空が泣いて 君が笑って 俺が泣いて 君が死んで
雨が降って
君が「ちょっと痛いかも。」って言って笑って
俺が「ちょっとな訳ねぇだろ。」って言って泣いて
君が死んで
人の死を乗り越えて進んでいくのか、それとも受け止めて進んでいくのか
そこに正しさは必要じゃない
必要なのは死を過去のものにしない事だ
決して忘れず、綺麗事にはしない事
死を綺麗事にした時
遺された人間はどんな世界でも恨まずには生きてはいけない それを理解してない奴らが
言うんだ。
『素晴らしい死だよ。』
『最期まで人を守ったなんて、本当に素敵。』
『平生、人を助ける事に固執した人だったんだろう。』
でもその中には、必ず居るんだ 助けられた側の、救われた側の命を持つ人間が。
『守ってくれてありがとう。』
煩い。
『あの人のお陰で今があります。』
煩わしい。
『でも何もかも俺のせいです。 俺があの時、逃げなかったから。 あの人を連れてこうとしてしくったからあの人は、、、。』
「分かってるよ。そんなこと。」
全部全部、分かってたから
記憶が少しでも廃れていくのが腹立たしかった
片時も離れず傍に居たいと願ったのに、もう君は居ないのだから、この一方通行のどす黒い感情に名は付けられない。 でもまあ、君は少女漫画が好きだったね。うん。
これは片想いだ。
カレンダーをめくる
丸をつける
またカレンダーをめくる
また丸をつける
そしてまた・・・。
「そんなに丸、要らないと思う。」
後ろから声が聞こえてきた
聞こえないふりをした。
そう反応を返す事しか出来なかった。
君はもう死んでるんだから、ちゃんと死んだ自覚を持って、生まれ変わって欲しいから。
「何に丸つけてんのかと思ったら、私の月命日と付き合った記念日じゃん。 もう5年目からやるのやめたと思ったのに。」
もしかしてずっとやめて欲しかったのかな ごめんね
「別に嫌な訳じゃないよ。ほんとに。嬉しかった。」
そっか、なら良かったよ
「私の好きだったグミも、ちゃんと置いてくれてるんだね。ありがとう。」
君のおかげでこのグミを好きになれたんだ
こちらこそだよ
「私君の入れる珈琲だけは飲めたんだよね。不思議。」
そうだね 君珈琲苦手だったもんね
「、、、ねえ、幸せになってね。」
急にそんな事言わないでくれよ
「ほんとにホントよ。幸せになってね。」
そんなこと、、、「言わないでくれ、よ、。」
「っ、、ふふっ笑 ダメじゃん、私未練残っちゃうよ。」
本当はずっと言いたかった 行かないでって
「行かないで。嫌だ!嫌だよ、君が居なくなったら僕はっ、僕は!!笑顔になれない!!」
「ごめんね、本当にごめんなさい。 貴方を1人残して行くことを、どうか許して。 だからせめて貴方は幸せに生きて。」
「どうして君は、、、どうして、、」
抱きしめた君の体が少しずつ、少しずつ、僕の体に沈んでいった
信じられないほどの喪失感
そんなものを感じたのはいつ頃だろうか
意識がついに無くなったあんたを見て
俺は、俺は。
「あの子、ずっと笑えてないよね。あれから。」
母さんと父さんの話し声が聞こえた
嫌でも聞こえてくる壁の薄い作りの一軒家
「やっぱりあの事があったから、今度旅行でも行く?」
「おお。それはいいかもな。しばらく羽を伸ばしてみるのもいいかもしれんしな。」
余計なお世話
ンなもんに行く時間があったら俺は花を摘んでる
「これ。あんたが好きって言ってた花だと思うんだけど。違ったらごめん。」
今日も俺は誰も御参りに来ない墓の持ち主にあいにきていた。
「、、やっぱあんた友達居なかったんじゃねぇの、?」
あんたが生きてたらきっとこーゆー時。
『余計なお世話だっつーの!ほっとけ!』
って言っただろうな。
チッ 思わず舌打ちが出た。
「いつの間にか口癖になってんじゃねーかよ。」
だせぇ
気持ち聞く前に逝きやがったあんたもだせぇけど
気持ち伝えられなかった俺はもっとだせぇ
「俺ださく生きてきた訳じゃねぇのに。」
思わずしゃがんで俯いた
『私の前だと君変にダサくなるよね。』
うるせぇ。こちとら緊張しとんだわ。
『まあいいんじゃない?ウブっぽくて可愛いよ〜♡』
ムカつく。なんでこんなやつ。
