「ねぇ、姉様。…わたしの片割れがあなたで。
ジェシカで良かった」
心からそう思う。
ーこれはわたしが過ごした気が遠くなるほどの果てしない時間のお話ー
一面花畑の青空の下で遠くをぼぅと眺めながら、苦しくて苦しくて死ぬほど辛くって…でもわたしにとってかけがえのない。もうわたしの1部と言っても過言ではない時間をおもいだす。
わたしはわたしが嫌いだ。
何回人生をやり直しても。
生まれ変わってもこの気持ちは変わらない。
嫌いで。嫌いで。…わたしの人生で1番興味のない対象
沢山の本を読んでも。
色々な世界を追体験しても。
自分に微塵も興味が湧かない。
どうでもいい。
でも、姉様が好きな「サンドラ」という視点では、まぁ存在しててもいいかなと思える。
わたしの命よりも大切な存在。
死ぬほど苦しい体験をしても何よりも優先させるべき対象。
狂おしいほどに愛おしい片割れ。
わたしのせいで、沢山傷つけて、悲しい思いをさせてしまったけれども…
そんなことも含めて姉様は許してわたしにとびきりの笑顔をくれる。
「お姉様…?こんなところにいましたのね。
もう時期春とはいえ少し冷えますわ。
中に入りましょう?」
またこうして迎えにきてくれるジェシカ。
何度突き放しても意地でもついてくるジェシカ。
嫌われるための努力さえ叶えさせてくれなかったジェシカ。
何回同じ人生を繰り返しても毎回わたしを思ってくれるジェシカ。
ねぇジェシカ姉様。
本当はわたしよりも賢くて強い姉様。
言葉にするには近すぎる距離。
口にするには深すぎる関係性。
形にしなくても分かり合えてしまう存在。
ずっと。ずっと。ずっと。ずっと。
「あなたの片割れに生まれてわたしはとても幸せよ」
普通では聞き取れない声量。
でも普通ではない姉様にはハッキリ聞こえてしまう言葉。
わたしの想いをひとつたりとも溢したくないあなたはきっとこのわたしから溢れただけの言葉も聞き流さないだろう。
「ふふ。えぇ、お姉様。私こそ、
あなたの片割れが私で良かった。」
お題「言葉はいらない、ただ…」
おまけのような設定のような雑談のような⤵︎
自分に無頓着すぎて純粋無垢な心を持ってるサンドラ
と
姉以外に無頓着すぎて依存しきってドロドロした感情を持ってるジェシカ。
ただの癖です。
知らないひとは「人狼ジャッチメント」で「サンドラ」と「ジェシカ」で検索してビジュを見てほしい。
この見た目と逆の内面を持ってる双子設定が好きです
この界隈が盛り上がってたのが数年前らしくて、残り香で一生懸命、延命してます。
@wawon_0_0(創作垢です)
屋敷のドアを潜った瞬間広がる外の世界に、はんのうは様々だった。
ある者は屋敷から出られたことを馬鹿みたいに喜んで、
ある者は突然終わったループに唖然として。
またある者は…
私は愕然と膝を地につけた。
お揃いの大切にしていた洋服が汚れることもかまわずに膝をつく。
最後の最後でお姉様に庇われて生き残った。
お姉様が赤く染まり冷たくなっていく姿をみて数々の記憶が溢れ出してくる。
実際に目の当たりにしたはずがないのにやけにリアルな記憶。
色々な方法で私の為に死んでいくお姉様。
毎回決まって、満足そうな顔を見つめる私。
一緒に屋敷を出られた記憶がない。
そして私は毎回、お姉様が死んだ後に記憶が戻ってくる。
私の全てが終わった後に、私の全てを失う瞬間だけを思い出す。
そして私は決意する。次こそは。
絶対に次にゲームでは2人で屋敷を出る。
そう強く宣言し、屋敷を出て意識をがとびまた新しいゲームが始まる。
今回もそうだと思ってた。
きっとそうだと。そうじゃないと許さないと思っていた。
確かにGMさんは何度か『今回こそはこの屋敷から出られるかもしれませんよ?それじゃあ、今回も頑張ってください』と言っていたような気がする。
でも。だって。お姉様が、、、
「あれ?この屋敷こんな感じだったかな?」
「確かに。もっとまがまがしくなかった??」
「やっとループから解放されたってことでしょ」
「え?ループってなぁに?」
グルグル考えて固まっていた私はその声で反射的に後ろを振り返った。
「あぁ」
意図せず口から声が漏れる。
しかし、瞬間でハッとし、屋敷に駆け戻る。
待って!屋敷の中にはまだお姉様が!!
