突然の君の訪問。
「えっ?やばっ、何で?!」
私はびっくりしながらインターホンを眺めている。インターホンの画面に写っているのは、私の友達、オネエさんの梓だ。
昨日のラインで、意気揚々と「告白してくるっ!」と宣言した梓。私は「ガンバ〜」と軽く返信をして返した。そのラインのやり取りをしたのが、つい3時間くらい前。
「……いくら何でも実行早過ぎっ!」
私は応答のボタンを押した。
「あずさー、いくらなんでも早くない?」
「まやー、聞いてよー!!あいつったらひどいのよっ!良いから早く開けてっ!」
ガチャッ。
「まーやーっ!!!傷ついたーっ」
「分かったから、取り敢えず部屋に上がってくんない?私寝付いたばっかだったんだからねっ!」
部屋に上がってから聞いた話は、私的にはいつものことだった。精一杯告白したのに、断られたしまった。梓の好みは分かっていたけれど自分がとは思わなかった。
そう、言われてしまったそうだ。
「…もうっ!やってらんないわよっ!」
「本当、酷いやつだなー」
「でしょっ!!」
こうして梓の文句を聞いていれば、梓のどこにも行けなかった気持ちも、少しずつ収まっていく。けれど、梓の心の痛みまで、私は治して上げることはできない。
「………あずさー」
「…なによっ、…」
「泣きたいなら、泣いてくれない?私、今梓を抱きしめたいんだけど、泣いてくれないと、きっかけつかめないの。」
「…、…何よそれっ。そんな、そんなきっかけなんかなくても、抱きしめてくれていいわよっ、…、……」
その言葉に甘え、私は梓を抱きしめた。
背中をトントンってして、赤ん坊をなだめるように私は梓を慰めた。
「ぐす……っ、わたし、まやを友達に持てて、幸せよ」
「私だって、優しくて思いやりがあって温かい梓と、友達でしあわせだよ?
こんな素敵な梓の事わからないなんて皆見る目がないんだよ…」
「、…そうよっ、皆っ…………、みるめがっ、ないのよーーー!!!」
こんなやり取りを繰り返しながら、今日の夜は更けていく。
「今日は、一緒に寝ようか?ベッドダブルだし。うん、そうしよう」
「ぐすっ、相変わらず、イケメンよ、まや」
「当たり前でしょっ!ほら、カモーン!」
「はーい!カモンするー!!」
ベッドの中で友達のじゃれ合いをしながら、私と梓は明日を迎えるのだった。
8/28/2023, 10:38:13 AM