これはまだ私が1人で旅をしていた頃の話
その日は激しい雷雨が予想されており、雨風から自然を守るため朝から森に入った。思っていたよりも天候は落ち着いており、植物や道に特に目立った影響は見当たらず動物たちも自分たちの巣や軒下に隠れて雨宿りをしていた。このまま何事もないまま時間が過ぎるだろうと思っていた。しかし午後になると空模様が一変した。遠方から黒い雲が急速に近づいてきたのだ。私はできるだけのことはしておこうと思い草木や動物たちに保護魔法をかけ始めた。すると突然、前方に雷が落ちた。あまりに急であったため反射的に叫んでしまいその場に伏せた。少しして雷が落ちたことを認識するとその周辺の状態確認を始めた。雷が落ちたであろう周辺の道は荒れ果て草木からほのかに煙が上がっているのがわかった。同時にどこからか小さな鳴き声が聞こえてきた。恐る恐る声のするほうに近づいてみるとそこには小さな子猫が横たわっていた。咄嗟にかけ寄り容体を確認する。
〝 待ってて!今手当てしてあげるから ”
雷に打たれ追い打ちをかけるように雨に当てられる子猫。身体は冷たくすぐに治療が必要なことは一目瞭然だった。彼女は必死に濡れた子猫の身体を拭き温め、持っていた栄養剤と魔法で治療にあたった。しかし衰弱しきってしまった子猫になす術なくそのまま静かに目を閉じてしまった。
お願い、待って…やだ…
しばらくは懸命に手当てを続けたがやがて息を引き取ったことを確認すると手を止め、その手を子猫の頭に乗せ、そっと撫でた。雨なのか涙なのかわからない雫が頬を流れ続ける。せめて撫でている間だけでも安らかに眠ってほしいと祈るばかりだった。
その後、魔法は使わず子猫を静かに埋め、かろうじて近くに咲いていた一輪の花の蕾を植え、手を合わせた。
救いたかった
守ってあげたかった
私はまだ青かったのね
ごめんね…ごめんね…
降り頻る雨の中、彼女はひとり声を上げて泣いたのだった
〜続く〜
「青い青い」
5/4/2025, 9:24:18 AM