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9/8/2022, 11:05:16 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十話」

志那はカインドを連れて、自分の家に帰って来ました。
「ココが志那の家か…中流階級の良い家じゃん」
「私の家、そんなに良いかな…?良くある普通の家だけど。とにかく入るよ」
志那とカインドは、家の中に入りました。
「ただいまー!」
「お帰り。随分遅かったじゃない」
志那は、クラスメートを連れてるのに母がいつもの対応だったので、少しおかしいなと思いました。
「お母さん、今居るのって私一人よね?」
「は?何言ってんのよ?どこをどう見ても志那一人じゃない」
「やっぱり…」
志那は、カインドは幽霊か何かだと確信しました。
「それより、アンタこんな時間まで何処ほっつき歩いてたのよ?9時過ぎてるじゃない」
「ご、ごめんなさーい!」
志那は、カインドに
「ホラ、私の部屋行くよ」
と小声で言って、二階の自分の部屋まで連れて行きました。
「ココが志那の部屋か…」
「本当に変な事しないでね」
「とりあえず、座布団に座って良いか?」
志那の部屋に入ったカインドは、志那の部屋にあったクッションに座りました。
「ソレ、クッションなんだけど…って、座った形跡が無い!」
「じゃあ、話始めるよ」
カインドは、説明をし始めました。

「は、空想の世界の人間。カインドって名前も俺の主がその名前で活動しているから、俺自身の名前もカインドになっている」
「え?空想の世界?」
志那は、目を丸くしていました。
「空想の世界だから…現実世界で言うメディアで見ている光景が幻覚で見える感じだな」
「へー…カインドと零也って、同一人物?」
「同じだけど、別々に分かれている。俺と零也は別人間だ。実際の零也とは関係が無い」
「じゃあ、カインドと零也は別って事?」
「まぁ、そんな所だ。同一人物だけどな」
志那は、ただ目を丸くしていました。
「カインドって、配信の世界のキャラクターだよね?配信の世界がスマホやタブレット無しで現実世界に現れてるの、何で?」
「まぁ、一言で言えば、志那が今見ている配信の世界は空想の世界だな。空想の世界は人間の思念の集まりの世界だ。要は、人間の想像の世界って所だ」
「く…空想の世界?!」
お互いの話は途中から噛み合ってはいないが、話は通じてるような会話が続きました。
「零也とカインドって、同一人物だけあって本当にキャラそっくり…」
「志那に俺の姿が見えるって事は…極地の影響を受けてる可能性が高いな」
「きょ…極地?」
「まぁ、好奇の目が集まる禍々しい世界の事だな。厄とか邪念とかが集まって出来た恐ろしい世界って所だ。俺自身は詳しくは分からんが…」
「??」
志那は、ただただ目を丸くしていました。
「多分、志那はその極地の影響を受けて、俺達が見えるようになったんだと思う」
志那は、何が何だか分からない状態でした。

「へ…?配信の世界は空想の世界で…極地の影響を受けてカインドが見えるようになって…」
「ゴメンな、いきなりこんな話長々とさせちまって」
「つまり、カインドは配信の世界みたいな空想の世界の住人で、現実世界の零也とは別で、私は、極地って言うまがい物の影響を受けて空想の世界の住人が見えるようになったって事?」
「そんな所だ。要点だけ見事にまとめたな」
志那は、カインドが言ってた事を、頭の中で整理しました。
「じゃ、俺は帰るぞ。志那は、もう寝る時間だろ?」
「あ…ちょっと!」
カインドは、部屋の窓から飛び降りるように出て、自分の世界へ帰って行きました。
「何か…今までの事が嘘みたいに見える…」
志那は、空いたままの窓を見て、
「さっきまでの事は、幻じゃない。現実なんだ」
と、確信しました。

9/7/2022, 2:24:00 PM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第九話」

肌の色はベージュ色、目の色は焦げ茶色、茶髪のてっぺんに大きなお団子のポップ系のファッションを着た元気なギャルっぽい女子高生の志那は、帰り道を急いでいた。
「すっかり遅くなったー!零也の所に居すぎたかな…?」
志那は、この日もレンタルオフィス街に行っていた。
「零也に好きな人が出来たらどうしよう…私でありますように!」
突然、志那のスマホの着信音がなった。
「誰からだろう…?」
志那はスマホのアプリを開いた。
「え…?!私の顔写真や住所や電話番号が広まっている?!」
SNSには、「カインドに近づく女」と言うタイトルで志那の個人情報が掲載されていた。
「何コレ……?!一体、誰が広めたのよ?」
志那は、コレから面白半分に噂される被写体になってしまう事を恐れた。

