「私とあなたじゃ住む世界が違う 第一話」
志那は、授業中なのに、推しの男性アイドルの缶バッジの方をずっと眺めていた。
「ラピス君、マジラブなんだけど〜」
志那は、林檎王子のラピスの大ファンで、小遣いのほとんどをラピスに使い込んでいた。
「ラピス君が、あの女と仲良くしてるの、何か許せないんだけど…」
志那は、モテている女性アイドルのセラフィが、自分の推しにチョッカイを出さないか、ヤキモキしていた。
「コラ!斎藤」
「あ…スミマセン…」
現代社会の教師に注意された志那は、シュンとなった。
「あーあ、また注意された…」
志那は、授業に集中した。
「(こんなんじゃ、ラピス君に笑われちゃうよ…)」
「志那、また、ラピス君の事考えてたのー?」
「由里、図星な事、直球で言わないでよ…」
休み時間、志那は友達の由里と話していた。
「ラピス君って、セラフィに一途なんでしょ?女の子の憧れのセラフィに、志那が勝てるとは思えないんだけどさ」
「ラピス君は、歌い手の男性アイドルの中では一番人気があるから、一般人じゃ無理なの分かってるけどね」
「良い加減、同年代に格下げしたら?志那に一流アイドルは無理だよ」
「同年代?」
志那は目が点になった。
「例えば…クラスでユーチューバー始めた男子とか!」
「え…?!居るの?そんな人」
志那は教室を見渡した。視界に地雷系の和に入っている零也が入った。
「なーんてネ!クラスにそんな有名人、居ないっしょ!」
「もー!驚かさないでよ」
放課後、帰り道で由里と別れた志那は、レンタルオフィス街を通っていた。
「ユーチューバーって、外で仕事してる時もあるんだよね…」
志那は、外からレンタルオフィスの施設を覗いていると、零也の姿があった。
「零也じゃん。何してるんだろ?」
志那は、零也に気づかれないようにコッソリと近付いて行った。
「バレないように、この距離から…」
志那は、スマホの双眼鏡アプリで、零也が何してるのか調べてみた。
「んーと、絵描いてるのかな?…よく見たら、サムネの編集作業っぽい?」
志那は、零也の様子を夢中で眺めていた。
「何か、字を打ってる…まさか、本当にユーチューバー?!だったら、活動名は…小さくて見えない!」
零也は、後ろを振り向きかけたので、志那は、一目散に逃げた。
「嘘!零也って、本当にユーチューバー?!」
志那は、家に帰ると、早速、スマホのYou Tubeを開いた。
「零也の動画あるかな?って、活動名分かんないから調べようが無い!」
志那は、You Tube内をサーフィンしていると、零也が編集していたサムネイルが登場した。
「コレだ!…って、この人、時々出てくる『カインド』じゃん!」
志那は、驚きを隠せなかった。有名人が身近に突然現れたので、震えが止まらなかった。
「カインドって、中学の時から見てるから…零也って、そんな昔からユーチューバーやってたんだ!」
志那は、部屋中にあるラピスのグッズを見て、上手く行けばラピス本人に会えるんじゃないかと一瞬目論ん。
「零也は地雷系だ…どうやって近づく?」
志那は、部屋中のラピスのグッズを片付け始めた。そして、大きなダンボールに全部詰め込んだ。そして、地雷系グループに近いクラスメートの女子にLINEした。
「梨々華はラピス君のファンだよね?グッズ全部あげるから零也に近づきたいんだけど」
志那の恋の標的は、ラピスから零也に変わった瞬間だった。
8/23/2022, 11:06:44 AM