towa_noburu

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9/27/2025, 11:00:28 AM

「涙の理由」
自己嫌悪からの被害妄想
止まらない想像は体と脳を蝕んでいく
それでも生きて、足掻いて、と何かが囁くから
呼吸を続ける、涙を流しながら
絶えず脈打つ心臓を抉ることができない
心音を消す一歩の踏み切りが私にはできない
ならば、脈打つ心臓を楽にしてやろう
流れる血の流動から生み出される爆発的なエネルギーを自己理解から自己肯定へと促すのだ
擦り切れた脳はもはや感情は機械的かもしれない
それでもいい。呼吸しているのならば、それも一つの正解でいい。

8/27/2025, 10:42:36 AM

「ここにある」
悲しみの雫も
痛みの矛先も
怒りの矛盾も
脈動する血流から生まれる
ここに在る
それだけが真実

8/25/2025, 10:58:34 AM

「もう一歩だけ、」
もう一歩だけ、進む勇気があれば、私は自分の人生を生きれたのだろうか。
高架下から、虚空を見上げる。
規則正しい時間通りに、電車は通っていく。
その揺れる音を聞きながら、私は今日も何もするでなく、この場所で佇む。そう、私は高架下の幽霊。
生前の記憶は朧げだが、高架下のこの場所で、自分で命をたった事だけは覚えている。
それから何年過ぎたかわからないが、私は町のノイズと化していた。成仏?いつかできるんだろうか、できる気がしないけれど。それでも、世界は朝が来て、夜が咲く、その繰り返しをただぼーっと眺めるのも飽きてきたところだった。
ある日の事だ。高架下に迷い犬がやってきた。
1歳くらいか、まだ若い子犬とも成犬とも言われぬ風貌の柴犬だった。
その犬は、確かに私を視界にとらえた。
唸るかと身構えたが、実際は尻尾をふって愛想よく舌を出してまとわりついてきた。これにはびっくりした。動物は感覚が鋭いというが、こうも簡単に幽霊である自分の存在を感知されるとは露ほどにも思っていなかった。
その犬を私は心の中で、まろと名づけた。なんとなく
、眉毛がまろ眉だったからだ。
私は涙はもう出ないし、特に感情が湧き起こることもなかったのだが、まろとの出会いは幽霊ライフにおいて、思わぬ癒しとなった。
第一可愛い。撫でることも、あやす事も、ご飯をあげる事もできないが、まろは落ち着き払った様子で、高架下の私の隣に座った。
時折、お腹を見せる事もあった。こんなに警戒心がなくて、まろは生きていけるだろうか。
不安に思う事もあったが、2日くらいだろうか、
まろは私の側でくつろいでいた。
3日目の晩にまろは突然ピクっと耳を立てて、彼方の方を見やる。そして今まで聞いたことのない甲高い声で笑った。確かに笑ったように私は感じた。
その方角をみて納得した。まろの飼い主がやってきたのだ。
「いえやす!」
「わん!」
まろ…もとい実の名前をいえやすと呼ばれた柴犬は、飼い主の元へ駆け寄り、抱きしめられた。
「よかった!無事で。探したんだよ?怪我してない?さぁ、お家帰ろう?」
「わん!」
飼い主はリードをまろの首輪に繋ぎ、帰ろうとする。
すると、まろは私の立っている方を振り返り、「わん!わん!」と別れの挨拶をしてくれた、ように思えた。その行動に私のもう動いていない心臓が確かに温かくなるのを感じた。
飼い主は不思議そうに高架下を眺める。
そして、なんと一礼した。
私はその行動に驚きを隠せなかった。
彼は私を視認してはいない。それでも、大好きな愛犬と再会できたこの場所に何かを感じ取って一礼をしたのかもしれない。
私はまろと飼い主を見送りながら思った。
私ももう一歩だけ、誰かと歩み寄れたら、高架下の幽霊にはならなかったのだろうか。
初めて、死んだことを後悔した。
その時だ。身体中が温かくなり、唐突に悟った。
これが、成仏か、と。