「な…何で?私、何か悪い事した?」
志那は、周りの人達で自分に恨みを持つ人間が居るか、頭を巡らせていました。
「うーん、誰か居たかな…?まさか、梨々華じゃ…?でも、別に良いじゃん。零也は、クラスメートなんだからさ。ユーチューバーは憧れの的だけど…」
「そりゃあね。ユーチューバーはみんなの憧れの的」
「みんなの物を独り占めにしようとしたから、ファンに狙われたんだよ」
「だ…誰よ?!」
「我々は饅頭。You Tubeの解説動画ではよく見かける筈だぜ?」
「我々のお陰で、You Tubeが楽しく分かりやすいコンテンツになってるから感謝はすべきだよ」
志那の前に、数多くの顔だけの妖怪の饅頭が現れました。
「あ!知ってる!どっかで見たことあると思ったら、『まったり』じゃん!」
「やったー!我々が有名だと言う証拠だー!」
饅頭達は喜びだして、周りをぐるぐる回りだしました。
「早速だが、一般人がユーチューバーに近づいた罪は重い」
「始末するぞ!」
「え!?何なに…?」
饅頭達は、志那の周りを取り囲みました。

「かかれー!!」
「キャー!助けてー!」
志那は、饅頭に襲われそうになると、突然、零也らしき人物が志那の前に現れて、
「ダークミスト!」
と、唱えると、辺り一面に黒い霧が立ち込めました。
「う……うわああああああ!」
「逃げろォォォォォオオオオ!」
饅頭達は、一目散に逃げて行きました。
「零也……なの?」
「俺はカインドだよ」
ワルっぽい高校生に見える零也は薄いベージュの肌、黒目の隻眼、黒髪に赤のメッシュが入っている、ショートのウルフヘア。中肉中背だけど、痩せ型に近い体型。黒の地雷系ファッションを着ています。カインドは黒のパーカー姿ですが、零也とほぼ同じ特徴です。
「カインド……?どうやって、魔法使ったの?饅頭って?妖怪?」
志那はどう言う事か、一体どうなってるのか、頭が混乱していました。
「後で話すよ」
「魔法使ってる時の零也って、別人みたいでカッコいいな……。改めて、好きになっちゃいそう」
戦っている時のカインドを思い出して、志那は、ドキドキしていました。
「お前は?名前、何?」
「え?私の名前、知らない?斎藤志那だけど」
志那は、カインドの言動に疑問が少し湧きました。
「志那、コレからお前ん家行って良いか?」
「ええっ?!い、いきなり?!」
「安心しろ、俺は霊みたいなモンだから、襲いはしねーぞ」

9/6/2022, 10:35:33 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第八話」

零也は、仕事で事務所に来ていた。澄、優斗、将生の3人も一緒だった。
「4人揃ったな」
「何で呼びたしたんだろうね?」
澄は、不思議そうに事務所のスタッフを見ていた。
「多分、オリ曲の事でじゃないか?」
優斗は意気込んでいた。
「…オリ曲、出来た奴、居る?」
将生は、不安そうだった。
「……」
4人は、黙り込んだ。

「フロンティアウォーカーの皆さん、全員集まりましたね」
事務所のスタッフが4人の所に来た。
「僕達を呼び出した理由って何ですか?」
澄は、スタッフに聞いた。
「そろそろ、グループ全体のオリジナル曲を考えてもらおうかなって呼び出したんだけど…」
「すみません、その件なんですが…」
「俺達、誰も個人のオリ曲を作ってないんです」
「…あ、そうなの?」
場の雰囲気は、固まってしまった。
「いくら、君達高校生だって言っても、デビューして半年近く経つのにオリ曲誰も作ってないって…」
「すみません、全員学校生活に追われているんです」
零也は、すかさず弁明した。
「あのね、ライバルの事務所の話になるけど、林檎王子やパズルだって、デビューして間もない頃にはどんな形であれ、オリ曲は作っていたよ?彼らの中には君達と同い年でオリ曲作ってた人も居るんだからね?」
「(耐えろ、説教と言う拷問はもうすぐ終わる…)」
4人は、ただ、時が過ぎるのを待っていた。

「…はぁ、長かった」
将生は、疲れた表情だった。
「俺達、歌い手向いてるのかな…?」
優斗は、少し考えていた。
「デビューして、これじゃあな…」
零也も、疲れた表情だった。
「仕方無いよ。僕達、学校生活もあるんだし…」
澄は、フォローする役目に回っていた。
「…?君達も歌い手?」
突然、女子大生が4人に話しかけた。
「誰?」
「私、ケイ。グループに所属してないけど歌い手」
ケイは、自己紹介をした。
「ケイって、今、物凄い売れてる歌い手じゃん!」
優斗は、ケイの事を知っていて、本人に会って驚いた。
「ケイに会えて、メッチャ嬉しいぜ!」
零也は、いきなり笑顔になった。
「ケイって、学校生活と仕事、どうやって両立してるのかな?」
澄は、思った事をつぶやいた。
「何とか両立してる。君達も頑張んな。すぐには売れないよ。諦めるな」
ケイはそう言うと、どこかへと行ってしまった。
「ケイ、カッコいい!」
澄達はテンションが上がっていた。
「ケイ、マジで好きになりそうなんだけど…」
零也は、ケイにときめきを感じていた。

