語り部シルヴァ

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8/8/2025, 10:44:14 AM

『夢じゃない』

スマホの通知で目が覚める。
"おはよ。起きてる?"
いつになく脳が目覚めて
スマホをポチポチと打って返信する。

"おはよ!今起きたところだよ!早起きしたの?"
時刻は九時過ぎ頃。思った以上に寝ていたようだ。
伸びをしているとまたスマホが鳴る。

"ううん、七時頃起きたよ。
結構ねぼすけなんだね(笑)"

なんだか恥ずかしくなってくる。
これから生活習慣見直そうかな...
なんて思っているとふと現実味が増してくる。
寝起きの感覚もクーラーの冷たさも
窓の眩しさもきちんと感じる。
ここまで来たら頬をつねる必要は無いだろう。

「...ほんとに付き合えたのか。」
夢じゃない。こんなに朝起きて
嬉しさが込み上げてきたことはあっただろうか。
今ならなんでも出来そうだ。
もう一度思い切り伸びをして
君への返信を考えることにした。

語り部シルヴァ

8/7/2025, 10:10:28 AM

『心の羅針盤』

「うーん...」
コンパスは完全に壊れてしまったようだ。
海に出る時は常に持ち歩いていたコンパスも
今回の嵐で動かなくなった。
レーダーも...イカれている。

幸い船の帆は嵐の来る直前に急いで畳めたから破れてない。
問題は一面海の真ん中でどこを目指すべきか。
完全に遭難状態。陸地をいち早く見つけなきゃ...
どこに...どっちへ...

焦ってもただただ時間が過ぎてしまうだけだ。
一度目を瞑って深呼吸する...
考えても仕方ない。

嵐は来なさそうだ。
なら、帆を張って船の進みたいように進ませよう。
心の羅針盤。なんてね。

天気は良好。波は穏やか。
さ、進みたい方向へ進め!

語り部シルヴァ

8/6/2025, 11:43:02 AM

『またね』

「じゃ、これも今日で最後だね...」
「そうだね。」
彼女の家から出て自転車を出してくる。
いや...もう彼女じゃないか。

たった今別れた。
どっちか聞くのは野暮ってもんだよ。
自転車を玄関前まで持ってきて帰ろうと思ったが
ふと夕焼け空が目に入った。
初めてここから帰った時は乾いた空が異様に寒かったっけな...今じゃあの寒さが恋しい季節だ。

「どしたの?」
「あ、いや初めて家にお邪魔したこと思い出して。
あれからずっとお邪魔してたなあって。」
「あー...確かにね...」

「「....」」
会話も弾まない。もうこれ以上の進展は無いって事だ。
自転車に跨る前に彼女に体を向ける。

「それじゃ、またね。」
「うん、バイバイ。」

いつもの掛け合いをして自転車のペダルにグッと力を込める。
またね...本当に来たらどれだけ嬉しかっただろうか。
そんなまたねはもうやってこない。

夕日が完全にビルの群れに飲み込まれた。
熱された世界がどんどん冷え始める中、
家を目指す足はどんどん早くなっていく。

この熱をずっと感じていたいように...

語り部シルヴァ

8/5/2025, 10:10:02 AM

『泡になりたい』

泡になりたい。
ぷかぷかと左右に揺れて
流れされるまま空を目指す。
仄暗い水底からラムネ色の大空へ。

途中で弾けるのもみんなが
見えなくなるくらいまで飛ぶのも自由。
僕なら満足するまで飛んで人知れず消えたい。
結局のところ消えたいだけなんだろう。
この夏を感じさせない空間がそういう
"もしも"を描いている。

長袖の厚着して、引っ張り出してきた毛布に暖房は最高温度。
苦手なお酒で薬を一気飲み。
そりゃそんな気分になるよね。

泡になれたら...全部弾けて夢でしたってなっちゃうかな。
どうか目覚めませんように。

語り部シルヴァ

8/4/2025, 10:37:52 AM

『ただいま、夏。』

恋をしては別れを繰り返していつしか恋から逃げていた。
僕なんかを好きになる人はいない。
僕は誰にも愛されない。
そう決めつけてきた。

自分を卑下しすぎたのか
心が凍ったようになんにも手に付かない。

そんな中僕のことを気になると言う人が現れた。
いつぶりだろうか...嬉しい反面あまり期待はしていない。
それでも...こんな僕をまた愛してくれるような人だとすれば...

君の熱がどんどん僕の心を溶かしていくような気がする。
こんな夏はいつぶりだろう。

夏って...こんなに熱かったっけなあ。

語り部シルヴァ

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