ストック1

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12/31/2025, 11:19:38 AM

「良いお年を」

12月31日
近所のおじさんが、例年と同じようにそう挨拶をして去っていく
新年になったら、また挨拶をしに来てくれるのだろう
あけましておめでとう、と
来年はどんな年になるだろう
私はワクワク感を胸に抱きながら、大晦日を楽しもうと心に決める
そういえば、おじさんはいつから「良いお年を」と挨拶しに来てくれるようになったんだっけ?
たしか、私がもう少し小さい頃、越してきたんだったはず
あれ?
おじさんが越してきたのって、いつ?
そんなに年月は経っていないはずだけど
おかしいな
具体的な年が思い出せない
なんか、そんなわけないのに、10年以上経っているような、不思議な感じがする
私は15歳だから、さすがに10年なんてことはありえないけど
でも、そのわりにはおじさんに挨拶された年末の思い出がたくさん、私の記憶の中に存在してる
それぞれ、いつの記憶だったかはわからない
ただ、間違いなく事実として経験したことだとわかる
これは、どういうことなんだろう?
よく考えてみれば、年末に限らず、それぞれの季節の私の思い出は15年をゆうに越えている
しかも、そのうちのほとんどの思い出で、私は15歳か、誕生日を2月3日に迎えたあとの16歳だった
私は、同じ年を繰り返している?
これはいったい……?


……あれ?
私は今、何を考えていたんだったか
なにか大事なことだった気がするけど、思い出せない
まあ、いいか
そのうち思い出すかもしれない


『またループに気づいたか
さすがに、彼女にだけは何度思考を妨害しても度々気づかれてしまうな
これも彼女が主人公であるが故か
だが、ループに気づかれて、脱出などされては……時間を進められては困るのだよ
君たちの日常の世界は、まだまだ長続きしてもらわねばな
目指すものは、国民的な作品なのだから
今は何も考えず、年末年始を楽しみたまえ
どうせいつかは時が進む
それがいつになるかは、わからないがね』

12/30/2025, 11:51:43 AM

私は今、母なる星に包まれて、星の鼓動を感じている
心で

「サボってるだけだろ」

時に厳しく、時に優しく
そして慈愛を持ちながらも残酷
私たちは、そんな星で暮らしているんだ

「私がお前に対し残酷になってやろうか」

この星の力は止められない
であるならば、私たちはこの星とうまく付き合い、できる限り穏やかに暮らせるように、様々な努力をするべきだ

「やるべきことを終わらせる努力もするべきじゃないかな」

巨大で強大な星を変えるのではなく、私たちが自分を守れるように、進化していく必要がある
そう、いつだって私たちは、前に進むことで未来をつかみ取ってきた
遥か昔から今に至るまで
そしてこれからも

「今すぐサボるのをやめて前に進んでくれるとありがたい」

星と争うのではなく、星を理解し、星と一体になる
そう、大事なのは星の声に耳を傾けること
対話して相手を知ることが大切なんだと思う

「目の前にも差し迫った大切なことがあるよ」

これからも母なる星の声を聞き、進化し、平和を目指して暮らしていこう

「まずはやるべきことを片付けないことには平和は訪れないよ
そして私の声を聞け、無視するな」

12/29/2025, 11:31:11 AM

死後行き着く場所にて

「僕らの命の終わりって、もう少し派手なものだと思ってたんですよ」

彼は不服そうに呟いた

「あんな静かな終わりだなんて、納得いきませんよ」

確かに、彼の複数の仲間は派手に息絶えている
ここへ来た時も、殺されたわりには自慢気にしていたのが印象的だ
そんな仲間たちに、羨望を持っていたのだろう
彼は本当に残念そうだった

