るに

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3/4/2025, 12:37:44 PM

嘘、嘘、嘘。
私は昔から嘘が大好きだった。
幸せな嘘だけじゃなくて
小さな嘘から大きな嘘まで。
ずっとつき続けてきたものだから、
信頼を失うだとか、
友達がいなくなるだとか言われ続けたけど、
本当の自分なんか
自分だけが知ってればそれでいいという
塞ぎ込んだ性格だったから
全く聞かなかった。
偽りのない約束をしたのは
白髪の少女に出会ったその日のこと。
バス停でバスを待っていた時、
白雲峠から来たんだ。なんて
自身の話を突然し始めた白髪の美しい少女。
おかしい人か、宗教勧誘か何かの人だろうと思い
無視することにした。
けど、
キミ、虚言癖持ち?
なんて言われたら
興味には少し足りない感情を抱くのは
不思議では無い気がして。
思わず耳を傾けてしまう。
ボクさ、キミの嘘どうかと思うんだよね。
そのうち一人で死にそーじゃん?
だからボクともう嘘つかないって
約束して欲しいと思うんだけど。
私から出てくる言葉に偽り以外の文字は無いと
十分承知だったのだろう。
ちなみに、破ったらキミのこと丸呑みしちゃうからね。
ボク、オオカミなんだ。
嘘だとすぐに思ったけど
どこか嘘では無い気がして。
それに、
本当の約束というものをしてみたかった私は
少女と約束をした。
じゃ、破ったらすぐ来るからね。
と言った少女は
本当にオオカミになり
四足歩行でどこかへ行ってしまった。
"Good Midnight!"
これが人生で初めてにして最大の約束。
どんな嘘もつけないというのは
骨が折れるほど辛かった。
でもまだ、
まだ丸呑みされるくらいの人になってないから。
少女が丸呑みできなくなるぐらい
いなくなったらすぐわかるような大物になろうと
私には似合わない目標を持って
嘘をつくために頑張ってきたから。

3/3/2025, 3:38:12 PM

ひらりと舞い散る桜が恋しくなってきた時、
多分私は怒っているようにも
困っているようにも
悲しいようにも見える
複雑な顔をしながら歩いていた。
寝不足…。
今週は早起きをしなきゃならない理由があって
そのせいであまり寝られない。
寝る時間を早めることも
昼寝をすることもできずに
ただただ寝不足のままで過ごすしか無かった。
下を向いて薄らと愚痴を零しながら
ずーっと歩いていくと
お姉さん、ちょいとそこのお姉さん。
花びらついてはりますよ。
と、
なんだか心地よい声が聞こえた。
顔を上げるとそこには
狐目の可愛い女の子が私を見ていた。
桜はまだ寒くて咲いてない。
なのになんで私に花びらがついてると…?
不思議に思ったし、
もっと声を聞きたいとも思ったけど
ここは一旦無視することに。
すると、
頭の上から被ったかのように
急に花びらが落ちてきた。
あらあら、花びらに埋もれてしもうて。
お姉さんお疲れとちゃいます?
なんでそれを、と言いかけたところで
お疲れなんやったら、ええ所紹介しますで。
私の友人がやっとる所やねんけどねぇ。
と言われ手を引っ張られた。
ついた店に入ると
そこは雑貨屋さんのようなところで
個性的な内装だった。
隅っこには小さなカフェもあって
気になりジロジロ見ていると、
フクロウに似た店員さんが
ちらりとこちらを見てから
虹色のケーキ、美味しいですよ、食べやすいし、
ほかの店より安いです。と
ケーキをおすすめしてくれた。
2つ買って、
紹介してくれたお姉さんと
フクロウに似た店員さんにお礼を言い、
店員さんは
"Good Midnight!"
と言っていた。
私は会釈をして店を出た。
いつもとは違う道から
いつもとは違う足取りで帰った。
寝不足も飛んでいくぐらい。
あの店に行ってから
なるべく上を向いて歩こうと思った。
下を向いてばかりじゃ
花びらが舞ってても見えないから。

3/2/2025, 1:03:12 PM

暗闇から声がした。
ねえ。
今そこから声がした?
ちょっと。
誰かしら?
なんて
後ろに向かって言ってみたけど
誰もいなかったわ。
もしかしたら
目に見えないのかもしれない。
いつもそこにいるような気はしたのよ。
だから声をかけてみたの。
ねえ。
そしたら子どものような声がした。
はぁい。
きっと恥ずかしがり屋さんなのね。
私も人見知りでそうだから、
気にしなくていいわよ。
って伝えてみたの。
そしたら美しくて可愛らしい少女が見えたの。
腕にはトランシーバー?といったかしら。
それがついていて
もう片方のトランシーバーを渡してきたの。
受け取ろうとしたら
消えてしまったんだけどね。
体調が悪いのかと思って
ご老中に聞いてみたの。
でも首をかしげて
んん?何それ?
と言われて終わりだったわ。
あの言い方はわかってる人の言い方だったけれど。
"Good Midnight!"
少女とは友達になれたらいいなぁと
思うくらいだわ。
これ以上求めてしまったら
戻れなくなりそうだからね。

3/1/2025, 1:47:55 PM

春らしい気候。
芽吹きのときが私は嫌いだ。
みんなに突き放されて
一人ぼっちで寂しいと思っていた。
でもそれは
自分がみんなを突き放しているだけで
本当は私と居てくれた。
後悔ばかりのこの人生。
最後に何が楽しかったか言えと言われると、
もう一度やり直したくなるかもしれない。
だって一つか二つほどしかないから。
印象に残ってるのは
星の王子さまを声に出して読んだこと。
寂しくて押し潰されそうだった夜、
ふと本棚に目をやると
星の王子さまの絵本が見えて
すぐ手に取って読んでいったんだ。
"大切なものは目に見えない"
なんて
心に染みることが書いてあると
変だなぁ文字が見えなくなってくる。
ポタポタ何か零れ落ちるんだ。
絵本も所詮紙だから、
急いで拭くんだけど。
特にこの芽吹きのときは
死んでやろうかってくらい
夜が嫌いになる。
だから読む。
声が出るってこと、
文字が読めるってこと。
それだけでもう幸せすぎるんだってことを
星の王子さまを
自分に聞かせ続ける。
"Good Midnight!"
星の王子さまも
バオバブも
キツネも
バラも
私も
空を見上げては
星の笑顔を忘れない。

2/28/2025, 4:26:02 PM

手袋を片方落とした日。
大切にしてたからショックで
友達に無くしたことを言うと
笑って流された。
その日は雨に打たれてる気分だった。
雨は好きだけど
たまに冷たくて染み込んできて
心をギュッと押さえてくる。
でも別の日に
家族に怒られたことを言うと
心配する声が帰ってきた。
ヒーターの前で手を出してる気分で
あの日の温もりは
何日か忘れないだろうと思った。
人との繋がりは
いつか途切れる時が来るというもので。
ある日一気に友達を失った。
数人はまだ仲良くしててくれたけど、
私が手を伸ばしたら
その手を取ってくれる人たちだから
私は手を引っこめて
関わらないようにするしかなかった。
巻き込みたくないから。
なぜ友達を失ったかというと
それは少女からもらったトランシーバーが原因。
少女と毎日トランシーバーで話していたら
自然とみんな離れていった。
ただそれだけ。
本当にトランシーバーが原因なのかは
まだ怪しいくらい。
でも友達は守りたいものであり、
私そのものでもある。
"Good Midnight!"
今日もトランシーバーにそう話しかける。
私がいつ行方不明になってもいいように
ボイスメッセージを録音して。

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