『逆光』
私の国の王は常に明るい。
言動や国の動かし方、何もかもが自分たちの道を
照らし示してくれる。そんな存在。
ある日そんな王がひとりでのんびり散歩していた。
挨拶をしてみるとどこか違和感があった。
なよなよしいというか...どこか頼りない。
具合でも悪いんだろうか...心配です尋ねてみた。
王はしまったという表情をしたあと
すぐに諦めたのか口を開いた。
常にスピーチを考えてくれる存在がいる。
常に練習相手になってくれている。
自分が輝いているんじゃない。
輝かせてくれた挙句逆光で隠れている存在が私にはいるんだ。
そう言って王はそんな存在を思い出したのか、
いつもの明るい雰囲気に戻った。
眩しさに隠れた影が文字通り縁の下の力持ちなんですね。
そんなコメントを聞いて笑う王は
スピーチの時より自然な眩しさをしていた。
語り部シルヴァ
『こんな夢を見た』
目を覚ませば少し大人びた君が隣で寝ていた。
目を覚ました君がおはよと微笑んでくれた。
そしてふたりはまた眠りについた。
目を覚ました時にはベッドに1人。
あぁ、またか。
そう思い体を起こし仏壇に向かう。
鐘を鳴らし両手を合わせる。
おはよう。今日も来てくれたんだね。ありがとう。
お陰で頑張れるよ。
写真の君は照れくさそうに笑っていた。
語り部シルヴァ
『タイムマシーン』
ふぅ...やっとできた。
苦節20年。無理だと言われてきた
タイムマシーンをついに完成させた。
これを発表...してもいいのか。
悪党の手に渡ったら...
悩んでいると突如空間の一部が歪み、全く同じものが出てきた。ただ。ホコリや傷が随所に見られた。
中から人が飛び出て手榴弾を4、5個
タイムマシーンに投げつける。
「ちょっ...!!」
手榴弾をどうにかする前に投げた人に
後ろ襟を掴まれ連れていかれる。
手榴弾は爆破し、タイムマシーンを作っていた研究所は
跡形もなく吹きとんだ。他の部屋が無事なだけマシだろう。
「おい!なんだあんたは!」
振り向くと投げた人はいない。
辺りにあの一瞬で隠れる場所もない。
...いや、まさかな。
また一から作ろう。一回作れたなら、また作れるはずだ。
語り部シルヴァ
『海の底』
海から出た景色は緑がいっぱいで、
鉄の塊が水の無い道を進む。
外の世界はそんな世界だと教わったことがある。
海も似たようなもんだ。
海藻の緑は太陽の光で透けて輝いている、
鉄の塊だってたまに私たちの頭の上を進んでるいる。
...音が大きくてうるさいけど。
私は人魚だから外の景色に興味はあるが
半分以上は諦めている。
もし...もし外の世界で生きることができたなら...
あの海藻のように輝けるのかな。
ため息は泡になり水面まで浮かんではぷかぷかと
可愛い音を立てて消えていった。
語り部シルヴァ
『君に会いたくて』
"ねえ、今何してる?"
唐突に来たLINEに跳ね上がる。
最近仲の良い友人からだ。
"特に何もしてないよ〜"
"じゃ、公園に集合ね"
意見を聞く耳も持たず
友人からのメッセージはピタリと止まった。
偶然近場に住んでいたこともあって、
こうやって会えるだろうなあなんていつかは思っていたが
唐突に来ると不安というかモヤモヤが出るもんなんだな。
なんて思いながら普段見ない
街並みの顔を見ながら公園に着く。
すでにブランコで遊ぶ友人。
普段と違う服装だと別人みたいだ。
「よ。」
「おそーい。」
「悪かったよ。で、どうしたの?」
「...この状況でわかんない?鈍感。」
ブランコを飛び降り綺麗に着地した友人は
「寒いから飲み物奢って」と自販機に指をさした。
語り部シルヴァ