NoName

Open App
8/31/2022, 10:35:37 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第五話」

そして、授業が終わり、再び休み時間。志那と零也は、屋上に来ていた。
「また屋上で会うとはな」
「偶然だね」
二人は、空を見上げていた。
「何で、フロンティアウォーカーを結成する事になったん?」
「…え?!いや…な。たまたま、上げる動画内容が同じ奴らが集まって、結成するぞって流れになっただけ…なんだけど」
「へぇー、同士が見つかるなんて、奇跡じゃん!」
「って、何で斎藤が、俺が配信やってる事、知ってんだよ?」
「…たまたま、見かけたのと勘」
「レンタルオフィスに来てたの斎藤かよ…」
零也は固まりかけていた。志那は少し笑顔だった。
「言っとくけど、俺が配信やってる事は内緒だからな!」
「うん、勿論言わない」
「もうすぐ、休み時間終わるぞ」
二人は、教室に戻った。志那は、ドキドキする気持ちと多幸感でいっぱいだった。

「(やった!零也と話が出来た!)」
授業中、志那はニヤけていた。ニヤけている顔を隠すのに必死だった。
「ユーチューバーって、どれくらい儲けているんだろう?国民的人気だったら、億単位の年収があるって噂だけど、零也って、どれくらい儲けてるんだろう?」
志那は、零也の事を考えた。
「もしもだよ?もしも、零也と結婚が出来たら、玉の輿になれるって事?」

学校が終わり、家に帰った志那は、母に呼び止められた。
「アンタ、将来の進路どうするのよ?ずっと、遊んでばっかじゃダメなのよ」
「そのうち、決めるって」
志那は、少し不機嫌になった。
「アンタ、特技も趣味も何も無いじゃない。高校生になったら、みんな何かしらの目標は持ってる物なのよ?何の取り柄も無かったら、社会に出た時に苦労するわよ」
「良いじゃん。そのうち、見つかるって。万が一の時は、出版社に就職すれば良いし」
「アンタの成績じゃ、出版社は無謀なのよ。大学にするか短大にするか専門学校にするか決める時期なのに、アンタの場合、将来は何になるかすら決まっていない。最悪、進路が狭まって、工場作業員の様な底辺職になるしか無くなるわよ?」
「う…それは…」
志那は、ぐうの音も出なかった。

「お母さん、酷いって…昔は、『遊んでいないで勉強だけしてなさい』って言って、何の習い事もさせてくれなかったじゃん…」
志那は自分の部屋で落ち込んでいた。
「零也は、ユーチューバーか…由里は、看護師だし…みんな、目標持ってて羨ましいな…」
志那は、何で自分は出来ない人間なんだろうと悔いていました。

8/29/2022, 10:23:19 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第四話」

志那と由里は、ジャニーズタレントのコンサート会場に来ていた。
「席、後ろの方だけど、憧れの推しに会える〜!」
由里はテンションMAXだった。志那は少々引き気味だった。
「(私、ジャニーズ興味無いんだけど…隣からスッゴい圧が…)」
「志那は、あべの男子の中では誰が好み?私は…推しの斉木君に決まってるじゃん!クラスに居そうだけど、幻想世界の妖精感がある所にキュンキュンしちゃう♡斉木君、体細いから誰かのハグで折れないか心配…」
「由里、始まるよ…って、聞いてる?」
志那は由里を連れながら会場の中に入った。

「うちわも準備完了!後は、始まるのを待つのみ!」
「スッゴい、張り切り様…」
志那は、ミーハーモードの由里を見て、ただ呆れていた。
「ほーら、志那もうちわ持って!」
志那は、由里にネオンカラーで飾られた斉木のうちわを持たされた。
「(何か、恥ずかしい…!)」
志那と由里が話していると、突然、会場が暗くなり、大音量の音楽が流れ出した。
「始まった!」
「キャー!佐護川くーん!」
「こっち向いてー!」
会場内のあべの男子ファン達は、戦闘が始まり戦うかの如く、推しにエールを贈り続けた。
「スゴイ熱量…」
「志那ー、応援しないとファン達も怒るし、あべの男子達が可哀想だよ?」
志那は、由里と一緒にファンを装いながら斉木を応援した。

「あー♡夢の時間だったねー」
由里は、推しのコンサートにご満悦だった。
「何か知らんけど、疲れた…」
志那は、ぐったりしていた。
「志那、今日は付き合ってくれてありがと」
「何か、お礼とかある?」
コンサート会場から出て来る二人を、梨々華は遠くの方から見ていた。
「画像や動画は十分撮ったから、後は零也に見せるだけ…」

次の日、学校の休み時間の時、梨々華は零也に話しかけた。
「志那って、あべの男子の斉木君のファンみたい。ジャニーズのファンだったら、ユーチューバーには興味が無いんじゃない?」
梨々華は、零也に昨日撮った画像や動画を零也のLINEに送り付けた。
「…えっ?マジで?!」
「志那も顔が見えるアイドルの方が安心する人種だよ。忘れなって」
「ゴメン。ちょっと、一人になって来る」
零也は、教室から出ました。
「…成功かな?」
梨々華は、顔に影を落とし、ニヤリとしました。

