shiro

Open App
4/2/2025, 7:20:02 AM

〜春爛漫続き〜

「よし、こんなもんかな。」

そう言うと彼女は羽を広げた。

「ま、待って。」

無意識に彼女を引き止めていた。
声に気づいてくれたのか彼女は振り返ると同時に魔法で出した羽をさっきと同じような小さな光の玉としてぱっと散らした。美しい光景に見惚れていると気がつけば目の前に彼女がいた。

「おや、こんなところでどうしたの?もしかして、迷ったとか?」

いきなり声をかけられ、とりあえず何か返さねばと思い咄嗟に口が動いた。

「あ、え、えっと。その綺麗な羽、どうやって?」

「あーこれね。これは魔法だよ。私の家に代々伝わる魔法。君もつけてみる?」

そう言うと彼女は手を差し伸べた。手を繋いでみるとあっという間に光に包まれ、気がつけば彼女と共に宙を浮いていた。一瞬、何が起こったのか困惑していたが彼女の気遣いもあり低空であったためすぐに自分が飛んでいることに気づいた。少しして彼女が地面に足を下ろすが見え、見様見真似に下ろし手を離した。するとまた光の玉が周りを散ると同時に自分についた羽が消えた。あの時見た光景と同じだ。

「どうだった?」

「なんていうか、すごかった。」

「あはは。私もこの魔法、家族以外で使ったの初めてかも。でもその顔は気に入ってくれたみたいだね。」

人生で初めて空を飛んだということもあり、感動と好奇心が表情に出ていたらしい。

「ちょうどよかった。この辺り散策してみたかったところだし、よかったら一緒に来る?」

迷いもなく惹かれるままに首を縦に振った。

これが彼女との出会いだった。今も彼女には世界のこと、魔法のことなど色々なことを教わっている。ただこの飛行魔法だけは代々伝わる大切な魔法ということで秘密らしい。いつか教えてもらえる日が来たら君にも色んな景色を見せてあげたいな。

「はじめまして」

3/30/2025, 5:28:32 AM

これはある旅の途中の一夜の物語である。

元気のない彼女がそこにいた。どうしたの?と声をかけてみてもうん…と返されるばかり。無理に聞くことはせずそっと横に座った。黙って俯いたままの彼女。いつのまにか頬には涙の滴が流れていた。いつものまっすぐな彼女とは違い何か思い詰めていたような、そんなように見えた。気がつくと僕は彼女を抱きしめていた。わからない、でも今はそうすることしかできなかった。こんな彼女を見るのは初めてだ。

「何があったかは無理に話さなくて大丈夫。僕、きっと何も知らないんだと思う。踏み込んでいいのかもわからないけど、だからもっと早く気づいていればよかったなって思う。今はこのままでいいよ。」

言葉を間違えないように1つ1つ丁寧に話した。話終わった後、彼女は僕をきつく抱きしめて再び泣いた。僕はただただ抱きしめ返していてあげることしかできなかった。まだまだ知らないことばかりだ。彼女はどれだけ前にいるのかな。僕なんかよりきっとずっと考えて抱え込んで先を見ているのだろう。知りたい。彼女の涙を。頼りない僕だけどいつか君に寄りかかってもらえる存在になりたい。いや、なってみせるんだ。
窓から差し込む月明かりが2人を強く明るく照らしていた。


「涙」

3/27/2025, 2:50:00 PM

春爛漫
ふと思い浮かんだのはやはり彼女のことだった。前の世界で初めて彼女に合った日のこと。その頃の僕はまだ駆け出しで右も左もわからないまま旅をしていた。人を見つけては道を尋ね、何とか食糧を確保し毎日生きていくのがやっとだった。そんな時現れたのが彼女だった。ある日、道が悪く中々思いように進めずにいると突然、彼女がやってきて両手をぱっと広げた。その瞬間、彼女から光の玉のようなものが弾け飛び荒れ果てた道は整備され、さらに傍には一面に花が咲いた。

