答えは、まだもらっていない
勇者側につくのか、我々魔族側につくのか
人類の英雄たる彼は、きっと勇者を選ぶ
たとえ今回現れた勇者が、強い野心を抱いていたとしても
彼は人類の英雄としての働きを期待されているのだから
私たちは勇者を倒し、戦いを終わらせなければならない
人類を救うために
あの勇者は危険だ
勇者らしからぬ、邪悪な野望を持つ
そもそも、魔族は人類が同族争いで滅ばないために、脅威として存在している
我々という共通の敵の前で、人類はひとつとなるから
我々はそういう役目の存在なのだ
しかし、あの勇者は魔王である私を倒し、その力を奪おうとしている
魔王の力で世界に覇を唱え、自らの望む世界を作ることを目的として
勇者の望む世界
それは、戦いの終わらない世界
勇者は戦争が好きだった
自分が前線で戦うのも、策を練って侵略するのも
戦いこそ、彼にとって最も楽しい娯楽
その結果、世界が滅んでも勇者は本望なのだ
世界のバランスを保つために戦う我々とは、理由が全く違う
英雄がいてくれれば、あの歴代の中でも突出した力を持つ勇者を倒せる可能性が高まる
だからこそ、交渉をしたのだ
ただ、望みは薄いと思う
なぜなら、彼は人類の英雄だ
たとえ断られたとしても、私は恨むことはない
そして彼と刃を交えることになっても、ためらわない
我々は、我々の使命を果たすのみ
英雄は来た
答えはまだだが、彼から勇者側につくと告げられる覚悟はしている
……私の前に現れた英雄は、魔族の紋章が描かれた盾を掲げた
私は目を見開く
魔族の紋章を掲げる
それの意味するところは、魔族として同志たちと共に戦うという意思表示
彼は勇者を敵とし、我々とともに歩むことを決断してくれたのだ
彼の目からは、とても強い意志が感じられた
我々に、頼もしい仲間が増えた
私は最大限の感謝を英雄に捧げる
さあ、この先の戦い、絶対に負けるわけにはいかない
我々魔族は英雄とともに勇者を倒し、人類を守る
9/16/2025, 11:42:37 AM