「はぁ、昨日は重労働だったな…推しでもないアイドルの応援って大変…」
志那は、屋上でボーッと空を見上げていました。
「はぁ、大変だな…歌い手ユーチューバーって。歌だけじゃ無くて、動画編集もやんなきゃならねーし」
志那の隣で、零也もボーッと空を見上げていました。
「零也?!」
「斎藤じゃん。奇遇だな」
志那の隣に、いきなり零也が現れたので、志那は驚きました。
「昨日は大変だったみたいだな。友達の付き合い?」
「その通り!」
「…何か安心した」
零也は、志那がジャニーズのファンでは無い事を知り、ホッとしました。
「(志那は誰のファンだろ…?俺だったら良いんだけどよ…)」
「(いきなり、零也にカインドのファンですって言って大丈夫かな…?)」
二人は、黙ってしまいました。それと同時に、チャイムが鳴り出しました。
「戻るぞ!」
「急がなきゃ!」
二人は、教室に戻りました。

8/27/2022, 10:38:22 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第三話」

零也は悩んでいた。オリジナル曲を制作するのだが、やり方がさっぱり分からない。その事に付いて澄は、
「作曲者さんを探して、イメージを伝えて曲を作って、歌詞を自分で考えて、絵師さんと動画編集者さんを探して、イメージを伝えて、PV(プロモーションビデオ)を作ってもらう」
と、言っていた。将生は、
「オリ曲作るのって、メッチャ難しい…」
と、凍り付いていた。
「まず、オリ曲作んねーと、戦う武器や呪文が無い状態じゃ戦えないからな」
零也は、学校の課題もしないといけないのもあってか、頭の中が両者でせめぎ合っていた。
「…斎藤か。頼む、移り気はしないでくれ!」

志那は、動画のチェックをしていた。
「何よー!歌い手としての投稿、ココん所全く無いじゃん!…あ、個人の動画メインの可能性もあるか…」
志那は、零也が少し心配になった。歌い手辞めるのでは無いかと。
「…あ、パズルとコラボしてる。林檎王子とコラボして欲しかったな。でも…よく考えたら、林檎王子は忙しすぎて無理か」
志那は、空想の世界に入った。
「林檎王子のラピスもシトリンもローズもアンバーもアメジストも、みーんなセラフィの事が好きなのかな?あ、アメジストは脱退したか。セラフィはパズルのスカーレットと接点でもあるのかな?両方ともヒヨコ飼ってるし。動物飼ってると言えば、パズルのスノーもうさぎ飼ってたな…」

零也は悩んでいた。
「コッチから斎藤に話しかけるか?でも、そんな事して、向こうは気がなかったら、完全に自滅だろ?魔性と言う名の魔剣に突き刺さったままの地獄の奴隷は天界の天使に笑われるぜ…」
零也は、しばらく考えていると、
「零也、掃除手伝ってくれんか?」
と、父に呼ばれた。
「境内の掃除だろ?あ゛ー!せっかく歌詞考えてる最中だったのによー!」

志那は、自分の将来について考え始めた。
「私って、何か特技あったっけ?趣味は…林檎王子の追っかけ。ソレ、趣味じゃ無いじゃん。私って、何にも無い人間?!」
志那は、自分が無個性な現実を突き付けられた。「進路、どうするんだよ」と。
「ミーハーだから、出版社の記者や編集って所かな…?私の学力、そこまであるのかな?悲しくなって来た…」
志那は、自分の愚かさを悔いた。
「あ、LINEだ」
LINEに由里からのメッセージが届いた。
「明日、ジャニーズのコンサートがあるから一緒に行こ?」
志那は、しばらく考えた。
「気晴らしに行ってみるか。たまには顔の見えるアイドルも良いのかも知れないね」

一方、梨々華は
「私が、零也の秘密を知らないとでも思ってるの?志那に現実見せてやろうかな?」
と、何か企んでいた。

8/25/2022, 10:28:28 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第二話」

「ラピス君のグッズだ…うわっ!入手困難なのまである!」
梨々華は、ラピスのグッズを目の当たりにして、目を丸くして輝かせていた。
「お願い!どうか零也とお近づきに…」
「…うーん、持ってるのもあるけど、無いのが結構あるから良いよ」
「やった!」
志那は、小さくガッツポーズをした。
「じゃあ、早速、零也を呼ぶね」
梨々華は、零也を呼びに行った。
「零也ー、志那が呼んでるー」
梨々華は、志那の元に零也を連れて来た。
「…斎藤さん?何スか?用って」
零也と初めて話した志那は、緊張のあまり声が震えて来た。
「…あ、えーと、この前、帰り道でレンタルオフィスでプログラミングの課題片付けてるの見かけてつい…」
志那は、自分でも何を話しているのか訳が分からなかった。
「…それだけ?」
「何か絵を描いてるみたいだったけど、遠目から見ても凄く上手いなって思った」
「ありがとな。用がそれだけなら、もう行くよ?」
「…うん」
零也は、教室の外に出てしまい、志那は、肝心の所は聞き出せずに終わりました。
「二人きりにならないと聞き出せないかな…?」