たとえ死んでしまったとしても、、
しかし、屋敷の中に入った私はもう一度膝をつくことになる。
勝手に目から大量の涙が溢れる。
屋敷の中には何も無かった。
本当に何も無かった。
至る所にこびりついていた血痕も、
血特有の生臭い匂いも、
あたりに充満していた独特な雰囲気も、
参加者が使用していた役職専用の道具も、
耳に響く低い音を鳴らし続けていた鐘も、
毎日正確に議論する時間を測っていたタイマーも、
そしてお姉様のご遺体も。
あああぁぁぁぁぁあぁああ。
呼吸がままならない。
意識が遠のく。
自我を保てない。
涙が止まらない。
あぁ。どうして今回で終わってしまったの?
だって。次こそは。次こそは!!
……姉様……
独りで絶望している私を呼ぶ声が聞こえた。
私が間違うはずもないお姉様の声。
最愛のお姉様の声。
なんど世界が繰り返そうとも決して揺るがなかった親愛。
「呼ばれてる。お姉様が呼んでる」
そう独りで口走り意識が向く方へ小走りで向かう。
もう体力も気力も限界でフラフラしてたけど、
ようやく足が止まった場所はゲーム中お姉様が使っていた部屋だった。
私の隣。
夜、部屋から出ることは禁止されていたけど、壁越しに感じる確かな存在。
お姉様の部屋には初めて入る。…かな?
少なくとも今の私は初めて入る。
いないとわかっていても律儀に、できるだけお淑やかにノックをする。
屋敷にくる前までは当たり前に返ったきていた私を歓迎は、当然のように返ってこない。
返ってきたのはただの残酷なまでの静寂だった。
それでも、、
「お姉様。ジェシカです。…失礼致します」
できるだけ平然を装って静かに部屋に入る。
私の部屋とは鏡合わせのような配置の部屋。
でも、お姉様の性格がでている部屋。
「ふふ。綺麗好きで整理整頓を欠かさないけれど、所々雑さが残っているのは相変わらずでしたのね」
しばらく感じられていなかった、お姉様が確かにここに存在していたという事実に不謹慎ながらも喜びを感じてしまう。
「お姉様。私はなぜここに呼ばれたのでしょうか?」
いつもより穏やかな声を意識しつつ、なんとなしに虚空に向かって質問をしてみる。
まぁ、これでお返事が返ってきたらとても嬉しいのです…が…?
ほんのり感じるお姉様の気配。
いつでも。どんなときでも私を包みこんでくれた大好きで安心できる匂い。
そんな温かいものがふんわりあたりを漂う。
目を閉じてその全てを感じる。
できるだけ全身で。それ以外の情報を強制的にシャットアウトする。
しばらく堪能したあとに目をあけ視線の先を確認する。
一番お姉様を強く感じたのは、この机から。
各部屋に完備されている家具の一つ。
アンティーク風の小柄な机。
私は自分の部屋にあった机はあまり使わなかったが、お姉様の机は結構使ったような形跡があった。
実際にその机に近づき観察していると、隠すようにちいさな引き出しがついていた。
お姉様に心の中で断りながら引き出しを開けると、一冊のノートが入っていた。
それは、この屋敷に来る前にお揃いで買った日記帳で。
お姉様はとてもお気に召されて、毎日大事に使っていた。
私は。どうだったかな?たしか、お姉様とのお揃いを使うのが勿体無くてお姉様宝物BOXに大事に保管していた気がするわ。
なんとなく捲ってみると、最初は屋敷に来る前のありふれた。今となっては恋しい思い出が綴られていた。
とりあえずパラパラと捲っていくと屋敷にきてからの記録も残っていた。
驚きで思考が止まりながらも、勝手に目が文字を読み、手が勝手にページを捲る。
最初は混乱しながらも屋敷や参加していた者たちへの考察が綴られていた。
だが、次第にそれは悲痛な叫びへと変わっていた。
助けて。怖い。もう終わりたい。何度も姉様が死んでしまった。苦しい。誰も前のことを覚えていない。恐い。誰か。もう無理。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
私が気付けなかったお姉様の本心。
きっと私が一番に気づいてあげないといけなかった。
いや、気づかないといけなかった。
止まっていたはずの涙がまた溢れてくる。
不甲斐ない自分が、何も知らなかった私が、能天気に笑っていた自分が。
憎い。ひたすら自らが憎かった。
そしてある時を境に日記の雰囲気が変わった。
弱音を吐かなくなったかわりに、私のことが沢山書かれるようになった。
今回は最後に猫又で狼持って行って生かせられた!
