いしか

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8/30/2023, 10:19:35 AM

香水の香りがした。
よく、香水の香りで元カノの事を思い出す、なんていうが、俺にそれは当てはまらない。

何故か?

俺の元カノ、元恋人は、香水をつける人ではなかったから。

「…わたし、香水の匂い苦手なんだ。だからもし別れたりしたら、光輝(こうき)は町で香水の匂いを嗅いでも、私を思い出したりできないねっ!」

「何いってんだよ。別れたりなんかしねーよ」

そんな事言ってたくせに、結局はお互いの価値観が合わずに別れを選択した。よくある話だ。

けれど、俺はそれっきり、未練はないけれど何となくまた次の恋をする気にはなれず、一人での暮らしを満喫している。

「……あっ、そういえば柔軟剤切れてたんだっけ?買ってかえらねーと」

俺は帰り道にあったドラッグストアにより、柔軟剤を探した。けれど、いつも使っていた柔軟剤は品切れていて入荷未定となっている。

「まじかー、じゃあ代わりの、違う柔軟剤……、」
そういうとどの柔軟剤が良いか選び出す。
中には香りの見本品が置いてあり、香りを嗅ぐことが出来るようになっていて、俺は一つずつ自分の好みに合う香りを探していく。

「………………あっ…………」

この香り、覚えがある。

「やばっ、柔軟剤で思い出したよ……」
この柔軟剤の香りは、元カノ、香織が使っていて柔軟剤の香りだった。
香りがふんわり優しく、匂いもきつくないからと、香織が愛用していた柔軟剤だった。

「流石に、これはない。」

香りの見本品から手を離し、俺はその近くにあった柔軟剤を手に取った。

「これでいいや。なんだって、」

そういうと、俺は柔軟剤を持ってレジへと持っていくのだった。

8/29/2023, 10:40:19 AM

言葉はいらない、ただ………、だけど……

「……どうした?」
彼の体は温かい。温かくて、仕草は優しくて
体中から私のことが好きだって事は伝わってくる。だけど、彼の口から「好きだよ」「愛してる」って言われた事はない。

「……ねえ、悟、お願い……っ言ってもいい?」
「お願い?うん。なに?」

こんな事言ったら、面倒くさい女だって思われる?別れてって言われる?

「……っ!何っ!どうしたの?」
「えっ?」
悟が何を焦っているのかと思ったら、原因は私だった。私が泣いていたのだ。

「ご、ごめんっ、泣いちゃうなんて思ってなくて、ごめん。」
「…………、なあに?お願いって」
悟はさっきよりも優しく問いかけてくれた。
大丈夫。私、ちゃんと伝えなくちゃ。

「……付き合ってから、悟、私に…、好き、とか愛してる、とか言ってくれない。
私の事、本当は……つ、どう…………っ」
言い終わる前に、悟に口を塞がれた。

「、…ごめんっ。俺、ちゃんと言ってなかった?何かいつも伝えた気になってた…
………主に、体で…………っうわ、何これはずっ!」

知ってたよ。ちゃんと伝わってきてたから、でも、……

「悟の声で…聞きたい………。」
悟は私の涙を拭ってくれた。
「うん。そうだな…、ちゃんと、口で伝えなくちゃな。」

「好きだよ。…愛してるよ。」


「愛してる。真琴……」

悟の声を聞いて、嘘のない言葉を聞いて、胸がキュンと一杯になったことは内緒。

私は悟の顔を手で覆って引き寄せ、私もそっとキスをする。

「私も好き、愛してる、悟」

私のお返しの言葉で、可愛くて、かっこいい笑顔を返した悟。

言葉で心が満たされる感覚を、私は改めて味わった気がした。

”大好き。悟“

8/28/2023, 10:38:13 AM

突然の君の訪問。

「えっ?やばっ、何で?!」
私はびっくりしながらインターホンを眺めている。インターホンの画面に写っているのは、私の友達、オネエさんの梓だ。

昨日のラインで、意気揚々と「告白してくるっ!」と宣言した梓。私は「ガンバ〜」と軽く返信をして返した。そのラインのやり取りをしたのが、つい3時間くらい前。

「……いくら何でも実行早過ぎっ!」

私は応答のボタンを押した。

「あずさー、いくらなんでも早くない?」
「まやー、聞いてよー!!あいつったらひどいのよっ!良いから早く開けてっ!」

ガチャッ。
「まーやーっ!!!傷ついたーっ」
「分かったから、取り敢えず部屋に上がってくんない?私寝付いたばっかだったんだからねっ!」

部屋に上がってから聞いた話は、私的にはいつものことだった。精一杯告白したのに、断られたしまった。梓の好みは分かっていたけれど自分がとは思わなかった。
そう、言われてしまったそうだ。