「スゴイじゃん!あの零也と話したんだって?」
由里は、志那の話に興奮していた。志那は、押され気味だった。
「んで、何で零也と話したの?忘れ物?生徒会からの指示?ひょっとして、恋…?!」
「そんな大げさのじゃないよ…実は…」
志那は由里にレンタルオフィスの件の話をした。
「…単にプログラミングが趣味なだけじゃない?そんな芸能人、うちの学校には居ないよ」
「じゃあ、見間違いか…」

下校時間になって、志那は再びレンタルオフィス街を訪れた。
「今日は居るかな…?ひょっとしたら、勘付かれて危なくなったら、もうココには来なくなるかも知れないけど」
この前に来た場所に来ると、ノートパソコンをイジっている零也の姿があった。
「今日は、何やってるんだろ?」
志那は、再び双眼鏡アプリを使おうとした時、
「…あー!オリ曲思いつかねー!」
と、零也の叫び声が聞こえて来た。
「零也って、歌い手?」

家に帰った志那は、『カインド』の動画を調べ始めた。しばらく検索してると、フロンティア・ウォーカーと言う歌い手グループの初投稿動画を見つけた。4人グループらしく、そこに零也の姿もあった。
「本当に歌い手だったんだ…活動を始めてから、まだ4ヶ月くらいしか経ってないみたい」
志那は、動画をしばらく探ってみた。
「一度、解散しようと考えた時もあったんだ…」

8/23/2022, 11:06:44 AM

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第一話」

志那は、授業中なのに、推しの男性アイドルの缶バッジの方をずっと眺めていた。
「ラピス君、マジラブなんだけど〜」
志那は、林檎王子のラピスの大ファンで、小遣いのほとんどをラピスに使い込んでいた。
「ラピス君が、あの女と仲良くしてるの、何か許せないんだけど…」
志那は、モテている女性アイドルのセラフィが、自分の推しにチョッカイを出さないか、ヤキモキしていた。
「コラ!斎藤」
「あ…スミマセン…」
現代社会の教師に注意された志那は、シュンとなった。
「あーあ、また注意された…」
志那は、授業に集中した。
「(こんなんじゃ、ラピス君に笑われちゃうよ…)」

「志那、また、ラピス君の事考えてたのー?」
「由里、図星な事、直球で言わないでよ…」
休み時間、志那は友達の由里と話していた。
「ラピス君って、セラフィに一途なんでしょ?女の子の憧れのセラフィに、志那が勝てるとは思えないんだけどさ」
「ラピス君は、歌い手の男性アイドルの中では一番人気があるから、一般人じゃ無理なの分かってるけどね」
「良い加減、同年代に格下げしたら?志那に一流アイドルは無理だよ」
「同年代?」
志那は目が点になった。
「例えば…クラスでユーチューバー始めた男子とか!」
「え…?!居るの?そんな人」
志那は教室を見渡した。視界に地雷系の和に入っている零也が入った。
「なーんてネ!クラスにそんな有名人、居ないっしょ!」
「もー!驚かさないでよ」

放課後、帰り道で由里と別れた志那は、レンタルオフィス街を通っていた。
「ユーチューバーって、外で仕事してる時もあるんだよね…」
志那は、外からレンタルオフィスの施設を覗いていると、零也の姿があった。
「零也じゃん。何してるんだろ?」
志那は、零也に気づかれないようにコッソリと近付いて行った。
「バレないように、この距離から…」
志那は、スマホの双眼鏡アプリで、零也が何してるのか調べてみた。
「んーと、絵描いてるのかな?…よく見たら、サムネの編集作業っぽい?」
志那は、零也の様子を夢中で眺めていた。
「何か、字を打ってる…まさか、本当にユーチューバー?!だったら、活動名は…小さくて見えない!」
零也は、後ろを振り向きかけたので、志那は、一目散に逃げた。
「嘘!零也って、本当にユーチューバー?!」
志那は、家に帰ると、早速、スマホのYou Tubeを開いた。
「零也の動画あるかな?って、活動名分かんないから調べようが無い!」
志那は、You Tube内をサーフィンしていると、零也が編集していたサムネイルが登場した。
「コレだ!…って、この人、時々出てくる『カインド』じゃん!」
志那は、驚きを隠せなかった。有名人が身近に突然現れたので、震えが止まらなかった。
「カインドって、中学の時から見てるから…零也って、そんな昔からユーチューバーやってたんだ!」
志那は、部屋中にあるラピスのグッズを見て、上手く行けばラピス本人に会えるんじゃないかと一瞬目論ん。
「零也は地雷系だ…どうやって近づく?」
志那は、部屋中のラピスのグッズを片付け始めた。そして、大きなダンボールに全部詰め込んだ。そして、地雷系グループに近いクラスメートの女子にLINEした。
「梨々華はラピス君のファンだよね?グッズ全部あげるから零也に近づきたいんだけど」
志那の恋の標的は、ラピスから零也に変わった瞬間だった。

Next