語り部シルヴァ

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6/13/2025, 11:12:11 AM

『君だけのメロディ』

新曲が投稿されて早速聞いてみた時に
その違和感は確信に変わった。

半年前、推していた作曲家が無期限の活動停止を発表した。
理由は明かされなかったが精神面の疲労や
恋人から夜逃げしたとか勝手な考察がされている。

しかしある日動画アプリでその作曲家が作品を投稿した。
コメント欄では復活を歓喜するファンで溢れかえっていた。
実際僕も嬉しかった。投稿された曲を何度も何度も聴いていた。
だがずっと聴いていると心のどっかで嬉しさよりも
違和感が増えてきた。

嬉しいはずなのにこの人の曲じゃない。
そんな気がしてならなかった。
作曲の方針を変えたのか...なんて思っていた。

そして今回投稿された曲を聴いてそれが確信に変わったのだ。
この人が絶対入れているメロディが無くなっていた。

僕がずっとその人を推していた理由がわかった。
そして僕はその人を推すのをやめた。

語り部シルヴァ

6/12/2025, 10:50:19 AM

『I love』

今私の隣にいるこの人は寡黙でいつもお世話になっている。
大抵の愚痴は聞いてくれるし
私がやりたいことに着いてきてくれる。
無理しなくていいよと言っても
「好きでやってるから」と嬉しいことを言ってくれる。
主体性が無いように見えてしっかりと芯がある。
そんな人だ。

今俺の隣にいるこいつは元気があっていつも世話になってる。
静かな俺の世界を賑やかにしてくれて
色んな所に連れて行ってくれて知らないことを知れる。
強要するように見えてちゃんと俺のことを考えてくれている。
自分勝手のように見えて周りのことが見えている。
そんな人だ。

幼馴染とかじゃなくて入学式の時知りあった仲。
なのに何故だろうか。

私は
俺は
家族や他の友達よりも
この人の隣にいるのが心地よい。

語り部シルヴァ

6/11/2025, 11:05:53 AM

『雨音に包まれて』

今日はずっと晴れの予報だったはずだ。
それなのにそれは暗いし世界は音を立てて濡れる。
近くに丁度いい公園があってそこで急遽雨宿りをしている。

空気が湿気っていて肌がベタついている感覚と
濡れた服がピッタリと貼り着くこの感覚が
梅雨だということを教えられた気分だ。

車が走る音も急な雨に走り出す人の声もあるはずなのに
やけに静かだ。
目を瞑れば雨音しか聞こえない。

柔らかい砂に当たる雨粒と
公園の遊具に当たる雨粒は音が違う。
そんな雨音に包まれているのも悪くないと思った。

...肌も衣服もべちゃべちゃじゃなければ。

語り部シルヴァ

6/10/2025, 10:54:28 AM

『美しい』

私の日常は『美』で作られている。
部屋の内装、食事、仕事の内容、そして私自身。
私自身が美しくなければこの世界は美しくならない。

そのためにはどんなことも厭わない。
早寝早起き、食事制限、運動。
知識を得るために勉学に励み姿勢やマナーを学ぶ
苦手なことは多いがそれでも全ては美のため。

私が私自身を磨けばもっと美しくなれる。
洗顔やマッサージを終えて鏡を見る。
輝きを放つ鏡の前には鏡より輝く私が映っていた。

うん。今日も私は美しい。

語り部シルヴァ

6/9/2025, 10:53:13 AM

『どうしてこの世界は』

「これ6番テーブルに!」
「3番のお客さんの注文まだー?」
「あっ5番テーブル誰か拭いてきてー!」

厨房内はとてつもなく慌ただしい。
休日でも祝日でもないただの平日だと言うのに...
なんなら怒号まで飛び交っている。
今日は何かあっただろうか。そう考える暇も与えてくれない。

忙しい。しんどい。
けどなぜだろう...この空間が、この忙しさがどうも心地よい。

「...ふふっ。」
なんだか楽しくなってきた。

「おいっ!笑ってないで手を動かせ!」
「あっ、はい。すみません。」

謝りつつも口元の緩みは戻らなかった。
どうやら僕はもう壊れてるらしい。

語り部シルヴァ

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