「…もうっ!やってらんないわよっ!」
「本当、酷いやつだなー」
「でしょっ!!」
こうして梓の文句を聞いていれば、梓のどこにも行けなかった気持ちも、少しずつ収まっていく。けれど、梓の心の痛みまで、私は治して上げることはできない。

「………あずさー」
「…なによっ、…」
「泣きたいなら、泣いてくれない?私、今梓を抱きしめたいんだけど、泣いてくれないと、きっかけつかめないの。」

「…、…何よそれっ。そんな、そんなきっかけなんかなくても、抱きしめてくれていいわよっ、…、……」

その言葉に甘え、私は梓を抱きしめた。
背中をトントンってして、赤ん坊をなだめるように私は梓を慰めた。

「ぐす……っ、わたし、まやを友達に持てて、幸せよ」
「私だって、優しくて思いやりがあって温かい梓と、友達でしあわせだよ?
こんな素敵な梓の事わからないなんて皆見る目がないんだよ…」

「、…そうよっ、皆っ…………、みるめがっ、ないのよーーー!!!」

こんなやり取りを繰り返しながら、今日の夜は更けていく。

「今日は、一緒に寝ようか?ベッドダブルだし。うん、そうしよう」
「ぐすっ、相変わらず、イケメンよ、まや」
「当たり前でしょっ!ほら、カモーン!」
「はーい!カモンするー!!」

ベッドの中で友達のじゃれ合いをしながら、私と梓は明日を迎えるのだった。

8/27/2023, 10:38:07 AM

雨に佇む君がいた。傘もささず、ただ静かに、閑静な道に一人佇み空を見ている君がいた。

「………あの、大丈夫ですか?」
普通だったら声なんてかけない。このご時世、自分から危険に足を突っ込むなんてしたくない。でも、何故か…この人に話しかけなければ、そう、思ったのだ。

「……えっ……俺に、話しかけてますか?」
雨の中に佇んでいた彼は、ゆっくり私の方を向いてきた。なんて顔が整った人なのだろう。こんな綺麗な顔の人に私は今まで会ったことはない。

「はい、話しかけてます…、このまま雨に濡れ続けたら風邪ひいてしまいますよ」
「……別に良いんです。好きで、こうしているんですから。雨、冷たくて気持ち良いし、色んなこと、このときだけ忘れられるから…」

彼は一体この雨に何を思っていたのだろう。
何を、忘れようとしていたのだろう。
今出あったばかりの私に、たずねる資格はない。

「……そう、かもですが、私が心配してしまったので家で雨宿りしていきませんか?

「……、良いんですか?初めて会った男にそんなこと言って、嫌なことをするかもしれませんよ。親切な貴方に…」
「貴方はしません。そんな事」

私は迷わず、そう言い切った。そんな私を見て、彼は静かに目を丸くし、驚いていた。

「…行きましょう。私と、お話しして下さい。」
彼の手を静かに取り、私は家路へと行く。
彼は大人しく着いてきてくれている。

「私の名前は若原優花(わかはら ゆうか)っていいます。貴方の名前は?」
「……俺は、矢間 蓮月(やま はつき)って言います。」
「蓮月君、って言うのね。素敵な名前!」

こうして私と彼は、私の家に帰っていく。
これから、もしかしたら始まるかもしれない、二人の恋の物語を纏いながら……。

8/26/2023, 12:34:51 PM

私の日記帳を見ては駄目。
彼女はそう言って僕に日記帳を渡した。
なら、渡さなければ良いのに、と思ったけれど、そんな彼女は留学先の国で事件に巻き込まれ、とう二度と帰ってこない。

残ったのは、彼女が見ては駄目、といって渡してきた日記帳だけだ。

彼女を亡くしてから数日後。僕宛に一通の手紙が届いた。それは外国の封筒でそこに書かれている筆跡を見れば彼女からの手紙だと、一目で分かった。
その封筒をそっと開け、中から手紙を取り出し、折れているのを開いてみる。すると、ある一行の分だけ、書かれていた。


”日記帳。私が帰国したら、見ても良いよ。
大好きっ!“

「……何だそれ、……それじゃあ僕は二度と日記帳を見ることができないじゃんかっ…… 


けれど、この日記帳に何が書いてあるのか、何となくこの手紙で分かった。
このことが書いてあるから、彼女は日記帳を渡しても、見ては駄目、といったんだ。

「ばーか。僕だって思ってたんだ。帰国したら、気持ちを言おうって、伝えようって…」

涙が一粒、二粒、一粒、と絶え間なく落ちていく…。

「僕だって、大好きだよ、大好きだったよ」

僕は静かに、彼女からの手紙を元に戻し、日記帳と共に机の引き出しに入れた。
ずっと、忘れないように。思いをつなげるように。


”大好きだよ。ずっと、ずっと大好き”

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