今回は藁人形で無理やり生かせた!
今回は姉様が赤ずきんだったから手荒になっちゃった
・
・
・
あぁ。お姉様。あなたは確信犯でしたのね。
もう全てを諦めてゲームとして飲み込んだ。
私が思い出していなかったものも沢山あり、それほどお姉様は1人で果てしないループを経験していたのですね。
そして最後のページに書かれていた私宛。
私だけに宛てたメッセージ。
「ジェシカ姉様へ。
これは見ているってことはきっともう私はそこにはいないのでいしょうね。
えへへ。書いてみたかっただけ。これで隣にいたらどうしよう。
あのね、私は沢山ジェシカと過ごせて楽しかった。
だって普通では考えられないほどの時間を共にしたんだよ!?
凄いよね。
あのね。多分、本当に私は今あなたの隣にいないと思うの。
うん。双子パワーね。わたしと姉様だけの以心伝心ね。
分かってた。最初から。この1人ゲームを初めてから。
ごめんね。きっと辛いと思う。
でもサンドラもジェシカも否定しないで。
わたし達はよく頑張ったよ。
あのね。うん。もう言いたいことは直接言ったから言うことないや!覚えてないかもだけどね。
姉様もあの何とかBOXからお揃いで買った日記帳引っ張り出して姉様も書いてみてね。
んで、それがいっぱいになって、満足したら埋まった日記帳とわたしのこのノートを一緒にわたしの所まで持ってきて。
埋まるまできちゃだめだよ?わたしと姉様の約束。
破ったら絶交だよ?いいの??
嫌だよね!じゃ、頑張って。
ずっと大好き。」
ふふ。ははっ。
「やっぱり敵わないなぁ。うん。お約束ねお姉様!」
お姉様のノートを手に取り部屋をでる。
扉を閉じる前にもう一度振り返りお姉様の部屋を見回す。
そしていつもお姉様にむけていた、自分が思う最大限のとびきりの笑顔を作って明るく別れを告げた。
「それじゃあ、少しの間お別れですわ。
ずっとずっと大好きですわ。
ありがとう。…いって参ります!」
さぁ、早く自分のお屋敷に帰って、私の日記帳を始めなければ!
お題「私の日記帳」
ジェシカ視点
ジェシカ:生
サンドラ:死
サンドラが記憶を継いだままループを繰り返していて、それを綴った日記を発見し読んだジェシカの話。
普通(ではない)、墓場や勝利した瞬間に戻ったり一部を思い出したり?
まぁ、記憶がある時点で異質。
現時点記憶継いでいる者⤵︎
サンドラ、ロディ(互いに知らない)
ジェシカはサンドラが死んだ瞬間フラッシュバックで記憶が掘り返される。
『本日の処刑により白陣営の勝利となりました。』
GMから告げられた言葉と同時に屋敷の鍵が開く音が聞こえた。
また。また沢山の人が死んだ。
何回繰り返せば。…一体何回繰り返せばこの【人狼ゲーム】というもから解放されるのだろう。
屋敷から出た瞬間意識がとびまた新しい1日が始まる。
その度に割り振られる役職が変わり騙し合いが再会される。
もう疲れた。もう解放してくれ。
もう、人を疑い続けるのも、アラを探し続けるのも、
殺されるのを怯えるのも、人の本性を目の当たりにするのも。
もう嫌だ。誰か早くこの地獄を終わらせてくれ。
喜んで屋敷を出る人に続いて屋敷のドアに近づく。
横目で今もなお屋敷に留まる少女を見る。
その子にそっくりな死体を見つめ呆然としている姿を確認する。
何度も見た光景。何度繰り返してもあの2人が揃って屋敷を出ている姿を見たことがない。
いや。もっと言えば今死体になっている子がこの屋敷のドアをくぐっているところを見たことがない。
それに蛇足するならば、今生きている子も結局屋敷を出ていない。
はは。あの双子は何度繰り返しても、屋敷から出てないことになるな。
そもそも同じ陣営になったことあるかな?
