towa_noburu

Open App
8/24/2025, 10:25:30 AM

「見知らぬ街」
夢の中でいつも彷徨う見知らぬ街。
赤いレンガで小人でも出てきそうなとんがり屋根の家々。私はその街では、小さな赤い髪のおさげの女の子だった。まだ5歳ぐらいだろうか。
私は街中を見渡せる丘の上で、いつもハーモニカを吹く練習をしていた。拙い演奏の観客は、お空を流れる入道雲と、丘のすぐそばの木々で囀る小鳥たち。
私は世界が彩る夕焼けまで、その場所でのんびりとハーモニカを吹くそんな夢。
「前世かもよ?もしくは異世界の貴方が夢で繋がったのかも。」
昼ごはん中に友人に喋ったらそう返ってきた。
「にしてはなんというか、メルヘンで現実味がなくて、ただただスローライフなんだよね…」
私はお弁当の大好物の卵焼きをつまみながら、返事をする。
「まぁ夢だし。」
「それはそうだけど。その夢、最近よく見るんだよね…」
「そんなに頻繁に見るの?」
「うん、でも毎回同じ。ハーモニカの音色が上達したわけでもない。まるで、とある映画を何度も再生して観ているみたい。」
「それは不思議な夢だね。ねぇ、その夢を見てどんな気分になった?」
友人は前のめりになり、私に尋ねた。
彼女はもう食事を終えていた。
私はお茶を水筒から出して、一口飲みながら答えた。
「なんとなくだけど、悲しい、かな。」
「まぁ、子供1人でずっといるのも不自然な夢よね」

そこで、休み時間の終わるチャイムがなったので、話は途切れた。

私はその日、寝る前に仰向けになりながら、例の夢について考えた。
こんな夢、夢占いも参考になりそうにない、
かと言って、この悲しい気分がずっと続くのも嫌だ。
どうすれば、夢が終わる、または進展するのか考えているうちに私はまた眠りの世界へと旅立った。
やっぱり私はあの小さな女の子で、丘の上でハーモニカを弾いている。
手が勝手に動く。意識はあるのに、感覚は別みたいだ。
私は女の子の視界を追体験しながら改めて世界を見渡した。
赤い煉瓦の家々には人の気配がなかった。
それでも女の子にとって大切な居場所なのだろう。
丘の上から、ハーモニカを今日も弾いていた、
まるで、何かを慰めるように。祈るように。
「君、この村の生き残りか…?不思議だったんだ、ハーモニカの音色が時折するってうわさ本当だったんだな…」
声をかけた男は旅人のような風貌だった。
女の子は男に声をかけられた瞬間に、涙が頬をつたい演奏をやめた。

そこで、現実の私も目が覚めた。
涙が頬を伝う。その時、心を支配した感情は、よかったね、という安堵だ。
もしかしたら、もうあの子の夢を見ることはないのかもしれない、なんとなくそんな気がした。

彼女が私の前世か異世界の誰かは定かじゃないが、
どうか笑っていてほしい。そう切に思った。
カーテンを開き、窓の外を見やると、そこには大きな雲が流れていた。

8/24/2025, 9:57:27 AM

「遠雷」
雷鳴が耳を掠めた。思いの外遠くの方だ。
雷の音が聞こえると、どうしても1秒、2秒、3秒と時間を測ってしまう。
夏休み中、高校生になってもまだ僕はその癖が抜けなかった。
じりじりと肌を焼く暑さが少し静まる夕方に遠雷は鳴り響いた。
その雷の一瞬の音楽は世界を揺るがし僕の鼓膜を突き破る。
雷の音が嫌いなのに、また今日も時間を数えてしまう。そして、今日は遠いな…なんて呟くたびに、ふとよぎるのは小学生の時の友人の顔だ。
中学に入ってから離れてしまった彼もまた雷が鳴るたびに時間を数えているのだろうか。
なんて、物思いに耽りながら、僕は駅前のコンビニから、帰宅した。 

8/21/2025, 10:29:11 AM

「君と飛び立つ」
エンペラーインコのカルジョフは、人が乗れるくらいでかい。まさしくエンペラーの名前に相応しい。
知能が高く、歌もお喋りもとても上手だ。
カルジョフは雛の時に森で弱っているのを保護して以来、ずっと一緒だ。僕は家族があまり好きじゃなかった。いつもカルジョフの悪口を言う。カルジョフは僕の大切な大切な家族なのに。血は繋がってないけど、僕にとっての1番の理解者は間違いなくカルジョフだ。
ある夜、僕はついに決意した。この家を出てみよう。
ありったけの硬貨と簡素なサンドイッチ、それに缶詰数個を鞄に詰めて、僕は窓際から外の世界を一望した。いつもの見慣れた夜の街並みが眼下に広がっている。僕は夜の静けさを肺いっぱいに吸い込んだ。
勇気を出して、首を傾げるカルジョフに声をかける。
「カルジョフ、背中乗せて」
「いいよ。いいよ、シュウ」
カルジョフが僕が背中に乗りやすいよう、首を下げた。カルジョフは背中に飛び乗るのを確認すると、同時に大きな翼をはためかせて家の窓から、飛び立った。
行き先は、まだ見ぬ世界の果て。
カルジョフと2人でどこまでも行こう。
君と飛び立てばどんな未来でもきっと乗り越えられる。カルジョフは陽気に歌を歌った。


「よみちはくらいよ、どこまでも
こどくはぼくのおいかぜだ。
よるをさくおおきなつばさ
どこまでもとんでいけ

8/18/2025, 1:05:28 PM

「足音」
誰もいない
誰も知らない
けれどそこにいる
それは人だったのか
あるいはもっと別の塊だったのか
それでも確かに息をしている

ある時は蹄を踏む音がする
またある時はザァザァと砂を引きずったような音がする
さらにある時は風に踊る枯葉の舞のように小さな音がする

深夜2時、私は気になったので、思い切って音のする方の襖を開けた。
襖の先には渡り廊下とささやかな和風庭園が広がるばかり。雨戸を伝う音がぽしゃん、ぽしゃんと静まり返る庭先の中に響くのみ。私は胸を撫で下ろした。
なんだ、やっぱり気のせいか。
そう思って、また襖の戸を閉めた。
背後から、水音と混じり誰かがそっと庭先へと降り立ったそんな足音が響いた。
しかし、あなたはすでに夢の中。
誰も知らない
誰もいない
けれどそこにいる

8/15/2025, 10:27:52 AM

「!マークじゃ足りない感情」

流星がちょうど僕の庭の草むらに落ちてきた。 
興味本意で匂いを嗅ぐ。どことなく香ばしい…
そう思うないなや、僕は流星を一口で食べてしまった。勢いって怖い。だがしかし、もぐもぐバリバリと噛み砕き、流星を味わった。
なんと、美味しかったのだ。味は…例えるなら、香ばしく甘味なバニラクッキー。
僕の胃酸で溶けた流星。流星すなわち星の残骸。その事実を頭の隅に一瞬よぎったが、すぐに煙のように消えた。
僕は食べ終えると、腹を撫でた。
そして思った。また食べたい。
欲望とは恐ろしい。

以来、僕は流星を探している。
しかし不思議な事に、あの時の食べれると直感で思えたような流星にはなかなか出会えなかった。
あの時食べたあの流星は一体なんだったのだろう。
答えは謎のままだ。
後一つ流星を食べてから、僕の体にある異変が起きた。夜になると、暗闇の中で僕の体は怪しく星あかりのように光るようになってしまったのだ。
どこが特に光るかって?
もちろん、お腹だ。


Next