あなたに届けたいものがある。
言葉は時に無力だから。
何の力も持たないから。
だから、私は…
「清春ー、これ預かった〜」
「……これは?」
「お守り。峰倉さんから…」
「えっ……!紗雪からっ」
私と彼は、この2日前に些細なことで喧嘩をした。それから一切連絡をしなかったものの、どうしても今日の試合だけは最初から最後まで近くで見守っていたかったから、私は代わりにお守りを友人である森坂君に頼んだ。
彼、清春の試合とは、モーターレースの一つフォーミュラだ。
そこでの年間チャンピオン争いが拮抗していて、清春は健闘していた。
本当は近くにいたいけれど、喧嘩をしてしまった。
まだゴメンネが言えない私は、なんて情けないのだろう。
それでも清春に一言、『近くにいる』という事を伝えたかったから私はお守りを託した。
意気地無しで、意地っ張りでごめんね。
このレースが無事に終わったら必ずごめんねって謝るから、だからどうか……、
何事もありませんように。
清春の目標に、手が届きますように……。
1/31/2024, 4:48:41 AM