お題「たとえ間違いだったとしても」
たとえ間違いだったとしても…
あなたが言って、飛び出した
間違いであってもいいなんて
自分で言うには格好いいけど
言われた方は、困ってしまう
ドキドキはらはらヒヤヒヤリ
こっちの事情は、おかまいなし
ブレない眼差し、見定めては
駆け出すあなたは、特急電車
対するこちらは、各駅停車
清く正しく美しく
いい人たれと、躾けられ
品行方正むねとして
石橋叩いて、生きてきた
けれども胸が、チクリと痛む
間違いだなんて、言うくせに
あなたの瞳は、いつも綺麗だ
どんなに傷つき、疲れても
あなたの涙に、後悔はない
惑わされるのは、自分ばかり
迷って困って、躓いて
正しさ間違い選別しても、あなたの瞳に届かない
臆病な風に凍えては
二の足地団駄踏んでいる
正しいって、なんだろう?
間違ってるって、なんだろう?
でも、本当に、少し悔しいのは
あなたの事が、ほんの僅かだけ、うらやましいと思った事
戸惑い、あきれ、距離をおいても
あなたの視線に、背を向ける事が出来なかった
だから、真似してみようと思った。辿ってみようと思った。
例え嘘でも、不完全でも
あなたのその眼差しを、見ていたいと思ったから
何でついてきたの?
拍子抜けした顔で、あなたは聞く
間違いだったとしても、構わないと思ったから
あなたは困った顔をした
お題「雫」
ぴちょんぴちょんと、雫が連らら
2つのコップに滴りおちて
あなたのコップは大きなコップ
なみなみ水面を揺らしては、みんなの夢を満たしてる
私のコップは小さなコップ
無理して重荷を積もうとしては、躓き傾き、こぼれそう。
あなたは浜辺の主役の演者
日差しを返して踊る様に、視線としぶきを振りまいて
寄る人知る人ざわめかせては、素知らぬ顔で、微笑んでいる
私はそれに背を向けて、顔を隠して、脇役しぐさ
隅の小さな水たまりで、目立たぬ様に縮こまる
ピチピチチャプチャプランランラン
関係ないよ 知らないよ
心に仮面を被せては、上辺で唱え、嘘をつく
きらめくあなたを横目で見ては、今日も一人で泥遊び
でもあの日、あなたは立っていた。
重たい雨のとばりの中で、深く深くに沈んだあなた
傘では隠しきれない背中を、冷たく黒く濡らしている
私は駆け寄り、手を伸ばした
ごめんね
あなたが振り向き言った言葉に、私は戸惑い、立ち止まる
瞳と頬がちぐはくな、どこかで見たような笑みだった
ごめん
私も慌てて、口走る
あなたに伸ばした手の甲に、一つ二つと、跡がつく。傘から垂れた雨の雫が、涙の様に、沁みた気がした
あなたは袖でそっと拭うと、何でもないように握り返す
帰ろうか
私は頷きあなたに並ぶと、歩幅を合わせて歩き出した
お題「何もいらない」
何もいらないって、強がって
何もいらないって、気取っていたら
何も見えない夜闇の中を
何も言わずに歩いてる
何を望んでいるかもわからず
何にも向き合う事もしなくて
何もない筈の心の奥が
何かを叫んでいるなんて
何にも介せず、囚われず
何にもならずに自由でいたら
楽になれると何かで聞いて
そんな何かも知らない自分を
何かの拍子で拾ったあなた
何のつもりと思ったけれど
何かの理由はないようで
何をするでもない時間を
何も気にせず一緒にいたら
何とも言えない気持ちになって
何か腑に落ちた気分になった
何のしがらみも意地も捨てて
本当に、何もいらないって思えたら
素直にちゃんと
ありがとう
って、言えるのかな
お題「もしも未来が見れるなら」
もしも未来が見れるなら
どんな幸せ選ぼうか
社長に政治家映画スター
どんな未来も思うがまま
シルクのマントに白馬に乗って、綺麗なあなたを迎えたい
もしも未来が見れるなら
でもふとよぎる、誰かの声
明るい上辺の普通の裏で、澱んだ嘆きが漏れている
もしも未来が見れるとしても
誰かの悲鳴は止められない
あっちを立てれば、こっちが立たず
卑怯な奇跡に縋る怨嗟が、選んだ未来を責め立てる
もしも未来を見れたなら
それでも今を変えてほしい
陽射しの様なあなたの笑顔も、夜闇に滴る冷たい涙も、全て、なかった事にできるから
もしも未来を見れたなら
この失敗も、後悔も、あなたとの思い出ごと、消し去ってしまう事ができる様に
もしも未来を見れるなら
もしも未来を見れたなら
嘘つきな笑顔で、あなたは言う
未来なんか見なくていいよ
あなたの手が、涙を、そっとふいた。
お題「無色の世界」
色がないって、悪いことだろうか
色を見せなきゃ、いけないだろうか
赤旗あげられ笑顔で踊り、青旗振られて俯き黙る。
誰かの顔色こっそり見ては、赤字か黒字か、気にしてる。
でも、あの日、何故か気になった。
あのこが漏らした、鋭い声。
心の中に刺さったトゲは、淀んだグレーを滲ませている。
どうしていいかもわからないまま、他人を眺めて、色を探す。
ワインレッドなイケてるあなた
シアンブルーのクールなキミ
そちらは不思議なライムグリーン
見栄っ張りなあいつはネオンパープル
どれも自分には、不相応に見えた。
それでも自分なりに、色々な色を着てみたけれど、やっぱり、長く着るには重苦しい。
たくさんの服を抱え込んでは、ただ色のない色で着飾っている。
けれど見かけた。
塗りつぶす様な土砂降りの中で、黒い泥水に沈んだあのこ。
集めた色を漁ってみても、何を着ていいか、わからない。
気がついた時に握っていたのは、陳腐で平凡なビニール傘。
何も言わずに、傘をかざす。
見上げたあのこの濡れた瞳は、何も映さない、くすんだ透明。
少しの間、見つめ合って、あのこも傘に手を重ねた。
無色透明な時間に留まり、何をするでもなく、そこにいる。
極彩色から切り離された、何色でもない、そのままの世界。
色がないって、悪いことだろうか
色を見せなきゃ、いけないだろうか
ただ今は、何色でも、何色でなくても、いい気がする。