まぁ、僕には関係ないけどね。
…でも、僕はあの2人と何度も話して純粋に好感を持ってるんだけね。
あの狂った空間でも最後までブレず自分の意思を貫く人は少なからずいる。
頭の弱い抜けてるエマだったり、殺しあいを拒むミカだったり、自分の信じている人を愚直に信じるマイクだったり。
片割れを騙してでも生き残したいサンドラとどんな状況になっても2人で生き残りたいジェシカ。
うん。やっぱり裏表のない人は好きだな。
息をするのが楽になる。
意識が遠のく。今までいた屋敷がドンドン透けていく。
消えていく屋敷の中で泣きさけぶ女の子が見える。
あぁ。本当にクソだな。まごうことなきクソゲーだ。
この世界を最大限に睨んで目を閉じ、意識を手放す。
もう目が覚めないことを祈って。
====
嫌に頭に響く低い鐘の音で目を覚ます。
ハハハ。
神様には僕の声は届かなかったようだ。
もう記憶を継いでる同士を探すのはやめようか。
こんな記憶。持ってる方が最悪だ。
『1日目の議論を開始します』
GMにより指定された席につく。
何度席が変わろうと僕の対面にはサンドラが座る。
これも運命なのか?
…僕が君をどうにかして救いたいと思ってるからかなぁ?
ジェシカと共に会議の間に現れ、目の前に着席したサンドラと目があいニコリと笑う。
さぁ、今回こそ君たち2人を生かしてゲームセットするぞー!
と、他の人は絶対思わないことを掲げながら朝の挨拶をかわした。
あーあ。また始まった。今回も姉様を生かすぞー!
お題「向かい合わせ」
ロディ視点
「ロディ。お待たせ、行きましょうか」
「ロディさん。おはようございます」
いつもの待ち合わせ場所にあらわれたのは、整った容姿をしたそっくりな双子だった。
「ううん。待ってないよ、おはよう」
いつもと調子を変えないように気をつけながら挨拶をかわす。
目敏いサンドラに少し怪訝な目線を向けてくるが、にこりと笑ってかわす。
ジェシカは、、、まぁ僕に興味ないので少しも気に留めている様子が無かった。
しいというなら、僕を怪しんでいるサンドラを気にかけているようにも見えた。
僕の前でいつものように仲良く戯れ合っている2人を見下ろしながら連日見ている悪夢を思い出す。
満足そうに笑いながら冷たくなっていくサンドラ
全身を片割れの血で染め上げ呆然としているジェシカ
そんな2人に何もできず駆け寄ることもできない僕
この状況を見てもなお勝ったことを馬鹿みたいに喜ぶ白陣営たち。
夢にしてはリアルで。でも現実にしてはあまりに荒唐無稽な出来事。
不気味な屋敷に数日間閉じ込められ、突然役職を振り分けられ、勝てないと死ぬというデスゲーム。
あぁ。思い出すだけで吐き気をもよおす。
嫌いだ。嫌いだ。人間が嫌いだ。
本性を隠す人間が嫌いだ。
「…ロディ?大丈夫?」
声をかけられたことに気づきハッと顔を上げると目の前にサンドラの顔があった。
っちっかいっっっ。思わず顔をのけ反らせ視線ごと逸らす。
「っねぇ。ジェシカ!君のお姉様距離感どうなってるの??」
「えぇ?私のお姉様に文句あるんですの?」
「ロディが隠し事してるからだよ?ずっとぼーってしてるし!」
寝不足の頭ではいつものように思考が纏まらずサンドラのチクチクに反射で反論できない。
じとっと目で「やめろ」と抵抗しているとまた、遠くの方から元気な声が聞こえた。
「おーーーーーい!おはよう!!いやーみんなはやいねっ!」
「エマ遅い。早くしないとおくれちゃう!」
「エマさん、おはようございます。」
「あのねあのね!あたしね、パン買ってきたの!!
並ばないと買えないやつなんだよ?
すごいでしょー!選んでいいよ!!」
いつものエマを見て落ち着いたはずの動悸がまた一気におかしくなる。
呼吸がままならない。
視界がぼやける。
意識が遠のく。
思考が纏まらない。
自分の煩い心音以外何も聞こえない。
苦しい。苦しい。助けて。嫌だ。たすけっ
「っ!」
呼吸が荒れ、過呼吸状態になっている口を塞いだのはサンドラの口だった。
「!!!!???!!?!?!?////」
「ちょっ。ちょっ、お姉様!?きt。…汚いですわよ!」
「はえー!やっと付き合えたんだ!ロディ?」
っ!?!?
