私は一流暗殺者
今回のターゲットは敵組織の暗殺者
同業を相手にするなら、一切の油断は捨てなければならない
なぜなら、相手も暗殺のなんたるかを心得ているから
暗殺者は暗殺するだけではない
暗殺を防ぐ方法も熟知している
いかにして相手の警戒をかいくぐり、暗殺を成功させるかの勝負となる
暗殺方法は絞殺
紐をかけ、一気に首を絞り、殺害するのだ
ごく自然な流れでしゃがみ、靴紐を抜いて、目の前で背中を見せるターゲットの首にかけようとして……転んだ
盛大に
大きな音と悲鳴を上げて
暗殺は失敗した
ヤバい、死ぬ
殺される
ターゲットは私を見下ろし、しゃがみながらぬっと手を伸ばして……
私の手を取ると立ち上がらせた
え?
「お前、もうちょっと頑張ったほうがいいよ?」
渋い声と哀れみの目でそう言うターゲット
「返り討ちにしようと、最初は思ってたんだがな、やめだ
あまりにもお粗末な尾行と、アホみたいな暗殺方法だったから、正直こんな腕で仕事任されてるのかと思って、敵意より可哀想が勝るよ」
お粗末?
アホみたい?
「そ、そんなわけない!
私は一流暗殺者!
ボスだって、お前なら奴を仕留める一助になれるだろうって言ってたし!」
一助って意味は知らないけど、一番役に立つとかいう意味だろう、たぶん
「一助は少しの足しって意味だぞ
使い捨てる気満々じゃないか
さっきから俺の隙を伺ってる連中がいるし、お前で俺の気を引いて足手まといのお前ごと始末するつもりだったんだろうぜ」
え、嘘
私、この人を殺すための生贄にされそうになってた?
ていうか、他に組織の人来てたのか
気付かなかった
「とりあえず、特別にお前を助けつつ連中を返り討ちにするから、そこでじっとしていろ」
そう言うと、ターゲットは私の靴紐を拾い、私を物陰に隠した
すると、私の組織の人たちが数人、拳銃片手に現れる
本当にいるよ
これはもう射殺されるんじゃないかな?
しかし、誰も銃を撃たない
「撃てないだろ?
俺の体にはダイナマイトが巻き付けられてるからな」
なんて恐ろしい防御方法を
なにかの事故で爆発したらどうするのか
それでもターゲットは気にせずに、堂々と歩く
「いいか?
靴紐はこう使うんだ」
私にそう言うと、一人のもとへ走り出して、素早く右腕を靴紐で絡めとると、そのまま相手の手をひねって、離した銃を奪う
その後は早かった
周りの敵全員を目にも止まらぬスピートで射殺していき、最後に自分が銃を奪った相手にとどめを刺した
す、すごい
「ま、こんなところか
さて、もうお前は組織には戻れんだろう」
「使い捨てられたわけだからね……」
「じゃあ、俺の組織に入れ
お前を一流の暗殺者に育ててやる」
他に選択肢のない私は、素直に従うことにした
ああ、まさかこんなことになるなんて
でも、死ななくてよかった
この人に付いていけば、一人前になれるかな
これから頑張らないと
せっかく助けてもらえたのだから
9/17/2025, 11:29:51 AM