NoName

Open App


お題「カラフル」

クレヨンいっぱい取り出して
白い用紙に何を書こう

キラキラお城に、大きなお庭
かっこいい馬車もつけ足して
綺麗な噴水、手前に置けば
僕は立派な王子様

紙の上は、僕の楽園
何を絵描くも思うがまま
いくらでも夢を散りばめて
理想の世界に飛び込みたい

でも、気がついた。
俯くあのこ。
恥ずかしい様に顔を伏せては
逃げる様に隅で縮こまってる。
見捨てられてる筆入れは、鉛筆だけで寂しそう。
まっさらな筈の手つかずの紙は、影に隠れて、暗くなってる。

僕は近づき、手を差し出した。

使っていいよ

あのこの顔が、パッと染まった。

赤い夕日の沈む海原
青いお空の飛行機雲
緑の葉っぱの木陰で休んで
黄色いお花の微笑む花壇

見たことのない色彩が
白紙の舞台を染めていく。
あのこの色に引き込まれ
僕の瞳も色づいていく。

やがてみんなが寄ってきて
それぞれの色を描き始めた。

赤青緑
紫黄色
ピンクオレンジ
水色茶色

賑やか鮮やか 楽しいな

もうクレヨンはなくなっちゃったけど
僕も、残った鉛筆で描きだした。

でもその日、僕は怒られた。

飾り気のない鉛筆だけの絵。

みんなの綺麗な絵と並べて
もっと真面目に描きなさい
って言われた。

何だかとても惨めになって
急に何もかもつまらなくなって
映るもの全てが灰色に見えて
絵をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱に投げた。

もういいや

みんなから離れて、顔を伏せた。

でもその時、あのこは駆け出した。

ゴミ箱に手を突っ込んで、しわくちゃに潰れた絵を拾い上げて、言った。

描いていい?

僕が頷くのを見ると、あのこは絵を広げて、クレヨンを握った。
あのこの手が踊る様に線をなぞり、黒だけだった紙が、カラフルに染まっていく。

できた

あのこは絵を広げ、僕に見せた。

どう?

しわくちゃなままの絵を見せて、あのこはたずねた。

綺麗…だと思う…

僕の答えを聞くと、あのこはにっこりと微笑み、頷いた。

わたしもそう思う

僕の心もいつのまにか、カラフルに染まっていた。

5/2/2026, 10:36:56 AM