その時の彼女を今でも鮮明に覚えている。まるで天使のように羽ばたき、神々しいという言葉が相応しかった。あれから彼女を追い続けている。彼女は僕にとって憧れの存在だ。だから僕も頑張ろうと思える。
いつか彼女を追い越せるように。
一人前になれるように。

「春爛漫」

3/23/2025, 8:45:13 AM

夢中になって歩いていたせいか、出口まであっという間に近づいた。前方を見ると青空が広がっている。

「そろそろ着くよ。ここまでお疲れ様、ほら見てみて。」

広がっていた景色に息を呑んだ。
お花畑だ。
出口付近は小高くなっておりお花畑を見下ろせるようになっていた。赤、青、黄、白…数えてもキリがないくらいの色と種類。横を流れる小川と鳥の囀り。風に運ばれる草木と花の香り。まるでアニメや映画のワンシーンのようだった。
景色に見惚れていると彼女が横のほうを指差した。

「あそこから降りれるよ。」

横には階段があり、降りてみると花畑の中へつながる道が続いていた。歩いてみるとさっきまでの景色とは違い、風に揺れる花、ふんわりとした花の香りがより感じられ、まるで花たちが何かを祝福してくれているかのようだった。彼女曰く多少なら花を摘んでも大丈夫とのことだったが美しく咲き誇っている花達をみているとそれはためらわれた。

「ここが私の大切な場所。守りたい場所。私ね、この世界が好きなんだ。この世界は宝物がいっぱい。だから君がこの世界に来てくれた時、私嬉しかったんだ。大切な人とこんなにも素敵な宝物を共有できるんだから。君に見せたい景色はまだまだあるんだ。だからこれからも私と旅をしてほしい。」

少し照れた彼女はそよ風に靡き、まるで天使のようだった。そんな僕も少し照れくさく頷いた。

本当にいつも彼女からはもらってばかりだ。
僕はまだ彼女に何もできてない。
だから彼女が望むのなら僕は喜んで守りたい。
一生かけてかえしていきたい。
希望をくれた君に。
大好きな君に。

〜終わり〜

「君と見た景色」

昨日の分です。遅くなってしまい申し訳ないです。


「bye bye…」を見た時、back numberのハッピーエンドが連想された。ハッピーエンドといえば歌詞中の「青いまま枯れてゆく」とはどのような意味なのだろう。そう思い調べたところ青い花は幸福や運命の象徴を表していると出た。
もしこの世界から僕がいなくなってしまう時が来たとしても青いまま誰も悲しませずに消えることができたらいいな

「bye bye…」

3/21/2025, 12:55:43 AM

不安そうにしている僕の様子に気がついたのか彼女は足を止め、話し始めた。

「これから行くところはね、私の秘密の場所なんだ。そこは私にとって大切な場所で守りたい場所でもあるんだ。君にもきっと気に入ってもらえると思う。」

「そっかぁ、でもこんな暗い場所が大切な場所なの?」

そう言うと彼女は吹き出したように笑い出した。それから息を整えてきょとんとしている僕に彼女は言った。

「暗い場所なんかじゃないよー。あのね、もう少し行くと出口が見えてきると思うから、その先が大切な場所なんだ。なーんにも教えてなかったもんね。」

「本当だよー。もういつも何も教えてくれてくれないんだからー。」

そう言うと笑って彼女は言った。

「なら手でも繋ごうか、ちょっと怖いんでしょ?」

不意を突かれ驚いたが恐怖心には勝てず素直に繋ぐことにした。ニヤつきながら話す彼女と繋いだ手の温もりに安心したのか、気持ちが落ち着いていった。

しばらく歩くと遠くのほうに光が見えた。きっと出口だろう。あの光の先に彼女にとって大切な場所がある。どんな場所なのだろう?彼女のことだからきっと素敵な場所に違いない。期待と好奇心を胸に光を目指し歩き続けた。

〜続く〜

「手を繋いで」

Next