かの有名な夏目漱石は「I LOVE YOU」を月が綺麗ですね、と訳したことで有名だろう。
これについては様々な見解があって諸説はあるようだけど
単純に好き、と言葉にしない所が日本人らしい奥ゆかさを含んでいて美しい。
ベタではあるけれど、こんなふうに愛を囁かれてしまったら俺はコロッと、好きになってしまうかもしれない。
これについての返し、というのも色々あるらしい。
その中でもおれのお気に入りは「死んでもいいわ」だ。
まぁ、俺が二葉亭四迷贔屓ということを差し置いてもこの言葉にはほかの言葉には無い奥ゆかさがある。
これは、二葉亭四迷がロシア文学の片恋を訳した際に「ваша(=yours)」を「死んでもいいわ」と訳した事が由来らしい。
日本語の観点からみても、自分の命さえも惜しくないほど貴方を愛してるなんてやっぱりロマンチックだ。
いつか、俺もそんな風に思える女性に出会えますように。
あの子に教えたら先生重い!なんて言われちゃいそうだからこの話はしないけどね。
2024.1.29『I LOVE …』
今日は先生にお勧めして貰ってから好きになった作家さんの新作の発売日でショッピングモールの一角にある本屋さんにやってきた。
この日のために私がどれだけ頑張ったことか。
「あ!…あったぁ、!」
わたしの涙ぐましい努力を祝福するように新刊は私の手元へとやってきた。
先生も買ったりしてるかな?なんて考えてまたひとつ先生との共通の話題が増えたようで嬉しくなる。
そうとなれば明日の学校までに読まなくては。
るんるんで、スキップまでしちゃいそうになりながらなんとか家へと帰った。
スマホを開くと先生からメールが入っていた。
”今日新刊の発売日なのしってた?
貴方も買ってたら明日話せるなぁって思ってLINEを。”
先生からのメッセージに心が踊る。
この本を買った時に先生もわたしを思い浮かべてくれたんだろうか。
こうやって先生の日常に私が入り込めてしまったようで妙にソワソワした。
「…もちろん、買いました、っと」
その返信に明日感想をはなそうね、なんて書いてあって急いでその本を捲りはじめた。
早く明日になればいいのになぁ、なんてぼんやり考えた。
2024.1.28『街へ』
「貴方は優しいね、」
お昼一緒に食べたいと散々駄々をこねた後。
観念したような先生が貴方ならいいっか、なんて軽く微笑んで準備室まで並んで歩いた。
先生が、職員室に戻らず準備室でお昼を食べているのを知っていたから。
「別に優しくないです、…先生とこうしてお喋りしたかっただけですし、!」
「…前から思ってたけど貴方ってやっぱり変わってるのね。俺なんかと一緒でたのしい?」
大好きな先生をそんなふうに言われてしまうのはそれを言ったのが先生であってもちょっぴり悲しい。
先生は一緒にいるだけで私の世界に色をつけてくれる人
先生以上の人なんて探したって見つかりっこない。
「先生のおかげで毎日しあわせです。…だから、そんなふうにいわないでください、っ」
「あ〜もう分かったってば。あなたのその顔俺、結構弱いから」
自分がどんな顔をしてるかなんて想像できない。
でも、多分先生のことがさぞかし好きだ、って恥ずかしい顔、してるんだろう。
私の気持ちをするりとかわすのも一種の優しさかもしれない。
2024.1.27『優しさ』
時計の針がちょうど上を向いた今まさに24時。
みんなが寝静まる中こっそり家を抜け出して目的の場所まで歩いた。
冬の夜風は心地いいというにはあまりに肌寒い。
「…あーあ、ほんとにきちゃった。悪い子だねぇ、」
目的の場所に先生は既に来ていたみたいだ。
さして悪いとも思ってなさそうな声色でそういった。
ふたりで深夜のデート、なんてロマンチックじゃない?なんて誘いをしたのは私だったか先生だったか。
「先生と一緒に居られるなら悪い子でもいいんですっ、」
手を伸ばした先生の手をとった。
じんわりと冷えた指先から先生の熱を吸い取る。
「家の前まで、迎えに行ったのに」
拗ねたような口調でそういった。
ぎゅっと握られた手にまた力が入ったから手が冷えてたってことかな。
先生の一挙手一投足にどきどきしてはずかしい。
「…はやく、つれてってください」
「っ、もう…さ、乗って。夜はこれからだよ」
はじめてのキスはミッドナイト。
誰もしらないふたりのひみつ。
2024.1.26『ミッドナイト』
先生が先生じゃなくて、アイドルをやっている夢を見た。
その世界の先生はいつもよりいい意味でも悪い意味でもキラキラしていて、知らない誰かに笑いかけていた。
夢でよかった。私の大好きな恋焦がれる先生が不特定多数の目に晒されてかっこいい、を売るなんて許せない。
不安になって時間も構わず電話をかけた。
暫くコールが続いて、こんな時間に…と思った所でぷつん、と音がしてもしもし?といつもの先生の声がした。
「せ、せんせぇ…」
「え、どうしたの?…なんか悪い夢でもみた?」
「……先生がアイドルになっちゃったりしたらいやです。わたしの先生じゃなきゃ…」
「アイドル…?話がよく見えてこないんだけど…俺がアイドルなんて無理だよ。貴方がよく分かってるじゃないの、」
慰めるようにそういった先生。
無理なんて嘘、私がいちばんわかってる。
先生はかっこよくて可愛くてもしなにか違ってたらアイドルになってても不思議じゃない。
四六時中先生を追いかけ回してる私が言うんだから…。
「、もう…何を見たのか知らないけど、この世界での俺は貴方の先生だよ。まだ早いし、もう一眠りしな。眠れないなら話し相手ぐらいにはなるけど?」
先生はエスパーみたい。
私の考えてることが手に取るように分かるみたいだ。
「…うん、電話、繋いでてください…っ、」
「貴方が眠れるまでね。」
どんな夢をみてももう、怖くない。
別の世界でアイドルをしていたとしても、私の世界の先生は私の先生なんだから。
2024.1.23『こんな夢をみた』