江戸宮

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1/23/2024, 9:21:23 AM

「ねぇ、貴方はもしタイムマシーンがあるとしたらなにをする?」

急に真面目なことを問われたせいで白餡の饅頭にのびた手が行き場を失ったように揺蕩う。
タイムマシーンがあったら、なんて誰しも一度は考えるけれど、その実誰も真剣に考えたことなんてないだろう。

「じゃあ…3年後ぐらいの未来にいきたいです、」

「へぇ、なんでまた3年後?」

「それはなんとなくですけど…未来も先生とこうしてお喋りしてたいなぁって」

「……そう、…あんまり他の人にそういうこと言っちゃだめだよ」

そう言われて自分が口にしたことの重大さに気づいた。
そんなの未来もあなたといたい、って告白してるようなものじゃないか。
穴があるなら入りたい、なんて場面本当にあるんだ。
でも、嘘は言ってないし、先生とずっとこうしていたいのは事実であって……。

「…せんせいにしか、…いいません、……」

タイムマシーンがあるなら、あんなことを口にしてしまう前に戻りたい。
……でも、先生がちょっぴり嬉しそうな顔をしてるからやっぱりタイムマシーンはなくてもいいや。


2024.1.22『タイムマシーン』

1/21/2024, 11:51:02 AM

「もしもし、先生どうかしましたか?」

「……ううん、なんとなく。ねえ、何してたの?」

本を読んでいるうちに言いようのない寂しさにかられた。
一人でいることには随分前に慣れたはずなのに不思議とあの子の声が聞きたくなった。
俺から電話をかけたのは初めてだった。

「今はテスト勉強をしてました!ほら今週テストじゃないですか、」

勉強してたのに電話かけちゃって邪魔しちゃったかな。って思う気持ちとこんな時間までしっかり勉強して偉いねって思う気持ちがせめぎ合う。
あぁ、目の前に彼女がいたらたくさん褒めてあげたい。

「そうだねぇ、今回も100点取れるといいね」

「はいっ、がんばりますね、」

「貴方が今回も100点とったら俺職員室で自慢しちゃおうかしら。貴方が連続で100点をとってくれたって、」

「ッ、せんせえっ…わたしがんばりますから!!」

そんなに食いついてくるとは思わなかった。
なかなか難しいと言われる俺のテストで今回も100点をとったら誇らしくて自慢しちゃうね〜なんてふざけた言葉だったけれどあなたが喜んでくれるなら…。

「じゃあ…勉強がんばって、邪魔しちゃってごめんね。」

「いえ、嬉しかったです。じゃあおやすみなさい先生、」

「…うん、おやすみ」

勉強たくさん頑張ってるみたいだし、明日お菓子でも差し入れしてあげようかな。
可愛い教え子が力を発揮できるように。


2024.1.21『特別な夜』

1/20/2024, 1:53:38 PM

コポコポと音を立てて海に沈んでゆく。
一面真っ青な世界で地上に戻ろうとすればするほど身体が上手く動かなくなってダメだ。
あぁ、死んじゃうのかもなんて
遠のく意識の中まるで他人事みたいに考えていた。


ハッと目が覚めた。よかった。夢だった。
次に脳に入ってきたのは見知らぬ天井だということ。
色んなことが同時に情報として脳に入ってきて、混乱して横になっているはずなのに目眩がした。

「ぁ、せんせぃ…大丈夫ですか…?って、倒れちゃったのに大丈夫なわけないか…。心配、したんですからね…、」

「…貴方居たのね。、倒れた…あぁ、集会中かぁ。悪いことしちゃったなぁ、」

全部思い出した。
今日は校長の話がやけに長かったのだ。
暖房が効きすぎた体育館は暑くて、それに長話をずっと立って聞いてたものだから急に意識が遠くなって…。
あぁ、情けない。なんて思ったが立たせたまま長ったらしい話を展開する校長も悪くない?なんて心の中で思ってちょっぴりおかしくなった。

