〜続き〜
私には病気で亡くした弟がいた。弟は自然が大好きで幼い頃はいつも外で植物や動物たちと戯れていた。その姿は愛おしく自慢の弟だった。だが弟が10歳になる頃、不治の病にかかってしまった。医師にそう長くは生きられないと告げられた。それでも弟は辛い顔ひとつせず私が話しかけてもこれまで通り明るく振る舞った。弟が亡くなる少し前、自分の最期を悟ったのかこう告げられた。
「お姉ちゃん、僕この世界が好き。外に出るとね、みんな僕のことを歓迎してくれるんだ。僕それが嬉しくてだから僕からのお願い。僕の宝物を守って。みんながあの森で元気に暮らしてくれるといいなー。」
私は溢れ出しそうな涙をぐっと堪えて弟と約束した。1週間後、弟は家族全員に囲まれて安らかに息を引き取った。それからというもの私は毎日、毎日懸命に勉強した。そして2年が経ち遂に魔法士の資格を得た。弟との約束を果たすために。
あの時約束した
なのに…なのに…
私…また守れなかった
私はお姉ちゃん失格ね
〜続く〜
「届かない……」
これはまだ私が1人で旅をしていた頃の話
その日は激しい雷雨が予想されており、雨風から自然を守るため朝から森に入った。思っていたよりも天候は落ち着いており、植物や道に特に目立った影響は見当たらず動物たちも自分たちの巣や軒下に隠れて雨宿りをしていた。このまま何事もないまま時間が過ぎるだろうと思っていた。しかし午後になると空模様が一変した。遠方から黒い雲が急速に近づいてきたのだ。私はできるだけのことはしておこうと思い草木や動物たちに保護魔法をかけ始めた。すると突然、前方に雷が落ちた。あまりに急であったため反射的に叫んでしまいその場に伏せた。少しして雷が落ちたことを認識するとその周辺の状態確認を始めた。雷が落ちたであろう周辺の道は荒れ果て草木からほのかに煙が上がっているのがわかった。同時にどこからか小さな鳴き声が聞こえてきた。恐る恐る声のするほうに近づいてみるとそこには小さな子猫が横たわっていた。咄嗟にかけ寄り容体を確認する。
〝 待ってて!今手当てしてあげるから ”
雷に打たれ追い打ちをかけるように雨に当てられる子猫。身体は冷たくすぐに治療が必要なことは一目瞭然だった。彼女は必死に濡れた子猫の身体を拭き温め、持っていた栄養剤と魔法で治療にあたった。しかし衰弱しきってしまった子猫になす術なくそのまま静かに目を閉じてしまった。
お願い、待って…やだ…
しばらくは懸命に手当てを続けたがやがて息を引き取ったことを確認すると手を止め、その手を子猫の頭に乗せ、そっと撫でた。雨なのか涙なのかわからない雫が頬を流れ続ける。せめて撫でている間だけでも安らかに眠ってほしいと祈るばかりだった。
その後、魔法は使わず子猫を静かに埋め、かろうじて近くに咲いていた一輪の花の蕾を植え、手を合わせた。
救いたかった
守ってあげたかった
私はまだ青かったのね
ごめんね…ごめんね…
降り頻る雨の中、彼女はひとり声を上げて泣いたのだった
〜続く〜
「青い青い」
カーテンの隙間から差し込む朝日
朝だ
まだ眠っている彼女を起こさないようベットを出て眠い目を擦りながらカーテンを開ける
目の前には朝日に照らされた町並みと山の天辺から顔を出す太陽
窓を開けるとほのかに風が吹き込んだ
朝日の眩しさと涼しいそよ風が朝を告げている
窓辺の花が一緒に風に揺れている
耳をすませば鳥たちが鳴いている
1日の始まりだ
さあ、今日も旅をしよう
旅の続きを始めよう
「風と」
いつからだろう
こんなに泣くようになったのは
自分の感情に素直になったのは
ふとそう思った。
だがその答えはすぐに出た。きっと紛れもなく彼女と出会ってからだと思う。まっすぐな彼女はそうやっていつも僕に気付かせてくれる。彼女に出会うまでは心の奥底で1人抱え込んでいた。誰にも見せることなくそのままずっとずっと抱え込むつもりだった。
そんな僕は今、君のおかげで随分変わったと思う。自分の感情に正直に。君にとっては簡単なことかもしれないけど僕にとっては大変だった。でも救いだった。こんなに心の奥が軽くなったのは初めてだったから。だから何度でも君に伝えたい。素直にまっすぐに。
ありがとうって
「ふとした瞬間」
歌うのが好きだ
歌詞に沿って歌うのが好きだ
歌詞に感情を込めるのが好きだ
感情を歌詞に乗せて紡いていく
この瞬間がたまらなく好きだ
いつか君にもこの歌声が届くかな
この気持ちが届くのかな
届くといいな
その時君はどんなことを思うだろう
なんだっていいや
君が横にいて、ただ聞いてくれるだけで僕は幸せだよ?
そんな日を願って今日も僕は歌を口ずさむんだ
「好きだよ」