三羽ゆうが

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7/7/2024, 10:29:38 AM

橋を渡った。ぴかぴかの飴みたいな橋。
貴方にそっと触れた。ぼろぼろ崩れていく体。

「今年も幻を追っていたの」

そう呟いた自分の声に返答は無い。1年に1度、今日だけは会えるはずなのに。

もう何年会えていないだろう。


空が灰色に染まって、ぱらぱら液体が降り注ぐ。来年の今日は紺色の空になってくれるのだろうか。


『七夕』

7/6/2024, 1:04:20 PM

他人と見た目が違うから。
それだけの理由で今私はこうなっている。


私を罵る声。
私を貶す声。
私を虐める声。
私を、殺す声。


何もしていないのに。私は皆と見た目が違うだけなのに。何で、私、わたしは。


「大丈夫?」
「友だちになろう!」

そう言って手を差し伸べてきた1人の女の子。私は恐る恐るその手に触れる。

「えへへ、友だち!」

そう言ってぎゅっと私の手を掴んだ女の子の体が、目の前でどろどろと溶けていく。本当に泥になってしまったみたいに、どろどろ蕩けていく。

「化け物め!だからあれ程近付くなと言ったのに…」

「アイツが誘惑したんじゃないのか?」

「そーだそーだ!そうに決まっている!」

「娘を返して!」


……何で。私は何もしてないのに、何で、わたしは、




私は友だちが欲しいだけなのに。


『友だちの思い出』

7/5/2024, 11:41:52 AM

ぴかぴか、きらきら。ぱしゃぱしゃと足音をたてながら川を歩く。周りに浮かぶ幻想の世界が自分をお出迎えしてくれていた。


もう行っちゃうの?

うん、もう行かないと。

そっか、おつかれさま。

ありがとう。

声というものはもう出せないけれど、そんな会話を出来た気がする。

天を仰ぐ。……天だと思うところを見た、の方が正しいかな。そこには偽りの星空が満開に浮かんでいる。星空にすごく似ている、何か。

あ、川が途切れてる。ごめんね、僕ここまでみたい。出口はあっち。僕の方は入口だから、間違えて入らないようにね。


それじゃあ、おやすみなさい。


『星空』

7/4/2024, 10:09:07 AM

会社をクビになる人。
明日電車を乗り過ごす人。
学校で起こる不祥事。

全部分かってしまう自分はこの世界を面白いと感じられない。

「ここに存在している限り、面白いという感情は諦めた方がいいわ」

「たかが100年違うだけでまた先輩ごっこですか」

「センパイ、なんて言う概念面白いでしょう?」

「面白いっていう感情は諦めた方がいいんじゃなかったんですか」

「それとこれとは別よ」

この世界に不満がある訳でもない。かと言って満足している訳でもない。嫌な事があったとか、良い事があったとか、そういう次元では無い。

「とりあえず笑顔でいることが大事らしいわよ」

「……何のために」

「そんなの知らないわよ」

「…………はぁ」

「神様だけが知ってる、ってやつじゃないの?」

「……僕ら神様ですけど」

「そんなの知らないわよ」

自分の返答が気に食わなかったのか、つまらなそうにヒラヒラとどこかへ消えていった。

神様だけが知っている、なんてものはない。僕らも分からないのに。勝手に頼られて、勝手に願われて、勝手に僕らのせいにされる。

それが僕らの役目と言ったらそこまでだし、僕らを生み出したのは彼らの欲望や願望だ。縋るものがないと生きていけないのだろう?




……僕らだけが、神様だけが知っているよ。ほら、君の願いを言ってごらん。


『神様だけが知っている』

7/3/2024, 11:02:05 AM

歩く。ひたすらに。

真っ暗な砂利道を突き進んでいく。後ろから聞こえる仲間達の足音。

「船長、まだ行くのですか?」

「この先にお宝があるかもしれんじゃろ」

「しかし……」

不安な顔を見せる船員達。道を進めば進む程徐々に聞こえる足音が減っていき、ざくりと砂利を一際力強く踏みしめて後ろを振り向けば、自分に話しかけてきた船員1人になっていた。

「船長」

「……皆居なくなってしまったな」

「僕もここまでみたいです」

「おう、お疲れ様じゃな」

「お先です」

船員の姿がふわりと消える。この道の先には何も無い、そんな事は初めから分かっている。もう既に自分達はこの世の者ではない、そんな事は分かっている。

「……もう少し、皆とまだ知らない事を知りたかったのぉ」

真っ暗だった空間が歪み、バシャリと音を立てて体が水の中へ沈んでいく。

深く、深く、真っ暗な空間に沈んでいく。


自分達の未来の先には何があったんだろうなんて少し考えて、そっと目を閉じた。


『この道の先に』

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