いしか

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雨に佇む君がいた。傘もささず、ただ静かに、閑静な道に一人佇み空を見ている君がいた。

「………あの、大丈夫ですか?」
普通だったら声なんてかけない。このご時世、自分から危険に足を突っ込むなんてしたくない。でも、何故か…この人に話しかけなければ、そう、思ったのだ。

「……えっ……俺に、話しかけてますか?」
雨の中に佇んでいた彼は、ゆっくり私の方を向いてきた。なんて顔が整った人なのだろう。こんな綺麗な顔の人に私は今まで会ったことはない。

「はい、話しかけてます…、このまま雨に濡れ続けたら風邪ひいてしまいますよ」
「……別に良いんです。好きで、こうしているんですから。雨、冷たくて気持ち良いし、色んなこと、このときだけ忘れられるから…」

彼は一体この雨に何を思っていたのだろう。
何を、忘れようとしていたのだろう。
今出あったばかりの私に、たずねる資格はない。

「……そう、かもですが、私が心配してしまったので家で雨宿りしていきませんか?

「……、良いんですか?初めて会った男にそんなこと言って、嫌なことをするかもしれませんよ。親切な貴方に…」
「貴方はしません。そんな事」

私は迷わず、そう言い切った。そんな私を見て、彼は静かに目を丸くし、驚いていた。

「…行きましょう。私と、お話しして下さい。」
彼の手を静かに取り、私は家路へと行く。
彼は大人しく着いてきてくれている。

「私の名前は若原優花(わかはら ゆうか)っていいます。貴方の名前は?」
「……俺は、矢間 蓮月(やま はつき)って言います。」
「蓮月君、って言うのね。素敵な名前!」

こうして私と彼は、私の家に帰っていく。
これから、もしかしたら始まるかもしれない、二人の恋の物語を纏いながら……。

8/27/2023, 10:38:07 AM