エリアBー15、Cー42、
早く行ってきて!
全く…。
人使いが荒いもんだ。
バディを組んでだいぶ経つが、
絆もクソもない。
上からの命令で
バディを組んでから
私の人生にこのバカタレが加わった。
戦闘力は私より遥かに劣り、
防御力はもちろんのこと
忍び足や隠密スキル、
罠も避けられないときた。
防御も身を隠すこともできない点は
小細工などで賄っている。
でも観察眼だけは1級もので
どのエリアが1番攻めやすいか、
敵にとって不利か、
こちらにとって有利かが
全て見えている。
私はその目に
いいように使われているということだ。
私ばかりが戦いまくって
必要分以上の仕事をしている気がするけど?
でもあのエリア行かなきゃやばかったよ。
忍びが5体もいたでしょ?
アイツら、後ろ取って
奇襲仕掛けるつもりだったよ。
こんな会話を
1戦が終わってもしていた。
いつものことだ。
チーム対抗の陣取りゲーム。
陣取り終わりはなく、
取っては取られての繰り返し。
チームは1度入ると1年間は抜けられず、
最大300人と大人数なので
主将が2人1組、3人1組など
小分けにしていく。
NPCももちろんいるけど
敵も同じ人間。
人間はNPCに勝るので
人間には人間で対抗するしかない。
正直、あのバカタレの観察眼は
重宝すべきものだと思うけど
小細工ぐらいしか
攻撃・防御がないのは
バカタレすぎる。
バディを変えてもらうか、
3人1組にしてもらうか、
主将に何度か頼んでいるが
のんではくれない。
本当にあいつとずっとやっていくのか。
頭を抱える毎日だ。
"Good Midnight!"
それでも
あのバカタレと勝った時は
嬉しいし楽しい。
なんだかんだ
あいつがバディだから
このゲームを楽しめてるのかな。
そんな私らしくないことを
言ってみたり。
桜餅の
葉の塩気ともちの甘みが
絶妙でヤミツキ。
口の中が幸せの味でいっぱい。
そういえば今年はいつ
桜が咲くのだろう。
桜の木は、
まだ蕾すら付けていない
ただの木。
なのにどうしてだろう。
見るだけで桜の木だとわかる。
他にも沢山
木はあるというのに。
食べる手を止めて
沢山考え事をしてみる。
食べたら食べた分だけ
何かをすることを心がけているので、
今日は少し多めに
何かしなけりゃいけない。
冷凍パスタ、まだあったっけ。
あの本の続きってどうなったっけ。
あー!トイレットペーパー買うの忘れてた。
もう卒業の季節か〜。
なんか私置いてけぼりな感じするな。
切ない気持ちと共に
太陽は雲から顔を出す。
いや違う。
みんなが前に進んで行って
私が置いていかれてるんじゃない。
私が前から背を向けて
後ろに歩いてるんだ。
あーあ。
結局全部私のせいか。
"Good Midnight!"
桜が咲いたら
たまにはぼーっと
見つめてやろうと。
にゃぁ〜。
甘え上手な君は
今日は小さい窓からお出ましだ。
ひょいっと私の部屋に入ってくると
私も君も
各々くつろぐ。
この時間が
私にとっては心地よくて
時間が止まればいいのにって
何度も思った。
お腹がぐぅーっと鳴った頃
台所で適当に食べれるものを出していた。
大好きな君に
今日は猫缶を開けてあげよう。
嬉しそうにガツガツと食べる君は
やっぱり可愛い。
酒ばっかり飲んでる私とは
大違いだわ。
二日酔いなんか怖くないくらい、
沢山飲んで
私は溺れた。
君があんまり幸せそうに食べるものだから
私も君の幸せを
感じてみたくなっちゃった。
"Good Midnight!"
ぐるぐる視界が回る。
世界も回ってる。
朝になったら
君はもう窓から出て行ってる。
あぁ、
私が一人でいても
全部回っていくんだな。
ぼーっとしたこの思考を
やめたいとは思わなかった。
ザーッと
一日中雨が降る。
ちゃぽちゃぽと
水たまりに水が落ちる音がする。
窓の雨粒は外の街の光で
キラキラと光っていて、
なのに真っ暗な空に
浮かんでいるように見えて、
まるで星屑のようだった。
雨で雲ばかりなのに
星が見れちゃうなんて。
うっとりと眺めている間に
雨が止み、
月が薄らと見え始めた。
灯りをつけましょぼんぼりに。
お花をあげましょ桃の花。
五人囃子の笛太鼓。
今日は楽しい
ひなまつり。
子どもの頃、
お雛様の髪の毛が
ツヤツヤで綺麗で長いのに
後ろで見えなくなるのが嫌で、
隙あらばお雛様の髪を
前に垂らしていたのを思い出す。
きっとあの時のお雛様は
私と過ごすひなまつりが
怖くて仕方なかっただろう。
せっかく綺麗に整え
自分の満足いく髪を
子どもに勝手に触られるんだもの。
私の濡れた髪も
お雛様みたいにツヤツヤだったら
いいのになぁ。
風呂から上がり、
風邪をひいてしまうというのに
髪の毛を乾かすのがめんどくさくて
乾かせないでいる。
人は自分の持ってないものを
持ってる人に惹かれるんだな。
"Good Midnight!"
お内裏様とお雛様は
今日もすまし顔でこちらを見てくるが
少し寂しそうにも
愛おしそうにも
楽しそうにも見える。
今日は楽しい
ひなまつり。
崖から落ちた。
いや落とされた。
誰に落とされたのか分からないが
背中には押された感覚があった。
運良く崖の下は滝で、
中間地点には
広いが奥行きが無い洞窟があった。
今日はあいにくの雨。
3月と言っても始まりたてで
まだまだ寒い時期だ。
体温は次第に奪われてゆく。
ただ、
私には火を起こす技術も
サバイバル能力も無い。
滝の音で
私の声なんか
外へは届かない。
そんな中の
たった1つの希望。
それはほぼ0に近い確率で起こりうる、
誰かが私のように
崖から落ちてきて
この洞窟にたどり着くこと。
その際
外と連絡が取れる物を
水没させずに持ち込む必要がある。
私の荷物は全て上だし、
下に降りるにも
上に登るにも
高さが中途半端すぎるから。
本当に無いに等しい希望だけれど
賭けるしかない。
"Good Midnight!"
と、そこに
突き落とした犯人であろう人が
足を滑らせ転落し洞窟へ。
そしてスマホが無事だった、と…。
目を疑うほどの
腑抜けた展開だったが、
0でなければ
どんな展開も
予想がつかないものだった。