語り部シルヴァ

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1/17/2025, 10:44:19 AM

『風のいたずら』

外に出ると風が吹き荒れていた。
気温も低く外に出るには少々辛い。
厚手のジャンパーにマフラーを巻いたがそれでも寒い。

必要なものが無くなったから買い物に行こうかと
出たばっかりにこれだ。
寒い。さっさと買い物を済ませよう...

1歩1歩進む足は冷えて今にも凍りそうだ。
下も中に1枚履くべきだったか...

身を縮こませながら歩いていると更に突風が吹く。
しっかりと巻いていたマフラーが吹き飛んでしまった。
マフラーはひとりでにふわふわと
風に乗ってあっという間に姿を消した。

空もマフラーが欲しかったのか...
悲しい気持ちを誤魔化そうと合理的な理由を考えつつ
買い物リストにマフラーを足した。

語り部シルヴァ

1/16/2025, 10:16:06 AM

『透明な涙』

悔しくて1人河川敷で夕焼けを眺める。
試合に負けた。あと少しで勝てたかもしれないのに
実力不足で負けた。
もっと努力しないと。
でも努力したところでもっと強くなれるのか。

悔しい。悔しい。
歯を食いしばって顔を伏せていると、
後ろから声をかけられた。
「何やってんだ。こんなところで。」
「先生...」

顔を上げて振り返ると顧問の先生に声をかけられた。
知り合いに泣きそうになってるのを見られたのと
よりによって先生だったことがすごく恥ずかしい。
恥ずかしさにすぐ顔を伏せる。

全てを察したのか先生は隣に座って独り言を呟く。
「涙が透明なのは女性は煌めかせるため、
男は泣いているのを知られないためらしいぞ。
先生は泣き虫だからいつ気づかれるか
ドキドキしながら泣いてる。」

下手くそな嘘に顔を伏せながらも思わず笑ってしまう。
安心したせいで涙も出てきた。

鼻をすする音が聞こえたのか先生は
優しく背中を叩いてくれた。

語り部シルヴァ

1/15/2025, 10:27:39 AM

『あなたのもとへ』

部活が終わった瞬間後片付けを済ませる。
運動部のお約束で細かい片付けは基本後輩に頼めるので
今日はお願いすることにした。
明日は手伝うつもり。

道着から制服に着替えて忘れ物がないかチェック。
明日の部活の予定を確認して終わり...
の前に入口で振り返り
「お先に失礼します!お疲れ様でした!」
と一言行って出ていく。

校舎に止めてある自転車に鍵を挿して校門を飛び出す。
日も暮れてきた。急がないと...!
路地裏を滑らかに曲がりギアをトップに。
ずっしりとくるペダルを踏みしめ全速力で漕ぐ。

待ち合わせの公園に着く。
急いで携帯を取り出して『お待たせ。着いたよ』
と呼吸を整えながら入力する。

暗くなってきた空に上がった息が白くなって消えていく。
今日は間に合わなかったか...帰ろうと公園に背を向けた時、
後ろから衝撃が飛んでくる。

「待ってたよ。お疲れ様。」
優しく愛しい声にさっきまでの疲れが吹き飛んだ気がした。
「じゃあ、帰ろ。」
そう言って彼女を家まで送る。

手袋もせずに繋ぐ手は芯から温まる温もりがあった。
片手で自転車を押すのはちょっとしんどいけど、
彼女と手を繋げる幸せに比べたら些細なものだった。

語り部シルヴァ

1/14/2025, 10:16:21 AM

『そっと』

最近息子がやたらと勉強するようになった。
塾に行く時間が増え、あれだけ勉強よりも
ゲーム一筋だったのにゲームも控えるようになった。

理由はどうであれ勉強するのはいいことだが
急激に変わる息子に正直戸惑いを隠せない。
今日も勉強をすると晩御飯を食べ終わった後すぐに
自分の部屋へと行ってしまった。
来年から受験生。その準備を今からでもしようとするその姿勢
は親としてはしっかりした子に育ってくれて
嬉しいものだった。

今日も日付が変わる直前まで勉強をするんだろう。
少し差し入れをしようかな。
そう思い静かに息子の部屋へ移動する。
ドアに手をかけようとしたとき、息子の笑い声が聞こえる。
普段とは違う大人しめの笑い声。
女の子っぽい名前を呼ぶ息子。
時たま勉強に関連する話題で盛り上がっているようだ。

こんな気持ちは親のお節介かもしれない。
それでも今までの行動の理由が繋がった気がして
ドアから手を離しそっと部屋から離れた。

語り部シルヴァ

1/13/2025, 11:42:18 AM

『まだ見ぬ景色』

「...でな、そこには俺何人分か
わかんないくらいのでかい鳥が〜」
お見舞いに来てくれたおじさんは
両手を大きく広げて楽しそうに話す。

このおじさんは僕が小さい頃から冒険に出ては
土産話を持ってきてくれる。
体が弱い自分にとってはいつも面白い話をしてくれる。
ドキドキハラハラ、それでいてすごくワクワクする。

「いーなー。僕もおじさんみたいに冒険してみたい。」
「はは、お前もいつか行けるさ。
行けるようになったらおじさんが連れてってやる。」
「ほんと?やったー!」

そう言っておじさんと小指を絡ませて約束をする。
早く元気になりたいな...
おじさんと冒険して色んな景色を見て...

おじさんの話をした後も自分の夢見る世界に
ワクワクが止まらなかった。

語り部シルヴァ

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