高架下に今日も電車の音が轟音をたてて鳴り響く。
世界は廻る。幽霊がいてもいなくても。
ただ、とある犬と飼い主の心の中にそっと確かに風が吹いたのだった。

8/24/2025, 10:25:30 AM

「見知らぬ街」
夢の中でいつも彷徨う見知らぬ街。
赤いレンガで小人でも出てきそうなとんがり屋根の家々。私はその街では、小さな赤い髪のおさげの女の子だった。まだ5歳ぐらいだろうか。
私は街中を見渡せる丘の上で、いつもハーモニカを吹く練習をしていた。拙い演奏の観客は、お空を流れる入道雲と、丘のすぐそばの木々で囀る小鳥たち。
私は世界が彩る夕焼けまで、その場所でのんびりとハーモニカを吹くそんな夢。
「前世かもよ?もしくは異世界の貴方が夢で繋がったのかも。」
昼ごはん中に友人に喋ったらそう返ってきた。
「にしてはなんというか、メルヘンで現実味がなくて、ただただスローライフなんだよね…」
私はお弁当の大好物の卵焼きをつまみながら、返事をする。
「まぁ夢だし。」
「それはそうだけど。その夢、最近よく見るんだよね…」
「そんなに頻繁に見るの?」
「うん、でも毎回同じ。ハーモニカの音色が上達したわけでもない。まるで、とある映画を何度も再生して観ているみたい。」
「それは不思議な夢だね。ねぇ、その夢を見てどんな気分になった?」
友人は前のめりになり、私に尋ねた。
彼女はもう食事を終えていた。
私はお茶を水筒から出して、一口飲みながら答えた。
「なんとなくだけど、悲しい、かな。」
「まぁ、子供1人でずっといるのも不自然な夢よね」

そこで、休み時間の終わるチャイムがなったので、話は途切れた。

私はその日、寝る前に仰向けになりながら、例の夢について考えた。
こんな夢、夢占いも参考になりそうにない、
かと言って、この悲しい気分がずっと続くのも嫌だ。
どうすれば、夢が終わる、または進展するのか考えているうちに私はまた眠りの世界へと旅立った。
やっぱり私はあの小さな女の子で、丘の上でハーモニカを弾いている。
手が勝手に動く。意識はあるのに、感覚は別みたいだ。
私は女の子の視界を追体験しながら改めて世界を見渡した。
赤い煉瓦の家々には人の気配がなかった。
それでも女の子にとって大切な居場所なのだろう。
丘の上から、ハーモニカを今日も弾いていた、
まるで、何かを慰めるように。祈るように。
「君、この村の生き残りか…?不思議だったんだ、ハーモニカの音色が時折するってうわさ本当だったんだな…」
声をかけた男は旅人のような風貌だった。
女の子は男に声をかけられた瞬間に、涙が頬をつたい演奏をやめた。

そこで、現実の私も目が覚めた。
涙が頬を伝う。その時、心を支配した感情は、よかったね、という安堵だ。
もしかしたら、もうあの子の夢を見ることはないのかもしれない、なんとなくそんな気がした。

彼女が私の前世か異世界の誰かは定かじゃないが、
どうか笑っていてほしい。そう切に思った。
カーテンを開き、窓の外を見やると、そこには大きな雲が流れていた。

8/24/2025, 9:57:27 AM

「遠雷」
雷鳴が耳を掠めた。思いの外遠くの方だ。
雷の音が聞こえると、どうしても1秒、2秒、3秒と時間を測ってしまう。
夏休み中、高校生になってもまだ僕はその癖が抜けなかった。
じりじりと肌を焼く暑さが少し静まる夕方に遠雷は鳴り響いた。
その雷の一瞬の音楽は世界を揺るがし僕の鼓膜を突き破る。
雷の音が嫌いなのに、また今日も時間を数えてしまう。そして、今日は遠いな…なんて呟くたびに、ふとよぎるのは小学生の時の友人の顔だ。
中学に入ってから離れてしまった彼もまた雷が鳴るたびに時間を数えているのだろうか。
なんて、物思いに耽りながら、僕は駅前のコンビニから、帰宅した。 

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