『あ、来週は来ても私居ないよ。手術始まんの。』
『は?ンなこと一言も。』
『うん。だから君に会える最終日に言った。』
『大事なことは前もって言えよ、、』
『あぁ、、、そーゆー意見もあるのか、、、生きてたら実践してやるわ!ほら帰んな帰んな〜! 小学生は家に帰る時間だぞ!笑』
くしゃって笑いやがる。
『うっせー!俺だって来年から中学生だし!』
『やーいやーい!それでも高校生の私には叶わないくせにー!はよ帰れー!』
『だからわかったっつーの!うっせぇ!じゃーな!』
バァンッ
「思えば俺あの時なんでまたねって言わなかったんだろーな。」
また会えるってかってに思ってたんだろうな。
あいつは大丈夫だっていう謎の自信。
なんの根拠もない自信。
ほんとに、惨めだ。
「あ゛ー、、、 なんか俺最近ダメだわ。あんたに会ってからどんどんダサくなって。あんた居なくなったら元に戻ると思ってたのに、ずっと弱いまんまで。」
せめて責任取ってから逝けよ。くそが。
「次な。次。約束。俺まだ若いから。小学生だから、今のうちに生まれ変わったらギリ会えんじゃね。俺頑張るからさ、次会ったら。「カッコ良くなってんじゃん!」くらい言えよな。まじで俺頑張るから。」
あんたが好きって言ってたカルピスソーダの中身はただのカルピスに変えとくっていうイタズラもしてやったし。
だから、
「またな。隣の家のねーちゃん。」
君と居ると密かに鳴っていた胸の鼓動
君と喋ると暖かくなっていた体温
君と会うとつい走り出してしまっていた足
いつの間にか生活の中で君が居ない世界が居なくて。
きっとどんな時だって傍に居たからって心から思ったんだよ。
「起きようよ。朝だよ。」
そうだね 僕も起きたいよ。
「この前久しぶりに水族館行こうって言ってたじゃん。」
覚えててくれたんだ 僕も行きたいな。
「いつもみたいにおはようって言えないの、?」
うん ごめんね言えないみたい。 もう口が動かないんだ。
「私との約束破るんだ、笑」
破りたかった訳じゃないよ それだけは本当だ。
「私は君との毎日をずっとずっと大切にしてたのに。」
僕も本当に大切にしていたよ。
「まだお別れしてないよ私。」
そうだね
「まだ、行きたい所沢山あったよ。」ポタッ
僕もだよ あ、ごめんね、また泣かせちゃったね。
お義父さんとお義母さんに約束したのにね。
『僕が必ず幸せにします。だから、』
「だから、結婚を許してくださいって、幸せにさせて下さいって言ったの、君だよねっ、!!!!」
うん 本当にごめんね。
すごく短い結婚生活だったけど、とても幸せな毎日だったよ。
また四十九日に戻ってくるから、だから待っててね。
昔の話だけど、聞いて欲しい。
高校に入って、元々友達って言える存在なんか中学の頃から居なかったけど、ようやく出来たんだ。
そいつはそこら辺に居るようなクズみたいなやつらとは違って。
いつだって誰かを受け止める体制を持ったやつだった。俺は昔、そいつに聞いた事があった。
『泣きたくなる時って、ないのか。』
そしたらあいつは不思議そうな顔をして。
『いや?俺だって人間だもん、そりゃあるよ?』
少し拍子抜けをしてしまって、
『なんだよ〜変な顔すんなよ〜笑』と言われてしまった。悪かったと思ってる。
でも俺、本当は知ってたんだ。解ってたんだよ。
お前が、誰も居ない所でしか泣かない事、泣けない事。意地とか、責任とか、そんなんじゃなくて、もう染み付いてるお前の根本的な所なんだろうな。
だから俺は、お前が泣ける世界が来るまで、このクソみたいな世界で抗おうと思う。
俺ならきっと、またお前に会える気がするから。
お前ならきっと、また笑ってくれるから。
12時の時計が時を告げる。
お前は静かに1000年の眠りについた。
「俺が不老不死だったらな。笑」
そんな本気の願いを笑いながら言うくらいには、お前がいつか目醒めるという事実が、堪らなく嬉しいかったんだろうな。
「 。」
「ん、?あれ、なんでお前、?」
「 笑」
「え〜?笑 」
「 ?」
「まぁ、、、そーだけど、 久しぶり。」
「 。」
「ん。ありがと、笑」 ポタッ
『ちゃんと泣けて。良かったな。』