ストック1

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9/20/2025, 10:49:53 AM

自分が送った、既読がつかないメッセージを眺める
メッセージがいつ読まれるのか、今か今かと待ちわびている、のではない
そもそもこのメッセージに既読なんてつくわけがないのだ
なぜなら俺が送っている相手は、俺の作った別アカウントなのだから
なんでそんな無意味なことをしているのかって?
独り言みたいなものだよ
俺のちょっとしたストレス解消と、物事の考えを深めるための手段さ
メモに書けばいいじゃないかと思うかもしれないが、俺の場合メモは壁に向かって話しているような気分になって、精神衛生上よろしくないんだ
でも、メッセージアプリならたとえ相手がいなくても、返信が来なくても、メッセージを送るという過程で誰かに伝えていると脳を錯覚させることができる
虚しさを全く感じない
これをやってから俺のストレスはだいぶ軽減され、気持ちや思考の整理なども以前よりしやすくなった
この方法が多くの人に効果的かどうかは知らないけれど、俺には効果てきめんだ
おまけに、実際には相手がいないから俺のいろんな話を聞かせて疲れさせたり、気分を悪くさせたりすることもない
自分の気持ち、愚痴、考え方、思ったこと、思いついたこと、様々なことを際限なく書きなぐっても、誰からも文句を言われない空間になっている
それでいて、存在しない相手に聞いてもらっている感覚を得られるのだから、最高の方法だと思う
重要なのは、相手への説明を意識しながら書くという点で、ただ架空の相手を感じながら書くのでは、効果を最大限発揮できない
人にわかるように書こうとすることで、自分で気づかなかった感情や考え、論理の矛盾なんかに気付けるわけだ
俺がやっているこれはたぶん、ラバーダッキングと呼ばれるものだろう
突き当たった問題について、誰に聞かせるでもなく独り言やメモで説明することで、新たな発見や視点、気付きなどを得る行為だ
俺の場合、ゴム製のアヒルのおもちゃでも、単なる独り言やメモでもうまくいかない
ぴったりだったのは、メッセージアプリで存在しない人を感じて一方的に言葉を投げかけることだった
たぶん、普通は独り言やメモで十分なんだろう
だから俺のやり方をおすすめすることはできない
人によって向き不向きもあるし
ただ、方法のひとつとして知っておいて、損はないんじゃないかな
まあ、こんなことをしているのは俺だけかもしれないけど

9/19/2025, 11:24:44 AM

春色といえば桜のピンク
夏色といえば海の青
冬色といえば雪の白
では僕のイメージで秋色はなにかというと……
他の季節と違って、オレンジ、黄色と、色の系統こそ同じものの、異なる二色を連想してしまう
秋の象徴として紅葉とイチョウの二つが頭に出てくるからだろう
唯一、ふたつの色をイメージする季節
これだけで秋にちょっとした特別感を感じる
あと、秋だけ違うといえば、僕は春、夏、冬は昼間をイメージするんだけど、秋は夕方の情景を思い浮かべるね
オレンジっていうのは、そこからも来ているのかもしれない
ただ、どうして夕方が思い浮かぶのか、その理由はよくわからないな
秋だけ違うと感じるのは、それだけじゃない
他の季節は、明るくてポジティブな雰囲気があるような気がする
あくまで僕の感じ方だけど
一方秋は、大人しくて少し切ない雰囲気をまとった季節だと思う
こういった印象はいったいどこから来るのだろう?
なかなか答えは出ない
まあ、理由なんてものはどうでもいいか
最近はあるのかないのかわからない、みたいに思えることもあるけど、たしかにまだある秋は、他の季節に負けない魅力に溢れた季節だと思う

9/18/2025, 11:38:01 AM

もしも世界が終わるなら
……くだらないもしもの話
そう思っていた
それなのに、今では現実になってしまっている
あとどれくらい持つんだっけ、この世界?

「二日ですね
あと二日で完全消滅してしまいます」

その短い間に、残りの住人の魂を回収しろってことだね
私はこんなハードで責任の重い仕事、したくないんだけどしかたない
私と相棒にしかできないから
古代に封印されてた大量の魂を刈り取る禁断の魔法を改造して、別の生まれたての世界に刈り取った魂を転生させられるようにしたしたらしい
今はもう魂だけになった七賢者の皆さんがね
私と相棒はその魔法を使いこなせた
なんか、使いこなせた
七賢者は改造しといて使いこなせず、魔法を発動する道具だけ私たちによこして、とっとと魂を刈り取られてもう転生待ち
それにしても、間に合うのかなこれ

「元が大量殺戮兵器ですからね
残り人口を考えれば、順調にいけばギリギリ間に合いますね
問題は、私たち以外この道具が救済のための物だと理解していないことです
刈り取る時の罪悪感、ハンパない」

私たち、世界終焉を前にして狂ったテロリスト扱いだもんね
刈り取るのがかなり心苦しくて、精神的にだいぶキツい
いいことをしてるはずなのに

「それでも、やるしかないですよ
生かすために一度殺すのです」

そうだね
あなたがいてよかったよ
ひとりじゃ病んでただろうから

「それは私も同じことです
感謝してますよ」

ところで、全員終わったらどっちから先に死ぬ?

「私があとから新しい世界に行きますよ
あなたでは私の魂を刈り取る仕事、とんでもなく苦痛で悲しいでしょうから」

そこまで考えてくれてたか
ありがとうございます!
じゃ、遠慮なく殺されるよ
でも、あなたは平気なの?

