『雪原の先へ』
少し沈む明日を何とかして持ち上げ
一歩ずつ白い山を登り切る。
登りきった先の辺り一面は雪景色。
木々は見えずフェンスは視界の端っこにようやく
ちょこんとあって、ただ太陽の光が
反射してキラキラと光る雪。
すごく綺麗な景色だ。
スマホを忘れていなかったら絶対に写真を撮っていただろう。
今からここを下る。
毎年ここに来ているがまだどうにも慣れない。
けれど形は上手くなってきた。
あとは楽しむ気持ちさえあればモーマンタイ。
深呼吸して足をずらすように動かす。
板は斜面を滑り始める。
足が少し強ばって心臓が滑る速度に合わせて脈打つ。
ターンも綺麗に決まる。
ひとつ、ふたつとゲートを滑らかに通る。
...綺麗にゴールを決める。
ひとりだと集中できるけど、誰かと滑ってみたいものだ。
リフトを目指しもうひと滑り決め込むことにした。
語り部シルヴァ
『白い吐息』
息を吐けば白くなって空の青に溶けていく。
楽しくなって何度もやってしまう。
白くなくなったらマフラーで口を温めて休憩。
ずっとやってしまうのはなんでだろうか。
大人になった今でも癖で続けてしまう。
休憩の仕方が変わっただけで、
今はコーヒーで口を温めている。
僕が休憩している間もコーヒーは
僕を真似て白い息を空に吐いては青に溶ける。
コーヒーを飲んで胸の中心がぽわぽわしてくる。
また白い息が吐けそうだ。
語り部シルヴァ
『消えない灯り』
風に吹かれるようにゆらめき、
優しい明るさを絶やさず灯りは優しく部屋を照らす。
今はすごい時代になった。
ロウソクのような明かりを
ライトで表現出来るようになった。
おかげで電気さえあれば
消えることの無い優しい灯りを味わえる。
強いていえばロウソクのように
あったかいわけじゃないから、
厚着はしないといけないが...
それでも揺らめく灯りはずっと見ていられる。
灯りは、時間を止めたかのように
消えることなくずっと照らし続ける。
語り部シルヴァ
『きらめく街並み』
会社を出るといつもの風景。
行き交う車と人。半数がスーツを着て帰路の途中。
寒くなってマフラーや
モコモコした上着を着てる人が多くなった。
俺もそのひとり。
この時間になってくると居酒屋から
焼き鳥の香ばしい匂いが漂ってくる。
そんな誘惑に負けじと歩き進める。
もうすぐクリスマスで商店街やデパートは
装飾がきらびやかに...
都会は眠らない街なんてよく言う話だ。
ビルの明かりでさえもイルミネーションに見える。
早く帰ろう。
いつもの街並みに見とれてしまっては日が昇ってしまう。
けれど、クリスマス本番の賑やかさは少し楽しみだ。
語り部シルヴァ
『秘密の手紙』
先生が通り過ぎ背中が見えた瞬間にアイコンタクトで
サッとノートの切れ端を渡す。
ふざけた内容に思わず声が出そうになるも必死にこらえる。
次にチャンスまでに返事の内容を書き込みタイミングを待つ...
後で話せばいいだけなんだけど...どうしてか今したくなる。
先生に怒られるかもしれない。
けれどそれ以上にこの状況で話したくなる。
先生が通り過ぎた瞬間に手を伸ばす。
「こら。」
先生に怒られてしまった。
こうなってしまったら相手に悪いと思ってしまう。
それでもまたやりたくなるのはなぜだろうか。
相手も同じことを思ったのかアイコンタクトをとった。
語り部シルヴァ