『隠された手紙』
恋人が謎の死を遂げた。
恋人の両親から連絡を受けた時は
受け入れることが出来なかった。
葬式の時、そんな私を見てか恋人の両親は
恋人の遺品整理を手伝ってくれと頼んできた。
私でいいのかと尋ねると、
「もし欲しいものがあれば遠慮なく持ってってね。」
と日頃の信頼もあってか抵抗は無さそうだった。
久しぶりに恋人の部屋に入れたというのに
静かでとても寂しい。
居た形跡はあるのに恋人はいない...
センチメンタルになるも
頼まれたことをやろうと頬を叩き作業を始める。
学生時代のノート、デートに来てくれた服、
趣味のアンティークもの...
正直全部持ち帰りたいくらいだ。
さすがにそれはダメだなとセルフツッコミを
心でやっていると、机の引き出しの奥底に手紙があった。
手紙でのやり取りは少しあったが
見たことの無い便箋に入れられている。
誰とのやり取りだろうか、
恋人に忘れたくない人でもいたのだろうか。
恐る恐る手紙を開く。
恋人が書いたわりにはかなりの殴り書きで、
「これを読んだ人、
私はこの手紙を読まれた時には
いないかもしれない。
両親の言葉を信じないで。殺される。」
と書かれていた。
最後まで読みながら目を通したあと、
2月の寒い部屋の中なのに動悸と冷や汗が収まらなくなる。
この手紙はなんだ。恋人は何をされた?恋人の死は...
とりあえず逃げた方がいいかもしれない。
手紙をポケットに入れ、部屋を出ようとする。
「おや、整理はもう終わったのかい?」
いつもの口調なのに
どこか圧を感じる声色が背後から聞こえる。
振り向こうとした瞬間、
後頭部に強い衝撃を受け意識を失った。
語り部シルヴァ
『バイバイ』
正月、新年のイベント...
31日もあった俺の役目は終わった...
あっという間だった...
毎年俺の役目は1番最初だからいつも緊張する...
だが俺が頑張ってこそ次に託すことができる。
俺はこんだけ頑張った。次は頼んだぞ。って。
もう...時間が来た。
思い切り伸びをしてると足音が聞こえて振り返る。
「1月は行く...早かったねえ。」
「まあ、いつものことだよ。」
「だね。あとは任せて。」
時刻は0時。
薄れていく意識の中頼れる背中を見つめながら目を閉じた。
語り部シルヴァ
『旅の途中』
「ふぅ...」
重い荷物と腰を下ろして近くの大木に体を預ける。
ここは自分の知らない場所。
家からどれだけ歩いてきたか、
どれだけ経ったかもほとんどわからない。
それにゴールも全く見えない。というか定めてない。
ただひとつの目的は"自分が満足するまで"。
それが満たされるまではこの旅を終わらせない。
人に話せば笑われたこともあった。
「そんなんで見つかりっこない。」
「時間も人生も無駄にしてる。」
好きに言え。これは自分の人生だ。
見つからずとも、人生を棒に振ろうとも
自分がやりたいことを今やっているだけ。
何も知らなさそうな澄んだ空に不満をぶつけつつ
重い荷物と腰を今度は持ち上げる。
さ、旅を続けよう。
休憩に使わせてもらった大木に軽く一礼して歩き始めた。
旅はまだまだ続く。
語り部シルヴァ
『まだ知らない君』
今日も生徒会長の周りは親衛隊が道を作る。
毎日この光景だ。最初こそ動揺したがもはや
いつもの景色になり慣れてしまった。
しかし何をすればこんなに人をまとめてこんな
小さい国みたいな状態まで築き上げれるのかが不思議だ。
...とても中学から知り合った親友とは思えない。
当時の親友は僕と同じくらいの平凡な人くらいの感じだった。
趣味が合い価値観が合う。
だったんだけどなあ...
高校からデビュー成功もあって今の地位に至る。
そう考えれば人知れず努力した結果とも言えるだろう。
ぼーっとしているといつの間にか親友が目の前まで来ていた。
親衛隊に「おい!道を開けろ!生徒会長のお通りだぞ!」
とリアルで聞くことあるんだと思うようなセリフを吐かれたが
親友がそれを止める。
「騒がしくて済まない。また今度お茶でも行こう。」
周囲がザワつくのを感じる。
親友はこんなくさいセリフも言えたのか...
尊敬と同時にまだ親友の知らない部分を知れると思うと同時に
俺の高校生活も悪くないなと感じた。
語り部シルヴァ
『日陰』
帰ろうとすると教室の中心よりやや窓寄りに
人が集まっているのが見えた。
またアイツが中心になっているんだろう。
足を止めることなく教室のドアを閉めて校門まで歩く。
門を過ぎたあたりで後ろから声をかけられる。
「おーい。待ってくれよ。」
「待ってって言われたってお前はみんながいるから
別にいいだろ。」
「幼馴染だろ〜。もっと仲良くしようぜ〜。」
こんな風にヘラヘラしながら
接してくるコイツには正直イライラする。
いつも陽気でいれて、クラスもみんなに好かれる。
それでいて地味で影の薄い俺に声をかけてくる。
住む世界が違う。と言えばいいんだろうか。
昔はもっと離れても磁石のようにくっついてくる奴だった。
それがわかっていこう離れるのは諦めて
自分勝手にしようと決めた。
「なぁなぁ〜、コンビニ寄ろうよ〜。お菓子奢るからさ〜。」
陽気で人気者なコイツに奢ってもらうのだけは気分がいい。
後で罪悪感が湧いてくると思うけど、
それは後の自分に任せよう。
日陰者は日陰者らしく、陰気臭い生き方を。
語り部シルヴァ