なぁ、俺は悪人だよな?
色んな罪を重ねたんだぜ。
小さいのから、大きいのまで。
ちゃんと罰せられたよ。
痛かった。苦しかった。
けどよ、あの罪の罰だけ来ねぇんだ。
ポイ捨てした時の手の痛みも、
物を盗んだ時の足の痛みも。
ちゃんと来た。
罪があれば、罰がある。
そうだよな?
そのはずだよな?
だったら、なんで。
俺が子供だったから?
俺が罪を知らなかったから?
んな事は、罰せられない理由にはならない、んだろ?
何をした?って、お前なら知ってんだろ?
覚えてない?
...だからかもな。
お前を傷つけた。
文字通りさ。
そんなことかって。
体の傷のことなんて覚えてない?
だからってさ。
いやさ、
お前が、殺したって聞いた時、驚いたんたぜ。
そんなことしなさそうだったからな。
そんなに、恨んでたのか?
...そうか。
ちゃんと罰が来たんだよな。
びっくりした?
トコトコって、来るから?
そりゃそうだ。
俺も、あれだけは慣れないぜ。
で、どうだった?
怖かった。暖かかった。
...そうか。
走馬灯って見えるもんなのか?
へー。
最初は、ラッキーって思ってたんだぜ。
逃げられないはずの罰から逃げれたんだ。
でもよ、怖くなってくんだ。
いつか来るかもとか、気づかないうちに来てたのかもとかさ。
変な妄想だけが先行してくんだよ。
で、お前があいつを殺したわけじゃん。
なんで、あいつだけなんだ?
俺も。
...あの後さ。
何度もさ、罰を受けようとしたんだぜ。
でもよ、罰のやつ全然来てくんねぇんだもん。
関係の無い罰ばかり与えていきやがってよ。
なぁ、俺は悪人だよな?
もう、善人みてぇな顔できねぇんだ。
もう、良いことも悪いこともわかんねぇんだ。
助けてくれよ。
はやく、俺を。
書きたいなぁ〜。
残しときます。
アイデアが出るまで保留中
風が強く吹いている。
木々を揺らし、窓を震わせる。
入れてくれと、ドアを叩くかのように。
窓は耐えている。
標識が飛ばされた。
ああ、制限速度がなくなってしまった。
風も見飽きたから、手持ち無沙汰に本を開く。
もう読み慣れてしまったが、これぐらいしか読むものがないのだ。
よくあるストーリーが書かれている。
敵がいて、勇者がそれを倒す。
けれど、こんなストーリーすらも残った数少ないストーリーだ。
甘んじて享受する。
窓は未だ音を立てている。
今度は、前の家の表札が飛ばされた。
彼らの苗字は消え去った。
あの人たちの名前知らないな。
けれど、恐らく話すことは無いので気にしないことにする。
ページをめくる。
空白が、増えていく。
ポツ、ポツポツ、ポツポツポツ。
白紙が本の上の文字を塗りあげていく。
めくる。
白紙。
めくる。
白紙。
1度だけ、飛ばされかけた名残なのだろう。
白紙が終わる頃には魔王は倒されてしまっていた。
窓が揺らいでいる。
風もこの本を読もうとしているようだ。
不安になって、小さく声を出す。
音はちゃんと響いた。
まだ、話せる。
誰か知らない人が飛ばされて行った。
隣に住んでいた人だった気もする。
名前が飛ばされたのだろう。
ただ、話すことは無かったけど。
窓に頑張れと声をかけた。
風はまだ窓を叩いている。
窓が震えている。
ガタガタ、ガタガタ。
もう無理だというかのように。
もう、なのかもしれない。
持っていた本を窓際に置いた。
名札を金庫に入れた。
ガタガタ、ガタガタ。
窓の音だけが響いている。
何かが飛ばされた。
標識か、名前か、人か。
窓にぶつかっている。
隙間風が入ってくる。
本をめくり、飛ばす。
隙間風が強くなる。
掛けられていた服も、置かれていた皿も。
窓は、開かれた。
家の中に風が入ってくる。
全てを物色して、飛ばしていく。
飾っていた表彰状、履歴書の束、隠していた本。
白紙になっていくそれらを眺めていた。
風は家を舞っている。
窓は壊された。
物が飛ばされ、消えていった。
まだ、金庫はある。
表札は、まだあるのか?
風は、居座ってる。
風は、物色してる。
卒アルも、明日のご飯も、身分証も。
そして、風は私を見つけた。
風は、金庫を持ち上げた。
金庫に手をかける。
手は空を割いた。
「私」も、飛ばされた。
は窓を叩いた。
近頃、涙の値段が上がってきた。
涙一回、1200円。
クソ高い訳ではないが、出すかどうか少し迷う金額だ。
1200円もあれば、映画一本とか、サイゼリヤで豪遊とかできるだろ。
二時間、他人の人生を眺められる。
腹いっぱいにもなれる。
それと引き換えに、数分の嗚咽だ。
そんなことを帰り道に考えていた。
黒いスーツは体を締め付けていた。
ぼんやりと歩く。
ジャリ、コツ、コツ、ジャリ。
足音とアスファルトの欠片の音を聞いていた。
よく分からないけど楽しかった。
悲しい感情を出すことに金を使うぐらいなら、楽しいことに突っ込みたいと思うのは俺の性格のせいなのだろうか。
と、ふと思った。
数珠がポッケの中でじゃらじゃらと音を立てている。
喉が乾いて、自販機を探した。
水1本100円。
全く、水を入れるだけでも金がかかるのに、出すのまで金がかかるなんてたまったもんじゃない。
ボタンを押して、取り出し口に手を伸ばす。
ベコベコとしたペットボトルは、冷たかった。
財布の中は、1000円札何枚かの中に5000円札がしれっと入っているだけだった。
1000円札を2枚手に取る。
これを払って、残るのは800円。
1000円札を財布に隠した。
香典で結構持ってかれたなぁ。
11200円。
これが香典の定価とAIが教えてくれた。
涙の費用さえなければ10000円で良かったのにな。
じいちゃん、楽しそうだった。
異様に大きな木の箱に入ったじいちゃんは、俺らに見せる笑顔とはまた違う顔をしていた。
単調なお経が耳を反響する。
シクシクとすすり泣く音が聞こえた。
1200、1200、1200、、、
そう、言い聞かせてお経に集中した。
意味は、分からなかった。
暗い道を歩く。
ぼんやりと光る街灯が誰もいない所を照らしている。
慣れないビジネスシューズで歩いてたせいか、足が痛い。
歩く。
疲れる。
じいちゃんの顔を思い出す。
歩く。
疲れる。
お経が頭の中で反響する。
歩く。
歩く。
誰もいないじいちゃんちを思い出す。
言いようも無い気持ち悪さが胸を押し付けている。
上がってこようとするそれを抑える。
目頭がゆっくりと熱くなるのを感じた。
目を閉じて、冷やそうとする。
気持ち悪さが胸の中を床に落としてしまった水のように、広がっていく。
1200、1200、1200、、、
数字を頭の中に埋め尽くす。
泣いてはいけない。
泣いてはいけない。
それをするには課金をしなくちゃ。
俺にそこまでの余裕はないだろ?
ないてはいけない。
ないてはいけない。
ゆっくりと、気持ち悪さが引いていく。
静かになった暗い夜道。
独り言のように呟いた。
「俺は泣かない。」
涙1回1200円。
そんな勿体ないことは出来ないから。