香水の香りがした。
よく、香水の香りで元カノの事を思い出す、なんていうが、俺にそれは当てはまらない。
何故か?
俺の元カノ、元恋人は、香水をつける人ではなかったから。
「…わたし、香水の匂い苦手なんだ。だからもし別れたりしたら、光輝(こうき)は町で香水の匂いを嗅いでも、私を思い出したりできないねっ!」
「何いってんだよ。別れたりなんかしねーよ」
そんな事言ってたくせに、結局はお互いの価値観が合わずに別れを選択した。よくある話だ。
けれど、俺はそれっきり、未練はないけれど何となくまた次の恋をする気にはなれず、一人での暮らしを満喫している。
「……あっ、そういえば柔軟剤切れてたんだっけ?買ってかえらねーと」
俺は帰り道にあったドラッグストアにより、柔軟剤を探した。けれど、いつも使っていた柔軟剤は品切れていて入荷未定となっている。
「まじかー、じゃあ代わりの、違う柔軟剤……、」
そういうとどの柔軟剤が良いか選び出す。
中には香りの見本品が置いてあり、香りを嗅ぐことが出来るようになっていて、俺は一つずつ自分の好みに合う香りを探していく。
「………………あっ…………」
この香り、覚えがある。
「やばっ、柔軟剤で思い出したよ……」
この柔軟剤の香りは、元カノ、香織が使っていて柔軟剤の香りだった。
香りがふんわり優しく、匂いもきつくないからと、香織が愛用していた柔軟剤だった。
「流石に、これはない。」
香りの見本品から手を離し、俺はその近くにあった柔軟剤を手に取った。
「これでいいや。なんだって、」
そういうと、俺は柔軟剤を持ってレジへと持っていくのだった。
8/30/2023, 10:19:35 AM