私の日記帳を見ては駄目。
彼女はそう言って僕に日記帳を渡した。
なら、渡さなければ良いのに、と思ったけれど、そんな彼女は留学先の国で事件に巻き込まれ、とう二度と帰ってこない。
残ったのは、彼女が見ては駄目、といって渡してきた日記帳だけだ。
彼女を亡くしてから数日後。僕宛に一通の手紙が届いた。それは外国の封筒でそこに書かれている筆跡を見れば彼女からの手紙だと、一目で分かった。
その封筒をそっと開け、中から手紙を取り出し、折れているのを開いてみる。すると、ある一行の分だけ、書かれていた。
”日記帳。私が帰国したら、見ても良いよ。
大好きっ!“
「……何だそれ、……それじゃあ僕は二度と日記帳を見ることができないじゃんかっ……
」
けれど、この日記帳に何が書いてあるのか、何となくこの手紙で分かった。
このことが書いてあるから、彼女は日記帳を渡しても、見ては駄目、といったんだ。
「ばーか。僕だって思ってたんだ。帰国したら、気持ちを言おうって、伝えようって…」
涙が一粒、二粒、一粒、と絶え間なく落ちていく…。
「僕だって、大好きだよ、大好きだったよ」
僕は静かに、彼女からの手紙を元に戻し、日記帳と共に机の引き出しに入れた。
ずっと、忘れないように。思いをつなげるように。
”大好きだよ。ずっと、ずっと大好き”
8/26/2023, 12:34:51 PM