「余裕ですよ
状況を理解してる人が相手ならね」

そこは割り切れるんだね

「ま、全ては世界に残り二人だけにならなきゃ、しょうがないですけど」

そうだね
じゃ、残る魂をサーッと刈り取って転生させますか!

9/17/2025, 11:29:51 AM

私は一流暗殺者
今回のターゲットは敵組織の暗殺者
同業を相手にするなら、一切の油断は捨てなければならない
なぜなら、相手も暗殺のなんたるかを心得ているから
暗殺者は暗殺するだけではない
暗殺を防ぐ方法も熟知している
いかにして相手の警戒をかいくぐり、暗殺を成功させるかの勝負となる
暗殺方法は絞殺
紐をかけ、一気に首を絞り、殺害するのだ
ごく自然な流れでしゃがみ、靴紐を抜いて、目の前で背中を見せるターゲットの首にかけようとして……転んだ
盛大に
大きな音と悲鳴を上げて
暗殺は失敗した
ヤバい、死ぬ
殺される
ターゲットは私を見下ろし、しゃがみながらぬっと手を伸ばして……
私の手を取ると立ち上がらせた
え?

「お前、もうちょっと頑張ったほうがいいよ?」

渋い声と哀れみの目でそう言うターゲット

「返り討ちにしようと、最初は思ってたんだがな、やめだ
あまりにもお粗末な尾行と、アホみたいな暗殺方法だったから、正直こんな腕で仕事任されてるのかと思って、敵意より可哀想が勝るよ」

お粗末?
アホみたい?

「そ、そんなわけない!
私は一流暗殺者!
ボスだって、お前なら奴を仕留める一助になれるだろうって言ってたし!」

一助って意味は知らないけど、一番役に立つとかいう意味だろう、たぶん

「一助は少しの足しって意味だぞ
使い捨てる気満々じゃないか
さっきから俺の隙を伺ってる連中がいるし、お前で俺の気を引いて足手まといのお前ごと始末するつもりだったんだろうぜ」

え、嘘
私、この人を殺すための生贄にされそうになってた?
ていうか、他に組織の人来てたのか
気付かなかった

「とりあえず、特別にお前を助けつつ連中を返り討ちにするから、そこでじっとしていろ」

そう言うと、ターゲットは私の靴紐を拾い、私を物陰に隠した
すると、私の組織の人たちが数人、拳銃片手に現れる
本当にいるよ
これはもう射殺されるんじゃないかな?
しかし、誰も銃を撃たない

「撃てないだろ?
俺の体にはダイナマイトが巻き付けられてるからな」

なんて恐ろしい防御方法を
なにかの事故で爆発したらどうするのか
それでもターゲットは気にせずに、堂々と歩く

「いいか?
靴紐はこう使うんだ」

私にそう言うと、一人のもとへ走り出して、素早く右腕を靴紐で絡めとると、そのまま相手の手をひねって、離した銃を奪う
その後は早かった
周りの敵全員を目にも止まらぬスピートで射殺していき、最後に自分が銃を奪った相手にとどめを刺した
す、すごい

「ま、こんなところか
さて、もうお前は組織には戻れんだろう」

「使い捨てられたわけだからね……」

「じゃあ、俺の組織に入れ
お前を一流の暗殺者に育ててやる」

他に選択肢のない私は、素直に従うことにした
ああ、まさかこんなことになるなんて
でも、死ななくてよかった
この人に付いていけば、一人前になれるかな
これから頑張らないと
せっかく助けてもらえたのだから

9/16/2025, 11:42:37 AM

答えは、まだもらっていない
勇者側につくのか、我々魔族側につくのか
人類の英雄たる彼は、きっと勇者を選ぶ
たとえ今回現れた勇者が、強い野心を抱いていたとしても
彼は人類の英雄としての働きを期待されているのだから
私たちは勇者を倒し、戦いを終わらせなければならない
人類を救うために
あの勇者は危険だ
勇者らしからぬ、邪悪な野望を持つ
そもそも、魔族は人類が同族争いで滅ばないために、脅威として存在している
我々という共通の敵の前で、人類はひとつとなるから
我々はそういう役目の存在なのだ
しかし、あの勇者は魔王である私を倒し、その力を奪おうとしている
魔王の力で世界に覇を唱え、自らの望む世界を作ることを目的として
勇者の望む世界
それは、戦いの終わらない世界
勇者は戦争が好きだった
自分が前線で戦うのも、策を練って侵略するのも
戦いこそ、彼にとって最も楽しい娯楽
その結果、世界が滅んでも勇者は本望なのだ
世界のバランスを保つために戦う我々とは、理由が全く違う
英雄がいてくれれば、あの歴代の中でも突出した力を持つ勇者を倒せる可能性が高まる
だからこそ、交渉をしたのだ
ただ、望みは薄いと思う
なぜなら、彼は人類の英雄だ
たとえ断られたとしても、私は恨むことはない
そして彼と刃を交えることになっても、ためらわない
我々は、我々の使命を果たすのみ
英雄は来た
答えはまだだが、彼から勇者側につくと告げられる覚悟はしている
……私の前に現れた英雄は、魔族の紋章が描かれた盾を掲げた
私は目を見開く
魔族の紋章を掲げる
それの意味するところは、魔族として同志たちと共に戦うという意思表示
彼は勇者を敵とし、我々とともに歩むことを決断してくれたのだ
彼の目からは、とても強い意志が感じられた
我々に、頼もしい仲間が増えた
私は最大限の感謝を英雄に捧げる
さあ、この先の戦い、絶対に負けるわけにはいかない
我々魔族は英雄とともに勇者を倒し、人類を守る

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