ちがっ。え??
なんで?まだ付き合ってないのにキッ。キスなんて!
理解が追いつかないのと、恥ずかしさと、息苦しさで、生理的に涙が止まらない。
「っプハ!本で読んだの。過呼吸を手っ取り早く過呼吸を止める方法!」
ドヤ顔で誇るサンドラに思わず涙目で睨んでしまう。
…こっちがいったいどんな気持ちを君に向けているのか分からせてやろうか?
何か思うことがあるのか、察したエマがニコニコと笑いながら隣に近づいてきた。
「あのね、ロディ。2人で話せない?」
「……。いいよ、場所少し離れようか。
ごめん、サンドラ、ジェシカ。ちょっと先に行ってて!」
「? 分かった。早く追いついてね」
「お姉様、行きましょー!」
さっきのキスもそうだし、エマと2人きりになるのにも微塵も気に留めていめていないサンドラを見て、やっぱり、まだ脈なしか〜と落ち込む。
「っと。このあたりでいいかな?
なあに?エマ」
「あのね。違ったらごめんね。
ロディはさ、最近怖い夢を見ない?
殺し合いみたいな?騙し合いみたいな」
これは、驚いた。まさかあの悪夢を見ている人が僕の他にもいるなんて。
でも、意図が分からないし、なぜ気づいたのかも分からない。
言葉を続けようか迷っているエマに、表情だけで先を促す。
「…。私はね最近ずっと夢に出てくるんだ。
怖いよ。現実で起こったわけないのに、ヤケに鮮明に見えるの。
今日、パン買ってきたのもね、、誰かあの夢を見た人いないかなーって思って。…ごめんね。あそこまでなるとは思わなかった」
心から申し訳なさそうにしているエマをみて、本当に同じような共有している人がいるんだと実感した。
「…あの反応を見る限り、あの2人はやっぱり覚えてなさそうだな、、ま、覚えていない方がいいんだけど。
特にジェシカの方は、、」
きっともう立ち直れない。
「うん。私もそう思う。だから今回が最後の賭けだったの。夢で会ったことのある人にあう約束を取り付けてこのパン作戦やったんだけど、反応したのはロディだけだった。誰も反応しなかったら、私の気のせいで片付けようと思ってたんだけど、、ねぇロディ。あれは本当に夢。だよね?」
夢。…だと断言したい。あんなものを本当に起こったなんて認めたくないし、信じたくもない。
でも。断言できないほどリアルで。
ここに同じ体験をした人がいて。
悪夢で会った人たちが本当に存在していて。
「ねぇ。エマ。僕は君が好きだよ。」
「はぇ?」
「それでね、サンドラが好き。ジェシカも好き。
でもあんな夢を見てから人間がすごく嫌いになった。
人と関わるのがすごく怖くなった。
でもね、少なくとも君たちは最後まで嘘をつかなかった。
人を貶めようとしないかった。
最小限の被害で。みんなで屋敷を出ようとしてた。
少なくとも僕目線はそう見えた。」
横目でエマを見ると静かに頷き先を促してくれた。
「最終日。あの屋敷から出られたあの日。
ジェシカが狼に食べられた夜の次の朝。
サンドラはあからさまに態度がおかしかった。
最初は大切な双子が亡くなってしまったから動揺しているだけだと思った。
でも、明らかに破綻の連続だった。喋れば喋るほど破綻してた。
それはもう。笑っちゃうくらい破綻してた。
多分本人も何言ってんのか分かってなかったんじない?」
重い話になりそうだから、わざと明るい口調に変えてみたが、声が震える。多分、ここが外じゃなかったら涙は堪えきれてなかっただろう。
エマも静かに涙を流しながら聞いてくれる。
はは。エマらしくない。いつも能天気なくせに。
空気読めてないような的外れなこと言うくせに。
…いや、違うか。こう見えてエマは周りはみえていた。
アホキャラというものを率先してやっていた。
あの屋敷でも。…まぁ、ほとんど素なんだろうけど。
「それで、嬉々とした白陣営たちが時短でサンドラ吊ったじゃん?
