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「私とあなたじゃ住む世界が違う 第四話」

志那と由里は、ジャニーズタレントのコンサート会場に来ていた。
「席、後ろの方だけど、憧れの推しに会える〜!」
由里はテンションMAXだった。志那は少々引き気味だった。
「(私、ジャニーズ興味無いんだけど…隣からスッゴい圧が…)」
「志那は、あべの男子の中では誰が好み?私は…推しの斉木君に決まってるじゃん!クラスに居そうだけど、幻想世界の妖精感がある所にキュンキュンしちゃう♡斉木君、体細いから誰かのハグで折れないか心配…」
「由里、始まるよ…って、聞いてる?」
志那は由里を連れながら会場の中に入った。

「うちわも準備完了!後は、始まるのを待つのみ!」
「スッゴい、張り切り様…」
志那は、ミーハーモードの由里を見て、ただ呆れていた。
「ほーら、志那もうちわ持って!」
志那は、由里にネオンカラーで飾られた斉木のうちわを持たされた。
「(何か、恥ずかしい…!)」
志那と由里が話していると、突然、会場が暗くなり、大音量の音楽が流れ出した。
「始まった!」
「キャー!佐護川くーん!」
「こっち向いてー!」
会場内のあべの男子ファン達は、戦闘が始まり戦うかの如く、推しにエールを贈り続けた。
「スゴイ熱量…」
「志那ー、応援しないとファン達も怒るし、あべの男子達が可哀想だよ?」
志那は、由里と一緒にファンを装いながら斉木を応援した。

「あー♡夢の時間だったねー」
由里は、推しのコンサートにご満悦だった。
「何か知らんけど、疲れた…」
志那は、ぐったりしていた。
「志那、今日は付き合ってくれてありがと」
「何か、お礼とかある?」
コンサート会場から出て来る二人を、梨々華は遠くの方から見ていた。
「画像や動画は十分撮ったから、後は零也に見せるだけ…」

次の日、学校の休み時間の時、梨々華は零也に話しかけた。
「志那って、あべの男子の斉木君のファンみたい。ジャニーズのファンだったら、ユーチューバーには興味が無いんじゃない?」
梨々華は、零也に昨日撮った画像や動画を零也のLINEに送り付けた。
「…えっ?マジで?!」
「志那も顔が見えるアイドルの方が安心する人種だよ。忘れなって」
「ゴメン。ちょっと、一人になって来る」
零也は、教室から出ました。
「…成功かな?」
梨々華は、顔に影を落とし、ニヤリとしました。

「はぁ、昨日は重労働だったな…推しでもないアイドルの応援って大変…」
志那は、屋上でボーッと空を見上げていました。
「はぁ、大変だな…歌い手ユーチューバーって。歌だけじゃ無くて、動画編集もやんなきゃならねーし」
志那の隣で、零也もボーッと空を見上げていました。
「零也?!」
「斎藤じゃん。奇遇だな」
志那の隣に、いきなり零也が現れたので、志那は驚きました。
「昨日は大変だったみたいだな。友達の付き合い?」
「その通り!」
「…何か安心した」
零也は、志那がジャニーズのファンでは無い事を知り、ホッとしました。
「(志那は誰のファンだろ…?俺だったら良いんだけどよ…)」
「(いきなり、零也にカインドのファンですって言って大丈夫かな…?)」
二人は、黙ってしまいました。それと同時に、チャイムが鳴り出しました。
「戻るぞ!」
「急がなきゃ!」
二人は、教室に戻りました。

8/29/2022, 10:23:19 AM