〜春爛漫続き〜
「よし、こんなもんかな。」
そう言うと彼女は羽を広げた。
「ま、待って。」
無意識に彼女を引き止めていた。
声に気づいてくれたのか彼女は振り返ると同時に魔法で出した羽をさっきと同じような小さな光の玉としてぱっと散らした。美しい光景に見惚れていると気がつけば目の前に彼女がいた。
「おや、こんなところでどうしたの?もしかして、迷ったとか?」
いきなり声をかけられ、とりあえず何か返さねばと思い咄嗟に口が動いた。
「あ、え、えっと。その綺麗な羽、どうやって?」
「あーこれね。これは魔法だよ。私の家に代々伝わる魔法。君もつけてみる?」
そう言うと彼女は手を差し伸べた。手を繋いでみるとあっという間に光に包まれ、気がつけば彼女と共に宙を浮いていた。一瞬、何が起こったのか困惑していたが彼女の気遣いもあり低空であったためすぐに自分が飛んでいることに気づいた。少しして彼女が地面に足を下ろすが見え、見様見真似に下ろし手を離した。するとまた光の玉が周りを散ると同時に自分についた羽が消えた。あの時見た光景と同じだ。
「どうだった?」
「なんていうか、すごかった。」
「あはは。私もこの魔法、家族以外で使ったの初めてかも。でもその顔は気に入ってくれたみたいだね。」
人生で初めて空を飛んだということもあり、感動と好奇心が表情に出ていたらしい。
「ちょうどよかった。この辺り散策してみたかったところだし、よかったら一緒に来る?」
迷いもなく惹かれるままに首を縦に振った。
これが彼女との出会いだった。今も彼女には世界のこと、魔法のことなど色々なことを教わっている。ただこの飛行魔法だけは代々伝わる大切な魔法ということで秘密らしい。いつか教えてもらえる日が来たら君にも色んな景色を見せてあげたいな。
「はじめまして」
4/2/2025, 7:20:02 AM