「本来の目的を達成できないとわかってから、逃げつつも目立つ散り様を見せたかった
先に逝った仲間に誇れる死に方をしたかった……」

目的を達成できれば、それに越したことはない
それが叶わないとなり、どうせ無理ならいっそのこと、という思いがあったようだ

「ある仲間は凍りついて死に、ある仲間は大量の毒を浴びて死に、またある仲間は武器で叩かれ圧殺させられました
僕もね、そういうのがよかったんですよ」

彼の無念が痛いほど伝わってくる
私にできることはその無念を聞き続けることだけだ

「僕の死に方は……落ちてきた物の中にスポット入って、そのまま誰に見つかるでもなく餓死ですよ
地味すぎます」

最後の希望まで潰えてしまう悲しみは察するに余りある

「子孫も残せず追いやられ、冷却スプレーも殺虫剤も浴びず、新聞に叩きつけられもしない
地味ぃな事故死です
今頃僕の死体は干からびてるんじゃないですか?」

本当に、このゴキブリは可哀想だ
どうせなら来世は素晴らしい生涯を送ってほしい
私にできることは話を聞くことだけ
それがとても歯がゆい

「来世は、カブトムシがいいな」

大きく出たな
いや、そんな言いぐさはゴキブリという種に失礼か

12/28/2025, 10:51:08 AM

へえ、冬休みに旅行かぁ
いいですね
奮発してグアム?
わぁ、すごい
そのためにずっと貯金してたんでしたっけ?
そういうのができる人っていいですよね
それにしても、私の周りの人たち、けっこう年末年始に旅行へ行く人多いな
まぁ、大体は国内の近場らしいですけど
普通はそんなもんですよね
計画的に貯金なんてやらないから
私?
私は旅行は行きませんね
行きたいのはやまやまなんですけど、金銭的にそこまでの余裕はなくて
余裕はないというか、他に優先したいものが多いだけですけど
そんなだから、ちょっと美味しいもの食べて終わりです
ああでも、心は旅行に行きますよ?
心の旅路を楽しむ予定です
具体的には、旅番組を見まくるんですよ
なんか今回の年末年始、そういう番組がテレビやネットで多いんです
国内も海外もガッツリ見ます
観光地だけじゃなく、そういうところから外れた街とかをやる番組もあるので、ちょっと違った楽しみもできて面白そうなんです
え?
まあ、そんなに旅番組好きなら旅にお金を回せっていうのはわかるんですけど……
正直に言ってしまいますと、準備とか、現地での移動とか手続きとか、面倒くさいんですよ
それを含めて楽しむのが旅とは思うんですけど、どうしてもハードルの高さを感じてしまって
でも、番組ならただ見ていればいいだけ!
だから旅する代わりに旅番組で癒やされるんですよ
そうですよね
気持ち、わかりますよね
誰しも少なからず持ってる気持ちですよね
でもその面倒くささを乗り越えて、むしろ楽しみながらグアムへ行ける行動力には感心しちゃいますよ
お土産話、楽しみにしてますね
……話以外のお土産も期待しちゃっていいですか?
おっ、じゃあそれも楽しみにしてます
エンジョイしてくださいね!

12/27/2025, 11:36:44 AM

危険であるため、封印された魔法の鏡があった
その名を、凍てつく鏡
この鏡で自らの姿を見た者は、心が凍てつき、感情の起伏が乏しくなる
鏡に映る自分に感情を奪われると言われており、実際、鏡を見たものによると、鏡の向こうの自分は活き活きして見えたとか
感情を失えば、その人はまともに生きることは難しくなるだろう
そんな危険性の高い凍てつく鏡は、頑丈で、あらゆる手段を用いても破壊することができない
ゆえに、立入禁止の危険物が封じ込められる場所に移された
そんな中、凍てつく鏡を覗きに行く男がひとり
彼は、熱い男だった
いや、暑苦しいと言ったほうが正しいか
男は親切で優しく、いいやつと言って差し支えなかったが、鬱陶しいと思う者は確かにいた
そういう人間は知らずに恨みを買う
彼を恨むその者たちは、彼が凍てつく鏡の危険性を取り除ける、と管理組織に嘘をつき、適当な頼みごとを彼に対してでっち上げ、凍てつく鏡のもとまで送り出した
彼の感情を奪うために
男はいよいよ凍てつく鏡の前に立ち、被せてあった布を外す
男は鏡の中の自分の姿を見た
その瞬間、鏡にヒビが入る
そして、亀裂はどんどん大きくなっていく
凍てつく鏡はそのままあっけなく砕け散った
何が起きたのか
理由を説明しよう
感情を奪われるには、男の心は暑苦しすぎた
凍てつく鏡が男の感情を奪い去ろうとしたが、そのあまりの暑苦しさにキャパシティオーバーを起こしたのだ
高い心の熱量により、鏡は耐えきれなくなり結果、砕け散った
以上が、鏡に起きた出来事の全てである
戸惑う男はとにかく外に出て事情を説明
すると管理組織の者たちは歓喜しながら礼を言った
彼は何がなんだかわからなかったが、とりあえず自分が何かの役に立ったということは理解したので、ひとりひとりに握手をして笑いかける
後日、彼を嵌めようとした者たちは捕まることとなったが、男は最後まで何が起きたのかよくわかっていなかったという

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