私は勇者という大義名分を手に入れたのだ。つまり、好き放題出来るということ。勇者として必要ならば、奪うことも正当化されるのだ。もう私は蹂躙される側ではない。剣を鞘に戻し、村を探すために歩く。剣だけではすぐ死んでしまうだろう。
「勇者って言うわりには、お金全然渡してくれないんだよなあ…」
ぼやいていると、近くの茂みが動いた。こっそりのぞくと、小さなオオカミ型のモンスターが毛づくろいをしている。しめた、今なら隙だらけだ。それに子どものモンスターなら、この剣でいい。私は剣を抜き忍び足で近づくと、モンスターの心臓を一突きした。動かなくなったモンスターを見、私は胸が高鳴るのを感じた。一方的に蹂躙してきたモンスターが動かなくなった。今まで剣を持ったことがない私の手によって!殺した恐怖や罪悪感よりも、高揚感に包まれていた。血まみれになった剣を振り、血を飛ばすと鞘に戻す。大丈夫、私なら出来る。興奮さめやらず私は鼻歌を歌いながら、近くの村を目指した。

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