僕ね。何もできなかった。サンドラともジェシカとも沢山話したのに。サンドラが狼ならジェシカは絶対食べないって断言できたのに。何も言えなかった。
あの空気に呑まれて、発言も反論も投票すらなにもできなかった。
最後にね。本当に最後にね、サンドラちょっと笑ったんだ。
んで、サンドラの死体からジェシカがでてきてもう大騒ぎよ。
サンドラの血で真っ赤に染まったジェシカが呆然とサンドラを見てるんだ。
泣きもしないで、喋りもしないで。
ただ心底驚いたように見つめていた。
僕ね。実は役職イタコだったんだ。知ってる?イタコの役割。
死んだ人の役職を見れるんだって。
1回だけね。
僕はずっと使ってなかったからせめてと思ってジェシカを迎えに行くついでに見たんだ。
サンドラの役職見たんだ。
…市民だって。呪われだって。人狼だって。
あはは。笑えるよね。
ジェシカに聞いたんだ。サンドラは君の役職を知ってたのかって。
静かに首を振ってたよ。知らなかったんだって。
でもね、サンドラは多分気づいてたんじゃないかなって思うんだ。
あそこでジェシカが食べられてないとその日吊られてたのはジェシカだ。
最後の最後まであの子はジェシカを守ったんだ。
自分が狼にされて混乱してたはずなのに、、」
うん。うん。とエマも涙を隠さず溢す。
僕ももう堪え切らず大量の涙を溢していた。
「ねぇ、エマ。あれは忘れちゃダメだと思うんだ。
少なくとも覚えている僕たちだけは。
それだけ。聞いてくれてありがとう。
本当にスッキリした。」
「うん!!あたしも!沢山泣いてスッキリした!
ま、あたしパン焼いてただけだけどね!!
さ、早く2人のところ行こ!追いつかないと!」
パッと立ち上がり駆け出すエマの後ろ姿を見て、思わず笑ってしまう。
本当に忙しない子。でもエマのおかげであの屋敷でも正気を保っていられたよ。
夢の中のロディ。大丈夫もう苦しまない。
もう忘れようとしない。無かったことにしない。
もうやるせない気持ちなんてない。
「エマ!ほらもっと走って!!置いていかれるよ!」
お題「やるせない気持ち」
ロディ視点
配役⤵︎
サンドラ:呪われし者(覚醒済み)
ジェシカ:赤ずきん
ロディ :イタコ
エマ :パン屋
「お姉様。こんなところにいましたの?
ずっと探してましたわ」
やっと見つけた。急に私の前からいなくなってずっと探していた私だけのとても大切で愛おしい片割れ。
「ずっと一緒ってお約束してましたのに、どうしてですの?あぁ。でももう大丈夫ですわ。もう離れません。どんなことがあっても。お姉様が何を抱え込んでいようと私がずっと隣にいますわ。一緒に背負わしてください。」
お姉様に歩み寄っているはずなのに一向に縮まらない距離に焦りを隠せず口が止まらない。
「…。どうして私の言葉に返してくれませんの?
お姉様?私何かしてしまいましたか?何かご機嫌を損ねるようなことを、、、」
「 」
「っ?申し訳ございません。波の音が少々大きくて聞こえませんの。もう少しお側に、、。っ?」
自分の発言で今まで一度も止めていなかった足を思わず止めた。
…波の音?私は今、海。浜辺にいますの?
そうあたりを見渡すがここに来た時から辺りの様子は変わっておらず真っ白な空間が無限に広がっていた。
ここにきたときはサンドラを見つけた喜びで辺りをよく確認していなかったが、自分たちが今いる場所は明らかに自然的な空間ではなかった。
現実離れしている。
…ここはどこなのかしら。それにこんな空間で波の音なんて。、、いいえ。今波の音は聞こえませんわ。
波の音が聞こえたのはお姉様がお話になられた時だけ??
