不特定多数

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8/1/2024, 7:57:51 AM

だから、一人でいたい。

友達と話すあなたを目で追う。笑っている。私を壊した張本人だっていうのに、それはそれは楽しそうに笑っている。

彼女はいつも輪の中心で、一人でいるところを見たことがない。いつ見ても友達と一緒で、色々なグループと遊んでいるのかそこかしこから噂を聞く、ような気がする。
私は外からそれを見ていた。関わることもなかった。例えるならば、光の彼女と、蛾の私。私は光に背を向けて、いつも一人でいた。
別に寂しくはなかった。それは平穏で、平静で。そのままでよかった。
だというのに、あなたは私を照らした。照らしてしまった。
私に笑いかけて、私の手を引いて、私を見ていた。そしてまた離れていく。普段だったら、そんなのとっくに切り捨てている。
だのに目が合うから。そんな目で見るから。
もう、訳が分からなかった。
それからふとしたことにあなたを思い出す。目で追いかけてしまうし、前より噂が頭に入ってくる。
本当に、嫌だった。こんな情けない自分も、私をめちゃくちゃに壊してしまったあなたも。
こんな思いをするくらいならいっそ初めから、一人のまま。
だから、一人でいたかったのに。

7/30/2024, 11:08:50 AM

澄んだ瞳

開いたままの窓から心地よい風が吹いて髪を揺らす。僕と君は教室に二人きり。
ふと、君は課題から視線を上げる。目が合って、ずっと見ていたことがバレてしまうかと思った。でも君は何も言わずに、頭のヒマワリの髪飾りを指す。
「ヒマワリの花言葉って、知ってる?」
僕へと目を据えそんなことを聞く。たしか、あなただけを見つめるとか、そんなのだったっけ。
「それね、私なの」
いつも通りの表情のままさらっと言う。
けど、それって。
「もしかして、告白してる?」
海みたいに澄んだ、
「ふふ」
君の瞳に焦がされそう。

7/29/2024, 3:30:12 PM

嵐が来ようとも

ざわざわと風が樹葉を揺らし、空は重く沈んでいる。今朝見た天気予報を思い出す。明日は予報通りの台風だろう。
公園で遊んでいる子供はいつもより少なく、がらんとしていた。
なんというか、台風の前のこういう非日常感が好きだった。翌日を思って最悪と落ち込む人も多かろう。それに、幼い頃は不謹慎と怒られたりもした。だが成長してからも思ってしまうのだから、もう仕方がない。
「ちょっと、わくわくする」
横を歩く君がふいに呟く。別に誰に当てたというわけでも、私に向けて言ったようでもあったそれは、同じようなことを思っていてなんだか面白い。
「コロッケでも買いに行く?」
笑いながら言えば君はふっと吹き出して頷く。
そのまま帰路を外れて一緒に歩いていたら、嵐が来ても、しわくちゃになっても、君のことを考えていたいと思った。

7/26/2024, 5:08:43 PM

誰かのためになるならば

なんて綺麗事だ、と思った。よく顔も知らない人間のために献身できるものだ。これは私が斜に構えているからなのだろうか。ため息をつき本を閉じた。
休憩がてら、コンビニに飲み物でも買いに行くことにする。財布だけ持って家を出た。
家すぐ近くのコンビニは小さいが妙にラインナップが豊富で、店長の趣味じゃないのかと思わされる。小さい頃は、ドリンクコーナーになんだかワクワクしたものだが、もう見慣れてしまったよな。適当にジンジャーエールを取りレジに向かう。
ふと、レジ横の募金箱が目に入り、先程の本のセリフを思い出す。
誰かのためになるならば……
私は、誰かのために自己犠牲を払うなんて、してやらない。ただ、これが誰かのためになっていたらと願うだけだ。
500円を入れておいた。

7/22/2024, 5:35:17 PM

もしもタイムマシンがあったなら 二次創作

もしタイムマシンがあったなら。
もしあったなら、過去に戻れたなら、きっとぼくはあの日の自分を止めるだろう。そうしたなら、ぼくはただの人間のままで、帰るべき家があって、きみに出会うこともなかった。

ぼくを見つけたきみが駆け寄ってくる。小麦色の髪を靡かせながら、人懐っこい笑顔で。
「こんにちは、ワンタタン!」
その優しさがぼくを焦がしていることをきみは知らない。太陽のように、じりじりと、胸が締め付けられる。この身体には心臓なんてないのに。

怖い

そう、ぼくは怖いんだ。
ぼくのことを知られるのが。きみがぼくと一緒にいて好奇の目に晒されるのが。ぼくがきみのことを想ってしまうのが。
もういっそ、避けてくれればいいのに。
ああ、苦しいよ。

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