江戸宮

Open App

いつもみる朝の情報番組は既に終わってしまった。
急いで髪をセットしたからかアイロンで火傷した。
それもこれも不運なこと全部めざましがいつもの時間にならなかったせいだ。
いつも早めの行動を心がけているがこういうのはどうしようもない。
もしかしたら、あの子、先に行っちゃったかな、なんて約束もしていないのに女々しく考えてしまう。
約束はしていないけれど、途中で彼女が後ろから走ってきてそれをおはよう、と返すのが俺の日常になってしまった

「…はあ、ツイてない」

彼女と一緒に学校へまで歩くあの道、結構気に入ってたのになぁ
思わずため息をついたら、その拍子にドアの角に足をぶつけたので今日はとことんツイてなさそう。


いつも通りあの道をあるく。
あの子がいたらなぁ、なんて考えて直ぐにこんな寒いなか待たせていたら風邪ひいちゃいそう、と直ぐに心配が勝った。
もし俺なんかを待っててくれたら可哀想でしかたない。
そう思うと自然と歩くスピードが早くなる。
…気の所為じゃない。
あそこにいるのって…もしかして、

「あ、先生っ!…よかったぁ、先行っちゃったかと」

いつもの場所にやっぱり彼女はいた。
惜しげも無く晒された白い脚が寒さからかほんのり赤く染まっている。

「貴方…ずっと待っててくれたの?約束、してないのに」

「約束はしてないですけど、もし同じ状況で先生がここで待ってくれたら私嬉しくて死んじゃうなぁ、って思って。朝から先生に会えたら幸せですし!…ぁ、…でも先生は嬉しくない、か。迷惑、でしたか…?」

きゅるっと上目遣い。あぁ、可愛い。可愛くないわけが。
迷惑なんて、とんでもない。君がもしかして待ってくれてたり、なんて淡い期待を抱いて早歩きになった俺も大概だ

「…ううん、迷惑じゃないよ。待っててくれてありがとうね、」

首元のマフラーを掴んでいた白い手にそっと触れる。
指先まで氷のように冷たい。可哀想だ。
カイロでも持ってくればよかった。

「…せんせ、?」

「……冷たい。ねえ、約束しようよ。毎朝8時にここでさ、待ち合わせするの。休む日はLINEでも電話でも」

「せんせいいの…?」

「貴方がいいなら。約束ね、」

俺と彼女の小指がきゅっと絡まって何度が上下した。
この約束をした今俺は寝坊する気がしない。


2024.1.19『君に会いたくて』

1/19/2024, 1:58:12 PM