泣かないよ、泣かない。
涙は見せない。
そう決めたでしょ?
私は、私にそう言い聞かせる。
だって、これは私の強がりでもあって、意地みたいなものでもあったから……。
何となく、薄々と気づいていた。
彼には、他に思いを寄せる人が居ること。
でも、よく考えると、私の方が後に彼の事を好きになったのだ。
最初から、私は彼の1番ではなかった。
1番だったけど、仮の1番だった。
いつでも、容易に変わる1番だったのだ。
でも、それでも良かった。
だって、彼の事が好きだったから。
彼が、私を好いてくれるのが嬉しくて、幸せだったから。
でも、それはほんの少し前までの話。
彼の本当の1番の女性(ひと)が現れたら、
私は、やっぱり引かなきゃと思った。
本当は嫌だった。
それに、悔しかった。
私のほうが彼の事を好きなのにと思った。
でも、自分の本当の気持ちを濁す彼を見ていて、私の方が我慢出来なくなっていった。
だから、サヨナラをした。
静かに、涙を流さず、平然と、サヨナラした。
それが、私なりの抵抗で、少しの復讐でもあった。
サヨウナラ。
バイバイ。
気持ちが流れていくには、まだまだ時間はかかりそうだけれど……
今も、涙があふれて出そうなのを必死で堪えているけれど、それでも、この道を選んだ私を、私は好きだし、かっこいいと思う。
バイバイ。
サヨウナラ。
大好きだったよ。
突然の君の訪問。
「……ごめん……」
としか君は言わなかった。
ただ、ドラマとかでよくある雨の中ずぶ濡れになっている姿で訪ねてくる……なんて事が、現に今自分の目の前に起きている事だけは理解出来た。
「花耶(かや)………どうした?」
「…………っ」
君………彼女は何も言わずにただ涙を流しているだけだった。
お化粧が上手で綺麗な彼女の顔は、雨と涙でグシャグシャになっている。
「………また………傷付いたのか…?」
「……、っ……。」
彼女は、いつも恋をするのが少し下手くそだ。恋に上手いも下手もないけれど、とにかく彼女が好きになる人は、一癖、二癖ある人ばかり。
俺がいくら辞めとけと言えども、まったく聞く耳を持たずに付き合い、そしていつも傷付いて別れてくるのだ。
「………やめろって………いったじゃないか……」
俺は、彼女をもっと傷付けてしまう言葉を口に出す。こうやって言われれば懲りるか?と何度も言ってきたが、全く懲りない。
……繰り返すばかりなのだ。
「………なぁ、花耶」
「………なに……?」
「……取り敢えず、中、入れよ。
このままじゃ…風邪ひく」
俺は、友達に言われる。
花耶の都合のいい男から卒業しなければ、いくらお前が恋愛したいと思っていても無理だと…。
花耶が、俺の恋愛の妨げになっている。
そう……言われる。
でも……俺本人は、妨げられたなんて思ってないし、何なら、俺に振り向いてくれないかと本気で思っている。
でも、花耶は…向き合ってはくれないから。
いつも、はぐらかすから……
だから……お互い中途半端なままなんだ。
今だって、ずぶ濡れになっている花耶の服を脱がせ俺は花耶にキスをしている。
それを花耶は拒まないし、もっとと腕を肩に回してくる。
ホント………大概だ。
俺も…花耶も……大概だ。
つまらないことでも
私にはどうしても許せない事だった。
だって、彼がつまらないと思っていた事は、私にとっては自分の中の『芯』みたいな部分でもあって、やっと積み上げてきたモノだったから。
彼の事は好きだった。
けれど、
私が大事だと思う事を、彼は大事だと思ってはくれなかった。
私の気持ちが、独りよがりにならない内に、私は彼とサヨナラをしようと思っている。
それほどまでに、私はもう彼の事を好きではなくなってしまった。
……今で言うな『蛙化現象』みたいに言うことなのかな…、?
ううん。違う。
ただ、『冷めて』『醒めた』。
それだけだと思う。
バイバイ👋
どこにも書けないことを
ここでなら吐き出せる気がする。
自分の気持ちに従って、服従した結果がこれでも、私が私で選んだ事なのだから何も文句は言えない。
でも、やっぱり苦しくて、悲しい。
何時でも会えなくて、寂しい。
本音はいつも心に留めて、その時その時を必死に彼を愛してきた。でも、もうそれが限界に近い事は薄々、私自身で気づいてた。
でも、それを言える人は居ない。
居ないから、ここに書けばいいと思ったの。
素直に、意地悪に、ずる賢く、何処までも深く暗い気持ちを此処に書けばいい。
ここに書けば、きっと心は少し軽くなる。
泣かずにすむ。
心が壊れずにすむ。
……それでも、まだ彼を過ぎたと思う私。
彼を愛していると思う私。
惨めで、汚くても、それでも良い。
だって、
たまたま好きなった人が、もう既婚者だった。
それだけのことなんだから…。
だから、耐えるの。
自分で決めて、選んだことなんだから…。
あなたに届けたいものがある。
言葉は時に無力だから。
何の力も持たないから。
だから、私は…
「清春ー、これ預かった〜」
「……これは?」
「お守り。峰倉さんから…」
「えっ……!紗雪からっ」
私と彼は、この2日前に些細なことで喧嘩をした。それから一切連絡をしなかったものの、どうしても今日の試合だけは最初から最後まで近くで見守っていたかったから、私は代わりにお守りを友人である森坂君に頼んだ。
彼、清春の試合とは、モーターレースの一つフォーミュラだ。
そこでの年間チャンピオン争いが拮抗していて、清春は健闘していた。
本当は近くにいたいけれど、喧嘩をしてしまった。
まだゴメンネが言えない私は、なんて情けないのだろう。
それでも清春に一言、『近くにいる』という事を伝えたかったから私はお守りを託した。
意気地無しで、意地っ張りでごめんね。
このレースが無事に終わったら必ずごめんねって謝るから、だからどうか……、
何事もありませんように。
清春の目標に、手が届きますように……。