コポコポと音を立てて海に沈んでゆく。
一面真っ青な世界で地上に戻ろうとすればするほど身体が上手く動かなくなってダメだ。
あぁ、死んじゃうのかもなんて
遠のく意識の中まるで他人事みたいに考えていた。
ハッと目が覚めた。よかった。夢だった。
次に脳に入ってきたのは見知らぬ天井だということ。
色んなことが同時に情報として脳に入ってきて、混乱して横になっているはずなのに目眩がした。
「ぁ、せんせぃ…大丈夫ですか…?って、倒れちゃったのに大丈夫なわけないか…。心配、したんですからね…、」
「…貴方居たのね。、倒れた…あぁ、集会中かぁ。悪いことしちゃったなぁ、」
全部思い出した。
今日は校長の話がやけに長かったのだ。
暖房が効きすぎた体育館は暑くて、それに長話をずっと立って聞いてたものだから急に意識が遠くなって…。
あぁ、情けない。なんて思ったが立たせたまま長ったらしい話を展開する校長も悪くない?なんて心の中で思ってちょっぴりおかしくなった。
「…貴方は授業大丈夫?ずっと居てくれたの?」
ベッドサイドにしゃがむようにしている彼女はおれと目線を合わせようとなんとか頑張っていてその様子は愛らしい
「だって、先生呼んでも全然返事してくれなくて…っ、先に会えなくなっちゃったらどうしようって思って来ちゃいました…、」
瞳をうるうるさせて今にも泣き出してしまいそう。
あぁ、泣かないで。あなたの涙に俺は結構弱い。
普通ならサボるなんて、と怒らなくちゃいけない場面なのかもしれないが俺は結構ちょろい。
嘘でも嬉しくないなんて言えなかった。
「…そう、ありがと。ごめんね。」
それとそばに居てくれて嬉しい、今の俺には言えない言葉を手のひらに乗せた。
手を伸ばして目線ほどの彼女の頭に触れる。
何度か左右を行き来すれば、驚いたように目を見開く。
その顔はじめてみた。貴方のそんな顔が見れちゃうなら、こうして海の底に沈んでみるのもわるくない。
2024.1.20『海の底』
1/20/2024, 1:53:38 PM