「私とあなたじゃ住む世界が違う 第七話」
志那は、レンタルオフィス街に来ていた。
「最近、グループの動画の更新が止まってるけど…個人の動画に集中してるのかな?」
志那は、零也の姿を見かけましたが、活動の邪魔をしてはいけないと思い、遠くの方で見守る事にした。志那は零也の方を見ていると、突然、
「君は、何してるのかな?」
と、一人の男性に声を掛けられた。
「す…す、スミマセン!別に怪しい者じゃ…」
「分かってるよ。俺は警察じゃないよ」
男性は、笑顔で志那に話しかけた。
「俺は、一ユーチューバー。元だけどね」
「元って事は、引退したんですか?」
「そんな物だよ」
志那は、これ以上聞いたらいけないと思いながらでも、男性は、話し続けた。
「俺は、歌い手だったんだ。俺はそんなに人気が出なかったけど、グループのリーダーとして、メンバー達と苦楽を共にして来た。だけど、グループに俺の居場所は無くなった」
「…え?」
「俺、自暴自棄になって、不倫した。そして、グループから去ったんだ」
二人は、少し沈黙した。
「ひょっとして、林檎王子のアメジストさんですか?」
「ココまで言っちゃ、バレちゃうな。俺一人が恵まれた人生を送っているのが、メンバー達の酌に触ったみたいだ」
「…そうだったんですか」
志那は、少し涙した。
「前にも、誰かに言った様な…俺、色んな土地を転々としてるから」
志那は、定住出来ないアメジストの事を可哀想だと思った。
「あと、ガーネット見ませんでした?」
「会った事も、見た事もありません。追われているんですか?」
「まあね。ガーネットの奴、日本全国探し回っているから、巻くの大変だよ…」
「…気を付けて下さい」
「君は、俺の様な配信者に夢中になってはいけないよ?現実の彼氏と幸せになった方が、ずっと、有意義な人生だから」
アメジストは、それだけ言うと、どこかへと行ってしまった。
「……」
志那は、アメジストが言っていた事を受け止めた。
「配信者か…あ!零也はどうした?!」
志那は、零也の方を見ると、姿が無かった。
「何か、ショック…」
志那は、帰って行った。
「俺は今、愛する親友と彼女が居るから、すごく幸せだ。もう、あんな女が支配するパワハラな職場には戻らない」
アメジストは、遠くの景色を眺めていた。
「ガーネットも、歌い手の頂点の仲間入りして、芸能人の彼女作って、きっと、幸せだろ?お互い幸せだったら、それで良いじゃないか」
9/4/2022, 10:32:48 AM