『嗚呼』
「じゃ、補習だからやっとけよ〜」
担当代理の先生はそう言いながら教室を出ていった。
先生が出て行ってすぐに教室はガヤガヤ音でうるさくなる。
確かに静かにしとけとは言われなかったけど...
高校生にもなってルールを守れないものかとため息をついてやるはずだった範囲を教科書を見つつ勉強することにした。
こんなバカ真面目だから。
という理由でクラス委員長を任されたが正直やる気は無い。
仕事も無ければクラス委員長だからとみんなが
言うことを聞いてくれるわけでも無さそうだ。
授業開始30分。
思ったよりもやる範囲が狭く終わってしまった。
次の授業分も...と思ったが次は今日やる予定だった部分を
やるだろうと思い教科書を閉じた。
あと半分ちょい。
周囲の様子を見ると最初とほぼ変わっていなかった。
ゲラ笑いするカースト上位の女子、
スマホの音量を大にしてゲームする男子。
静かに、それでも目立ってしまう男子たち...
いつも通りだ。
やることが無くなったから空を見ながら寝ることにした。
嗚呼、今日も平和で何よりだ。
語り部シルヴァ
『秘密の場所』
公園の整備された道を進む中、
人が見ていないのを確認して道から外れて獣道を進む。
進んだ先は整備はされていないものの、
ぽっかりと空間が広がる。
周囲は背の高い草木に覆われて地面は沢山踏まれて
雑草は生えていないしっかりと踏みしめれる地面。
僕の匂いかカバンに入れてあるおやつの匂いか、
僕がここに来るのをわかっていたように
僕が入ってきた入口を囲むように待機していた。
「こんにちは。可愛い住人さん。」
喋ると相手は「にゃ」と満足気に返事する。
ここに住む猫ちゃんを追いかけて見つけたこの場所。
人に慣れた猫ちゃんたちがこの時期
僕で暖を取りに集まってきてくれる。
今は誰も知らない秘密の場所。
変な人に荒らされないようにどうかずっと見つからないでね。
語り部シルヴァ
『ラララ』
家に帰ってすぐ床に体を投げ出す。
フローリングの冷たさがすぐに全身を冷やす。
けれどもう1歩も動けない。疲れた。
頑張って寝返りをして天井を見上げる。
電気の付いていない電球が月のようだ。
目を瞑り叫ぼうとした。
日々の疲れを叫び声で描き消そうとした。
大きく息を吸い...
「...〜♩。」
叫び声は歌声に変わった。
というか変えた。シンプルに近所迷惑だ。
こ疲れた時は歌を歌うのが最終手段になっている。
私の最後の足掻き...
「〜♪。...ぐすっ。」
歌声はどんどん鼻声に変わっていく。
あぁダメだ。今日は無理っぽい。
意識が薄れてきた。
次目が覚めたら全て片付けよう...
睡魔に任せて私はそのまま目を閉じた。
語り部シルヴァ
『風が運ぶもの』
雨粒が傘を叩く音が消えていく。
空がどんどん明るくなっていく。
傘を閉じて空に手のひらを見せる。
手に雨粒が降ってこない。
ちょうど雨上がりの瞬間に立ち会ったようだ。
しっとりした空気が一面に広がる。
晴空の下で風が吹き抜ける。
湿気った雨の匂い。
雨くさい匂いが癖になってしまいそうだ。
風を感じてふと気付いた。
風が寒くない。
あれだけ刺すような痛みを伴う風が優しくなっていた。
風は春も運んできたようだ。
直に好きな桜が見れると思うと
湿気って重くなった足も軽くなりそうだ。
語り部シルヴァ
『question』
「私の事好き?」
「いや。」
「じゃあ嫌い?」
「嫌いだったら一緒の部屋でゲームしてないよね。」
「へへ。じゃあ私の事好き?」
「NO。」
「なんで好きじゃないの?」
「好きを簡単に使いたくないから。」
「ちゃんとした場面なら好きって言ってくれるの?」
「いや?。」
「さっきと矛盾してるよ?」
「ここではい。は言えないから。」
「...ゲーム終わろっか?」
「?はい。」
「ちょっと待ってね?」
「...はい。」
「私は君が好きです。君は私の事好き?」
「うん。大好きだよ。」
「なら、私と付き合ってくれますか?」
「こちらこそ喜んで。」
語り部シルヴァ