冷瑞葵

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9/9/2025, 4:37:42 AM

仲間になれなくて

 そんなに面白い話でもないのだけれど、このお題を見てふと思い出したことがあるので書いてみようと思う。
 子供の――ここで言う「子供」というのは未就学児から小学1年生くらいまでを指すが――あの頃出されていた問題で、よく「仲間はずれを見つけましょう」というのがあった。例えば花のイラストが並んでいて、あるものは花弁が丸く、あるものは細長い。またあるものは葉がギザギザしており、あるものは滑らかな葉を持っている。これらの特徴から自分なりのルールを設け、その枠から外れるものを答えましょうという問題だ。
 ルールの作り方は複数ある。花弁や葉の形に着目してもいい。色に着目してもいいし、大きさに着目してもいい。私はこれを全部洗い出すのが好きだった。あらゆるグループ分けを考えて、仲間はずれになる個体をその都度見つけていく。
 すると、問題にもよるけれど、どうしても誰とも仲間になれないヤツが現れてくる。反対にどうしても仲間はずれにできないものもいる。
 仲間になれない個体は周囲とまったく違う見た目なのかと言われると、そうではない。ただカテゴライズを行うと多数対一になってしまう。当時の私は彼を仲間に入れてあげようと問題文と睨めっこしていたものだ。
 ……あぁ、お題から少しズレてしまったかな。特段オチはない。成長するにつれてあの手の問題にも飽きてろくに向き合わなくなった。仲間になれなくて毎回解答欄に名前を書かれていたあの子は……と、締めの言葉でも考えようと思ったけれど、案外毎回特別な存在になれて嬉しかったのかもしれない。

9/4/2025, 4:30:08 AM

secret love

 最近全然更新してなかったからいい加減また書かなきゃ〜と思っていたところ、今日のお題は「secret love」。う〜ん、難しい。

 何を書いたらいいかわからないので思いついたままに書き連ねる。というわけで早速脱線する。
 私はsecretという単語を見るたびにちょっとした疑問が湧く。秘書を英語で言うとsecretaryになるけれど、アルファベットの並びが似ていることと「秘」という漢字を共通して持つことに何か理由があるのだろうか、と。
 ……もし面白い由来があれば、そこにloveを絡めて物語を考えられやしないだろうかというのが本音だ。

 この機に調べてみた。何ともややこしい。secretaryの語源はsecretではあるけれど、secretaryの意味は厳密には秘書とは違う……と。
 私の語学力ではこれ以上の情報を処理しきれなかった。難しいよイングリッシュ。そして物語の参考にはならなさそうだよ。

 まぁせっかくsecretaryについて調べたので、秘書と社長の恋愛話でも考えてみましょう。
 秘書が社長に恋愛感情を抱いているが、それを言葉にしてしまったらもう一緒にはいられない。秘書の名前は「愛」でいいでしょう。secretary Loveつってね。なんかお題にかかってそうだよね。
 それで、どうしたら物語が発展するかな。会社を倒産でもさせればいいだろうか。社長が「君を解雇せざるを得ない」って言って、秘書が「じゃあ奥さんにしてください」って返して。

 ……恋愛モノを考えるのは苦手だ。私自身が恋愛の経験を積んでないから、何に人々がときめくのかわからない。そして「一般ウケしそうな展開ってなんだろう」としか考えられない自分に嫌気が差す。

 私流にするのであれば、秘密の恋は秘密のまま終わる。社長として大成した想い人と、別の就職先で自分の道を歩み始めた主人公の愛。お互いが幸せで、でも悲しくて、2人の寂しさはそのまま生涯交わることなく無情にも人生は進んでいく。
 うん、やっぱり私はこの展開のほうが好きだな。一般ウケするかは別として。

8/5/2025, 4:24:06 AM

ただいま、夏。

 昨日のお題で下書き書いてたのに投稿忘れててプチショック……。ま、気持ちを切り替えていきます。
 お題にある「ただいま」は現在という意味なのか、あるいは挨拶なのか。素直に考えれば前者だろうがせっかくだし後者で考えたい。
 「ただいま」を挨拶だとすれば、「夏」は家でお留守番をしていたのだろう。「夏」を人の名前と考えることもできるけれど、ここでは夏という概念そのものとして扱ってみる。
 私は周囲の環境が夏に変化していくものだと思っていたけれど、帰る場所として存在している四季の1つの中に私たちが向かっていくとも考えられるのだろうか。夏は私たちがやってくるのを未来でずっと待っていてくれているのか。だとしたら最近暑くなるのが早いのは夏が私たちを恋しく思っているからかもしれない。それならちょっと可愛く見えてくる――ことはない。暑いものは暑い。
 もう少し考えてみよう。「ただいま、夏。」が台詞だとしたら、「夏」の存在は話し手にとって家族というより恋人やペットに近い気がする。家に帰宅したときに相手の名前って基本的には呼ばないと思うのだ。相手が恋人かペットか、あるいは幼子でもない限り。
 そうすると、夏は私たちにとって愛しい存在なのか? 少なくともここ数年の感覚で言うと答えは否になってしまうな。仮説ははずれたか。
 あぁ、先ほど「家に帰宅したときに相手の名前って基本的には呼ばないと思う」と言ったけれど、名前を呼ぶ例を新たに1つ思いついた。宣戦布告。同郷の宿敵に会ったときも怒りを込めて名前を呼ぶ気がする。帰宅というよりは思い出の地で再会を果たしたときの挨拶として。
 仮に人間たちが夏を敵と捉えているとして、夏のほうは私たちをどう思っているんだろう。敵意はないんじゃないかな。無邪気な悲しき怪物というイメージが合う。「ただいま」と言われてさぞ喜んでいるんだろう。その真意にも気づかずに。
 着地点がわからなくなってきた。今日も暑い。いつか「さよなら、夏。」と言える日を心待ちにしている。これを今日の締めの言葉とさせてもらう。

