towa_noburu

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「足音」
誰もいない
誰も知らない
けれどそこにいる
それは人だったのか
あるいはもっと別の塊だったのか
それでも確かに息をしている

ある時は蹄を踏む音がする
またある時はザァザァと砂を引きずったような音がする
さらにある時は風に踊る枯葉の舞のように小さな音がする

深夜2時、私は気になったので、思い切って音のする方の襖を開けた。
襖の先には渡り廊下とささやかな和風庭園が広がるばかり。雨戸を伝う音がぽしゃん、ぽしゃんと静まり返る庭先の中に響くのみ。私は胸を撫で下ろした。
なんだ、やっぱり気のせいか。
そう思って、また襖の戸を閉めた。
背後から、水音と混じり誰かがそっと庭先へと降り立ったそんな足音が響いた。
しかし、あなたはすでに夢の中。
誰も知らない
誰もいない
けれどそこにいる

8/18/2025, 1:05:28 PM