「私とあなたじゃ住む世界が違う 第十話」
志那はカインドを連れて、自分の家に帰って来ました。
「ココが志那の家か…中流階級の良い家じゃん」
「私の家、そんなに良いかな…?良くある普通の家だけど。とにかく入るよ」
志那とカインドは、家の中に入りました。
「ただいまー!」
「お帰り。随分遅かったじゃない」
志那は、クラスメートを連れてるのに母がいつもの対応だったので、少しおかしいなと思いました。
「お母さん、今居るのって私一人よね?」
「は?何言ってんのよ?どこをどう見ても志那一人じゃない」
「やっぱり…」
志那は、カインドは幽霊か何かだと確信しました。
「それより、アンタこんな時間まで何処ほっつき歩いてたのよ?9時過ぎてるじゃない」
「ご、ごめんなさーい!」
志那は、カインドに
「ホラ、私の部屋行くよ」
と小声で言って、二階の自分の部屋まで連れて行きました。
「ココが志那の部屋か…」
「本当に変な事しないでね」
「とりあえず、座布団に座って良いか?」
志那の部屋に入ったカインドは、志那の部屋にあったクッションに座りました。
「ソレ、クッションなんだけど…って、座った形跡が無い!」
「じゃあ、話始めるよ」
カインドは、説明をし始めました。
「は、空想の世界の人間。カインドって名前も俺の主がその名前で活動しているから、俺自身の名前もカインドになっている」
「え?空想の世界?」
志那は、目を丸くしていました。
「空想の世界だから…現実世界で言うメディアで見ている光景が幻覚で見える感じだな」
「へー…カインドと零也って、同一人物?」
「同じだけど、別々に分かれている。俺と零也は別人間だ。実際の零也とは関係が無い」
「じゃあ、カインドと零也は別って事?」
「まぁ、そんな所だ。同一人物だけどな」
志那は、ただ目を丸くしていました。
「カインドって、配信の世界のキャラクターだよね?配信の世界がスマホやタブレット無しで現実世界に現れてるの、何で?」
「まぁ、一言で言えば、志那が今見ている配信の世界は空想の世界だな。空想の世界は人間の思念の集まりの世界だ。要は、人間の想像の世界って所だ」
「く…空想の世界?!」
お互いの話は途中から噛み合ってはいないが、話は通じてるような会話が続きました。
「零也とカインドって、同一人物だけあって本当にキャラそっくり…」
「志那に俺の姿が見えるって事は…極地の影響を受けてる可能性が高いな」
「きょ…極地?」
「まぁ、好奇の目が集まる禍々しい世界の事だな。厄とか邪念とかが集まって出来た恐ろしい世界って所だ。俺自身は詳しくは分からんが…」
「??」
志那は、ただただ目を丸くしていました。
「多分、志那はその極地の影響を受けて、俺達が見えるようになったんだと思う」
志那は、何が何だか分からない状態でした。
「へ…?配信の世界は空想の世界で…極地の影響を受けてカインドが見えるようになって…」
「ゴメンな、いきなりこんな話長々とさせちまって」
「つまり、カインドは配信の世界みたいな空想の世界の住人で、現実世界の零也とは別で、私は、極地って言うまがい物の影響を受けて空想の世界の住人が見えるようになったって事?」
「そんな所だ。要点だけ見事にまとめたな」
志那は、カインドが言ってた事を、頭の中で整理しました。
「じゃ、俺は帰るぞ。志那は、もう寝る時間だろ?」
「あ…ちょっと!」
カインドは、部屋の窓から飛び降りるように出て、自分の世界へ帰って行きました。
「何か…今までの事が嘘みたいに見える…」
志那は、空いたままの窓を見て、
「さっきまでの事は、幻じゃない。現実なんだ」
と、確信しました。
9/8/2022, 11:05:16 AM