NoName

Open App

「私とあなたじゃ住む世界が違う 第五話」

そして、授業が終わり、再び休み時間。志那と零也は、屋上に来ていた。
「また屋上で会うとはな」
「偶然だね」
二人は、空を見上げていた。
「何で、フロンティアウォーカーを結成する事になったん?」
「…え?!いや…な。たまたま、上げる動画内容が同じ奴らが集まって、結成するぞって流れになっただけ…なんだけど」
「へぇー、同士が見つかるなんて、奇跡じゃん!」
「って、何で斎藤が、俺が配信やってる事、知ってんだよ?」
「…たまたま、見かけたのと勘」
「レンタルオフィスに来てたの斎藤かよ…」
零也は固まりかけていた。志那は少し笑顔だった。
「言っとくけど、俺が配信やってる事は内緒だからな!」
「うん、勿論言わない」
「もうすぐ、休み時間終わるぞ」
二人は、教室に戻った。志那は、ドキドキする気持ちと多幸感でいっぱいだった。

「(やった!零也と話が出来た!)」
授業中、志那はニヤけていた。ニヤけている顔を隠すのに必死だった。
「ユーチューバーって、どれくらい儲けているんだろう?国民的人気だったら、億単位の年収があるって噂だけど、零也って、どれくらい儲けてるんだろう?」
志那は、零也の事を考えた。
「もしもだよ?もしも、零也と結婚が出来たら、玉の輿になれるって事?」

学校が終わり、家に帰った志那は、母に呼び止められた。
「アンタ、将来の進路どうするのよ?ずっと、遊んでばっかじゃダメなのよ」
「そのうち、決めるって」
志那は、少し不機嫌になった。
「アンタ、特技も趣味も何も無いじゃない。高校生になったら、みんな何かしらの目標は持ってる物なのよ?何の取り柄も無かったら、社会に出た時に苦労するわよ」
「良いじゃん。そのうち、見つかるって。万が一の時は、出版社に就職すれば良いし」
「アンタの成績じゃ、出版社は無謀なのよ。大学にするか短大にするか専門学校にするか決める時期なのに、アンタの場合、将来は何になるかすら決まっていない。最悪、進路が狭まって、工場作業員の様な底辺職になるしか無くなるわよ?」
「う…それは…」
志那は、ぐうの音も出なかった。

「お母さん、酷いって…昔は、『遊んでいないで勉強だけしてなさい』って言って、何の習い事もさせてくれなかったじゃん…」
志那は自分の部屋で落ち込んでいた。
「零也は、ユーチューバーか…由里は、看護師だし…みんな、目標持ってて羨ましいな…」
志那は、何で自分は出来ない人間なんだろうと悔いていました。

8/31/2022, 10:35:37 AM