あん

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信じられないほどの喪失感
そんなものを感じたのはいつ頃だろうか
意識がついに無くなったあんたを見て
俺は、俺は。

「あの子、ずっと笑えてないよね。あれから。」
母さんと父さんの話し声が聞こえた
嫌でも聞こえてくる壁の薄い作りの一軒家
「やっぱりあの事があったから、今度旅行でも行く?」
「おお。それはいいかもな。しばらく羽を伸ばしてみるのもいいかもしれんしな。」
余計なお世話
ンなもんに行く時間があったら俺は花を摘んでる

「これ。あんたが好きって言ってた花だと思うんだけど。違ったらごめん。」
今日も俺は誰も御参りに来ない墓の持ち主にあいにきていた。
「、、やっぱあんた友達居なかったんじゃねぇの、?」
あんたが生きてたらきっとこーゆー時。
『余計なお世話だっつーの!ほっとけ!』
って言っただろうな。
チッ 思わず舌打ちが出た。
「いつの間にか口癖になってんじゃねーかよ。」

だせぇ
気持ち聞く前に逝きやがったあんたもだせぇけど
気持ち伝えられなかった俺はもっとだせぇ
「俺ださく生きてきた訳じゃねぇのに。」
思わずしゃがんで俯いた
『私の前だと君変にダサくなるよね。』
うるせぇ。こちとら緊張しとんだわ。
『まあいいんじゃない?ウブっぽくて可愛いよ〜♡』
ムカつく。なんでこんなやつ。
『あ、来週は来ても私居ないよ。手術始まんの。』
『は?ンなこと一言も。』
『うん。だから君に会える最終日に言った。』
『大事なことは前もって言えよ、、』
『あぁ、、、そーゆー意見もあるのか、、、生きてたら実践してやるわ!ほら帰んな帰んな〜! 小学生は家に帰る時間だぞ!笑』
くしゃって笑いやがる。
『うっせー!俺だって来年から中学生だし!』
『やーいやーい!それでも高校生の私には叶わないくせにー!はよ帰れー!』
『だからわかったっつーの!うっせぇ!じゃーな!』
バァンッ

「思えば俺あの時なんでまたねって言わなかったんだろーな。」
また会えるってかってに思ってたんだろうな。
あいつは大丈夫だっていう謎の自信。
なんの根拠もない自信。
ほんとに、惨めだ。
「あ゛ー、、、 なんか俺最近ダメだわ。あんたに会ってからどんどんダサくなって。あんた居なくなったら元に戻ると思ってたのに、ずっと弱いまんまで。」
せめて責任取ってから逝けよ。くそが。
「次な。次。約束。俺まだ若いから。小学生だから、今のうちに生まれ変わったらギリ会えんじゃね。俺頑張るからさ、次会ったら。「カッコ良くなってんじゃん!」くらい言えよな。まじで俺頑張るから。」
あんたが好きって言ってたカルピスソーダの中身はただのカルピスに変えとくっていうイタズラもしてやったし。
だから、


「またな。隣の家のねーちゃん。」

9/10/2023, 3:28:15 PM