7/30/2025, 9:35:00 AM

タイミング

 タイミングと言えば、昔から思っていることがある。
 私はコミュニケーションにもタイミングというのがあると思う。それは単に話しかけるタイミングのことではなくて。
 例えば、3日前に言われた言葉を今日他の人に言われたら簡単に受け入れられたり。全く響かなかった名言がある日突然心の奥まで浸透してきたり。友人が勧めてきたアニメに数年後興味が湧いたり。
 これらは必ずしも相手を軽んじている(あるいは高く評価している)ことに起因するわけではなくて、全てはタイミングなのだと私は思っている。
 受け取り手側にもタイミングがある。心の準備が整ったとき、はじめてコミュニケーションが成立する。
 だから私は、自分が伝える側に立つときは「これは今すぐに理解させるためのものではなく、いつか来るそのときのために材料として伝えるのだ」と意識している。「だから言ったのに!」なんてもちろん禁句だ。

 書いていて思ったけれど、この発想は転生モノに活かせるだろうか。
 主人公は、転生前の話を与太話として聞いていた。馬鹿げた話を考える人もいるものだな、と。しかしそんな主人公はある日、前触れもなく自身の前世の存在を現実のものとして強く認識する――。
 いや、これはマジョリティと変わらないな。大抵の作品でも「あるとき突然前世の記憶に目覚めた」と説明されている印象だ。
 むしろ転生ではなく、長命種の話なら……と思ったけれど、これも既にあるか。有名作品の二番煎じになってしまう。
 伝える側の物語ならどうだろう。長い時間をかけて多くの人に言葉を送り、機が熟した瞬間に世界中の人が主人公の思想を理解する。精神レベルの世界征服の物語。面白くするのは難易度高そうだな。

 自分の考えを作品に落とし込むって難しい。これも一種のタイミングなのだろうか。適切なときにアイデアが降ってくるようになっているのだろうか。
 今回のこれは材料として残しておこう。いつか来るタイミングで今日の思考も全て自分のものにするため。

7/28/2025, 10:07:38 PM

虹のはじまりを探して

 雨上がりに光の反射で空に浮かび上がる、カラフルなアーチ状の現象。
 それは大抵の場合長くはもたず、時間の経過とともに薄くなり、やがて消えていく。その儚さにこそ人々は惹かれるのだろう。
 困る。大変困る。一度現れた虹は二度とは現れない。似たものはあっても同じものはない。一度消えたらそれで終いだ。困る。
 僕が出会ったのは恐ろしくデカい虹だった。海の向こうにまで届くんじゃなかろうかというくらい、荘厳で威圧感のある虹だった。別に近づきたくて近づいたわけじゃない。雨上がりに上を見上げたらそれがあった。普通の虹ではないと直感的に悟った。
 次の瞬間には体が浮く感覚を覚えた。歩こうとしたら地面がなくなっていた。驚いた。そりゃあ驚いたさ。
 手持ちのカバンを唯一拠り所として抱きしめて、空中で歩こうと藻掻いた。水滴に反射した光が目に眩しかった。僕は虹に吸い込まれていた。
 正直に言って、死んだんだと思った。虹の橋を渡るという表現があるが、あれは正しかったんだなぁなどと思ったものだ。
 しかし僕にはまだ体温がある。見知らぬ土地で、夜空の下で呆然と立ち尽くしている。
 ――つまり、なんだ。にわかには信じがたい話だが、あの虹は多分ワープホールだった。
 僕は虹の始点から終点までひとっ飛びに移動してしまった。
 暗闇の中でぼんやりと照らされている看板には見知らぬ言語が書かれている。一瞬本当に天国かと思ったけれど、GPSはしっかり機能して僕の位置を指し示していた。だだっ広い平野の真ん中に青い丸がぽつんと光っている。
 公共交通機関は、徒歩で行けるような場所にはなさそうだ。見たところ家もないし当然人も歩いていない。朝になれば誰か来てくれるだろうか。
 なんか――もう、わかんないな。これからどうしよう。
 帰る手段は何かあるだろうか。一番に思いつくのは来た道――否、虹を戻ることなのだけれど、虹のはじまりが見当たらない。真夜中に虹が残るはずもないか。困った。
 日が昇ったらまた虹のはじまりを探して、地元まで連れて帰ってもらおう。どうか別の場所に連れて行かれませんように。
 あぁ、今晩のうちに雨が降ることも願わなきゃいけないのか。まったく、恨むよ。雨降ってくれよ。

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