「…貴方は授業大丈夫?ずっと居てくれたの?」

ベッドサイドにしゃがむようにしている彼女はおれと目線を合わせようとなんとか頑張っていてその様子は愛らしい

「だって、先生呼んでも全然返事してくれなくて…っ、先に会えなくなっちゃったらどうしようって思って来ちゃいました…、」

瞳をうるうるさせて今にも泣き出してしまいそう。
あぁ、泣かないで。あなたの涙に俺は結構弱い。
普通ならサボるなんて、と怒らなくちゃいけない場面なのかもしれないが俺は結構ちょろい。
嘘でも嬉しくないなんて言えなかった。

「…そう、ありがと。ごめんね。」

それとそばに居てくれて嬉しい、今の俺には言えない言葉を手のひらに乗せた。
手を伸ばして目線ほどの彼女の頭に触れる。
何度か左右を行き来すれば、驚いたように目を見開く。
その顔はじめてみた。貴方のそんな顔が見れちゃうなら、こうして海の底に沈んでみるのもわるくない。


2024.1.20『海の底』

1/19/2024, 1:58:12 PM

いつもみる朝の情報番組は既に終わってしまった。
急いで髪をセットしたからかアイロンで火傷した。
それもこれも不運なこと全部めざましがいつもの時間にならなかったせいだ。
いつも早めの行動を心がけているがこういうのはどうしようもない。
もしかしたら、あの子、先に行っちゃったかな、なんて約束もしていないのに女々しく考えてしまう。
約束はしていないけれど、途中で彼女が後ろから走ってきてそれをおはよう、と返すのが俺の日常になってしまった

「…はあ、ツイてない」

彼女と一緒に学校へまで歩くあの道、結構気に入ってたのになぁ
思わずため息をついたら、その拍子にドアの角に足をぶつけたので今日はとことんツイてなさそう。


いつも通りあの道をあるく。
あの子がいたらなぁ、なんて考えて直ぐにこんな寒いなか待たせていたら風邪ひいちゃいそう、と直ぐに心配が勝った。
もし俺なんかを待っててくれたら可哀想でしかたない。
そう思うと自然と歩くスピードが早くなる。
…気の所為じゃない。
あそこにいるのって…もしかして、

「あ、先生っ!…よかったぁ、先行っちゃったかと」

いつもの場所にやっぱり彼女はいた。
惜しげも無く晒された白い脚が寒さからかほんのり赤く染まっている。

「貴方…ずっと待っててくれたの?約束、してないのに」

「約束はしてないですけど、もし同じ状況で先生がここで待ってくれたら私嬉しくて死んじゃうなぁ、って思って。朝から先生に会えたら幸せですし!…ぁ、…でも先生は嬉しくない、か。迷惑、でしたか…?」

きゅるっと上目遣い。あぁ、可愛い。可愛くないわけが。
迷惑なんて、とんでもない。君がもしかして待ってくれてたり、なんて淡い期待を抱いて早歩きになった俺も大概だ

「…ううん、迷惑じゃないよ。待っててくれてありがとうね、」

首元のマフラーを掴んでいた白い手にそっと触れる。
指先まで氷のように冷たい。可哀想だ。
カイロでも持ってくればよかった。

「…せんせ、?」

「……冷たい。ねえ、約束しようよ。毎朝8時にここでさ、待ち合わせするの。休む日はLINEでも電話でも」

「せんせいいの…?」

「貴方がいいなら。約束ね、」

俺と彼女の小指がきゅっと絡まって何度が上下した。
この約束をした今俺は寝坊する気がしない。


2024.1.19『君に会いたくて』

1/16/2024, 11:30:10 AM

初めてみた時にすごく美しい人だとおもった。
金色に染まった髪の毛も綺麗な顔を引き立てる一部になっていて、彼だけが物語の世界から飛び出してきたような気がした。
当時の俺は本当に、そう思っていた。
それから俺が彼にくっついて行動し始めて、彼がとても努力家で負けず嫌いなことを知った。
顔に見合わない男ぽいその性格もたまらなく好きだった。

それは気まずい雰囲気の今も変わらない。
いつも彼を綺麗な人だと思っているし、くしゃっと笑うその顔をみると心が震える。
泣いていたら、(彼が泣いている所は見たことがないが)人並み以上には慰めてやりたいと思う。

多分俺はあの人が好きだった、のかもしれない。


2024.1.16『美しい』

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