「お姉様?」
辺りを見渡していた視線をサンドラがいたところに戻すと、恋焦がれていた姉が目の前にいた。
「っんもう。びっくりしましたわ。でもやっとお側に来れましたわ。ふふ。もう意地でも離れませんわよっ。
私はあのお屋敷から解放された時から何年も。ずっとずっと探していたんですのよ。お話ししたいことがたくさんーーー」
「 」
サンドラがまた口を開き何かを言ったと同時にジェシカを強く突き放した。
「え?お姉様は私を拒絶いたしますの?」
視界が滲み、声が震える。
頭の中が「どうして?」で埋まり上手く思考ができない。
一度も向けられたことのない強い拒絶と冷たい眼差し。
その事実だけで体も頭も上手く働かない。
離れ離れになる前までは当たり前に感じていた確かな温もり。
毎日毎日、いくら聴いても心地の良い声。
いつだって私を安心させてくれる大好きで落ち着く匂い。
あまり表には出さないけれどいつだって私を一番に考えてくれる不器用な優しさ。
…なんとか私だけは生かそうと必死に考え、臆することなく議論に参加していた横顔。
巨大で抗うことすらできない存在に怯える私に何度も「大丈夫」と繰り返してくれていた少し震えた声。
最終日になった夜に、私を食べに来た狼の間に無理やり割って入り飛び散った赤。
それに比例し時間と共に青白くなっていく体。
お揃いの瞳から溢れる涙と一緒に次第になくなっていく光。
最後まで私を見つめ掠れる声で弱々しく繰り返される私の名前と大丈夫という言葉。
あぁ。あああああぁあぁあああああぁああああ。
思い出してしまった。私がお姉様に愛されていたことを。
お姉様自身の命より私の命を優先させたことを。
もう。お姉様はこの世界にいないことを。
「だって。だってっっ。GMさんが言ってたもん!
これはゲームだって。お姉様が真っ当されたお役目は私が生き残ったことで勝利されたって!!!!
だからっ。だから一緒にお屋敷出られなかったけれど、勝ったっていうことは生きてるってことでしょう?
だからずっと探してたんだもん!私はお姉様がいない世界なんていらない!私はお姉様と一緒にいたい。
もう…もう置いていかないで。1人にしないでっ」
嗚咽で上手く喋れない。
視界が滲んで何も見えない。
酸素が足りなくてフラフラする頭。
耳元で微かに聞こえるピーーという謎の電子音。
でもここで楽になれば。私はお姉様と一緒にっ。
そんな考えが浮かんだ瞬間バチンと頭が弾かれるような強烈な痛みを感じた。
耐えきれずフラリと倒れ、頭を抱えながら顔を上げようとすると懐かしい空気に包まれた。
忌々しい。殺したいほど憎んだ空間。
忘れたときなんて無かった時間。
何度も悪夢になり私を襲った、淡々と鳴り響く低い鐘の音。
でも、最愛のお姉様と過ごせた屋敷。
痛みと憎しみでどうにかなりそうな私を包み込んでくれたのはずっと追い求めていた片割れで…。
あの時と同じように抱きしめてくれた。
「会いにきてくれてありがとう。
ずっと大好きよ。いつも側で見守ってる。
ずっと姉様の隣にいるわ。寂しくなったら一度落ち着いてわたしを感じて。大丈夫。わたしの姉様は強い人だから。」
波の音が邪魔をしないのはこの忌々しい屋敷のおかげなのかしら。
「それと、一旦わたしの事を置いて。
自分の周りを見直しなさい。
姉様は1人じゃないわ。自分も周りの人もそんなに否定しないでもいいの。」
私が口を開いても声が出ない。
もどかしい。きっとお姉様も先程まではこんな感じだったのでしょうか。
「楽しんで生きて」
たくさん伝えたいことがあった。
感謝も、謝罪も、お姉様がいなかった時にあった楽しかったことも、悲しかったことも、悔しかったことも。
でもそれすらわかっているかのように、穏やかに笑うサンドラを見て私は泣きながら笑い返した。
お姉様は側で見守っていると言ってくださった。
じゃあ大丈夫。あなたがいるなら私は頑張れる。
「わたしにもっと色々な世界を見せて」
サンドラの体が次第に透け、屋敷もボロボロと崩れ始める。
あぁもう、時間がない。
「それじゃ、ご機嫌よう。ジェシカ姉様」
その言葉と同時に私も、お姉様も、屋敷も跡形もなく消えていった。
「……カさん?ジェシカさん聞こえますか??
先生!!!ジェシカさんの意識が戻りました!!」
「ジェシカさん!!!!あぁ。よかった。」
「なんであんな無茶を!!!とにかく無事で良かった」
「うっ。ううぅ。良かったよぉ。」
「もう、エマそんな泣かないでよっ。つられちゃうじゃんっっ」
騒がしい病室を横目に、ジェシカは屋敷をででから一度も見せなかったとびきりの笑顔を咲かせ、隣に感じる優しい温もりに囁いた。
「ふふ。ご機嫌よう。サンドラお姉様」
お題「海へ」
ジェシカ視点
(サンドラ純愛、ジェシカ愛され白陣営)