9/4/2022, 10:32:48 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第七話」

志那は、レンタルオフィス街に来ていた。
「最近、グループの動画の更新が止まってるけど…個人の動画に集中してるのかな?」
志那は、零也の姿を見かけましたが、活動の邪魔をしてはいけないと思い、遠くの方で見守る事にした。志那は零也の方を見ていると、突然、
「君は、何してるのかな?」
と、一人の男性に声を掛けられた。
「す…す、スミマセン!別に怪しい者じゃ…」
「分かってるよ。俺は警察じゃないよ」
男性は、笑顔で志那に話しかけた。
「俺は、一ユーチューバー。元だけどね」
「元って事は、引退したんですか?」
「そんな物だよ」
志那は、これ以上聞いたらいけないと思いながらでも、男性は、話し続けた。
「俺は、歌い手だったんだ。俺はそんなに人気が出なかったけど、グループのリーダーとして、メンバー達と苦楽を共にして来た。だけど、グループに俺の居場所は無くなった」
「…え?」
「俺、自暴自棄になって、不倫した。そして、グループから去ったんだ」
二人は、少し沈黙した。
「ひょっとして、林檎王子のアメジストさんですか?」
「ココまで言っちゃ、バレちゃうな。俺一人が恵まれた人生を送っているのが、メンバー達の酌に触ったみたいだ」
「…そうだったんですか」
志那は、少し涙した。
「前にも、誰かに言った様な…俺、色んな土地を転々としてるから」
志那は、定住出来ないアメジストの事を可哀想だと思った。
「あと、ガーネット見ませんでした?」
「会った事も、見た事もありません。追われているんですか?」
「まあね。ガーネットの奴、日本全国探し回っているから、巻くの大変だよ…」
「…気を付けて下さい」
「君は、俺の様な配信者に夢中になってはいけないよ?現実の彼氏と幸せになった方が、ずっと、有意義な人生だから」
アメジストは、それだけ言うと、どこかへと行ってしまった。
「……」
志那は、アメジストが言っていた事を受け止めた。
「配信者か…あ!零也はどうした?!」
志那は、零也の方を見ると、姿が無かった。
「何か、ショック…」
志那は、帰って行った。

「俺は今、愛する親友と彼女が居るから、すごく幸せだ。もう、あんな女が支配するパワハラな職場には戻らない」
アメジストは、遠くの景色を眺めていた。
「ガーネットも、歌い手の頂点の仲間入りして、芸能人の彼女作って、きっと、幸せだろ?お互い幸せだったら、それで良いじゃないか」

9/2/2022, 10:37:58 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第六話」

章司は、志那の方を見ていた。
「斎藤さん、また友達の星川さんとジャニーズの話してる…」
章司は、内向的であまり自分から話しかける方では無かった。クラスメートから陰キャと言われる程、地味で目立つ方じゃ無かった。
「なるべく目立たないようにして、烏谷達のグループに目を付けられないようにしないと…」
章司は、気弱でケンカは弱かったので、逃げるようにして学校生活を送っていた。
「斎藤さんは、可愛いなぁ。最近、烏谷と話しているけど…まさか、恋人同士になったんじゃ…!」
章司は、焦っていました。でも、志那の
「今日も進展は無かった」
の一言で、章司は心が救われたかの様に一安心出来た。
「斎藤さん、烏谷には気をつけろ。烏谷はヤンキーの不良のワルだから」
章司は、志那の方をこっそりと見ていました。

「…?どうしたのよ?」
「何か、田宮がずっとこっちの方見てるんだけど…」
志那は章司らしき人物の視線を感じていた。
「田宮?コッチ見てないけど」
「…気のせいかな?」
「案外、学校に忍び込んだ覗き魔かもよ!」
由里は、上の方を見ました。
「怖いよ、ソレ。そうだったら、先生に報告しなきゃ…」

章司は、想っていた。志那が好きで好きでたまらないと。志那と、話す事が出来たら、どんなに幸せかと。

梨々華は、表向きでは零也の良き親友で、零也の事を想い続ける女子を偽っている。ただ、本心では林檎王子のガーネットを愛している。
「…バレちゃいないわね。ガーネットは女の子だけど」
ガーネットは元女性で、現在は男性として生きているが、ガーネットが性転換する前は、女性ファンはかなり風当たりが強かった。
「ガーネットが好きだってバレたら、攻撃の対象になりかねない…ただ、今は…」
梨々華は、女子に同性愛者じゃないかと疑われずに済む方法を考えて、あえて、ラピスのファンと零也を想う女子を演じている。いつか、自分もまともな恋が出来る女子になれると願いながら。
「ガーネット、ごめんなさい。今は、スカイが忘れられない」
梨々華は今、パズルのスカイが好きなのだ。スカイに心を射抜かれた時に、好奇の目の悪夢から逃れられると、彼女は本当に涙して感謝した。
「彼、一見ショタに見えるけど、地声で射抜かれるなんで思っても見なかったわ…」
梨々華は、それでも零也を想う女子を演じている。歌い手は、所詮、現実世界には存在しない架空のキャラクターと同じ。現実世界にやって来たとしても、落胆させられる可能性もあるからだ。

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